耳鳴り潰し175(ラップバトルでカミングアウト、時代小説、扇風機が打ち消していた耳鳴り)
ラップバトルが遊びの一つとして認知されたようで、息子が「あれやろう、三人でリズムに合わせてやるやつ」と言ってきた。「今回はパパをディスるだけじゃない方向でやろう」と提案する。私は胸と腹を叩き続ける。子どもたちはそのリズムに合わせて身体を動かしながら、リリックを刻み始める。ラップの形だと普段言えないことも言えるようで、「妻と私の母とのうまくいっていない関係」を娘が突っ込んできたり「パパはパソコンで何やってるの」と息子が聞いてきたりする。思わぬ形で「ネットでいろいろやって、電子書籍で本を出して、僅かだけどお金を稼いだりもしてるよ」というカミングアウトをする羽目になる。もちろんそれらはそれなりのリズムに合わせてラップ調になっている。
本格的なラップバトルの動画を今度見せてみようか。
R-指定と晋平太のリスペクトしあうバトルに泣く(こういうことでは簡単に涙を流す)。少し観るだけのつもりが全部観てしまった。
今週のシロクマ文芸部「夕焼けは」に「夕焼けは裏切り」で参加。裏切り者の代名詞としても有名な戦国武将の松永久秀が、名物茶器「平蜘蛛」を抱えて爆死する寸前に、シアターブルック「裏切りの夕焼け」を歌うまでの物語。音楽と絡めての時代小説を久しぶりに書く。これまで書いたものを紹介しようと思ったが、ほとんどが現在凍結中の「音楽小説集」内のものだったので残念。
これまでに書いたものは
・寝台列車に乗って東北から小田原北条攻めにやってくる伊達政宗と片倉小十郎
・布袋寅泰派の斎藤道三と氷室京介派の斎藤義龍と洋楽派の織田信長の話
・山奥の庵でエクストリーム「モア・ザン・ワーズ」を歌いながら、言葉を紡ぎ続ける鴨長明の話
・清水宗治の立てこもる城を水攻めだけではなく、ネット環境を絶ち、飢えをサブスクで誤魔化していた兵士たちを苦しめる秀吉の話
・桶狭間の合戦直前に、ラップバトルライブ配信でエミネムを歌い、突撃の時刻を信長に知らせる今川氏真の話
・小早川秀秋が偉大なる叔父と養父をボブ・ディランとジョニー・キャッシュになぞらえて、酒に溺れていく話
・本能寺の変の際にギブソンSGをかき鳴らしてラストライブをする信長の話
全編「何考えてんだこいつ」で溢れている。通常営業である。
兎野卵「意識低めの創作論: 難しいことを考えずに物語を作る10の方法 創作実践シリーズ 」読了。創作論についてたくさん書いている著者。プロの作家ではないからこそ、多くの方の共感を得られる創作論を書いているともいえる。いろいろ感じ入るところもあったので、他の著作にも今後触れていこうと思う。
もりさきあさお「両親のいた家〜介護と別れの記録」読了。
これだよ。こういうのなんだよ。個人のKindle出版に求めている究極のところは。年老いた両親の死、暮らしていた家の写真、両親の死の間際の出来事についての文章。こういったものは商業出版の企画にはまず通されない。話題となることもないだろうし、著者も次の一冊を書くことはないかもしれない。でも残しておきたかったんだという想いが伝わってくる。他の誰かにとって特別なものとなるようなことではなくても、自分にとっては何よりも書き残したかったことである、残しておきたかった風景である、という想いが強く感じられる。物凄い文才の持ち主が書いたとか、計算され尽くして読者をあっと言わせる構成とか、そういうものは、そういうことをする人に任せておけばいい。こういう一冊を拾い上げたくて、私は個人のkindle出版物を漁っている。
どうも耳鳴りがいつもより大きく感じて眠れない、と思ったら、涼しくなってきたので、襖の向こうで動かしていた扇風機を止めていたせいだった。ある程度の音が響いていないと、耳鳴りは存在感を増す。涼しくなっても扇風機は今後も夜中に回り続けてもらうことになるかもしれない。