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「マイクラ・小学校ごっこ・小学生恋愛事情」#シロクマ文芸部

「桜色の花びら」はマインクラフトのバージョン1.20大幅アップデート時に追加されたアイテムである。木の種類に「桜」が追加された。桜ばかりが咲き乱れる地形「桜バイオーム」の地面に「桜の花びら」が落ちている。採取すると染料などに使用できる。

 息子とマインクラフトで遊んでいた。
「苗木を4つ固めて置き、そこに骨粉をかけると、幹の太い木に育つ」ということを知った息子は、骨粉をかけまくり、雲まで届くような大樹を作っていた。時折桜を足したりもしていた。私は息子のリクエストがあったので、コマンドブロックを使用したトランポリン風の物を作っていた。

1.地面に4×4の穴を掘る
2.そこにコマンドブロックを敷き詰める
3.各ブロックにテレポートのコマンドを書き込む。座標は直上とする。高さを「200」「800」「1200」など、高低差をつけてランダムな感じで。
4.コマンドブロックの上に感圧版を設置する。

 これで「感圧版を踏むと遥か上空にテレポートする装置」が完成。落下中にあまり横移動をしなければ、再び感圧版に落ちるので、永久トランポリンみたいな感じになる。大樹を成長させたり、巨大なウォータースライダーを作っていた息子を呼び寄せると、「やったー、たのしー!」と喜んでくれた。羽根のような装備「エリトラ」を装備して、上空からの滑空を楽しんだりもしている。

 午前中そんな感じで息子と遊んでいる間、娘は長く眠っていた。昨晩眠る前に「男子から告白された」という話を私に打ち明けて、状況を説明してくれた。直接の告白ではなく、クラスメイトから「〇〇君、娘さんのことが好きなんだって」という感じだったらしい。当の男子は照れた様子で教室を出ていったというから、嘘や冗談の類ではないようだ。係や当番で関わることはあったが、普段から仲良しという程ではない相手だという。しばらく不登校だった娘が、支援学級の先生や生徒の後押しもあり、終業式の日だけ出席した。その際の出来事だ。

「小学生男子が女子を好きになる理由って何?」と聞かれたので、実体験を踏まえて様々な状況で好きになる経緯を語り聞かせる。父親の情けない数々の片思い体験を披瀝したが、ここで書くのは控える。

 午後から子どもたちは「小学校の予行演習ごっこ」を始めた。春から小学生となる息子のために、娘が小学校での過ごし方をレクチャーしていた。娘の教科書を詰め込んだランドセルを、息子は重そうに背負う。ランドセルの開け閉めの仕方や、朝の準備のことだけではなく、「学校には乱暴な子もいるからね」なんてことも教えてくれていた。

 息子の遊び相手が娘に変わった途端、私は横になっていた。当初は「先生役やってね」と言われていたが、いつの間にかうとうとしていた。「足が痛い」と言って何度も起きた息子に湿布を貼ってやったり足を撫でたりして、あまり眠れていなかった。加えて雨が降っていた。そんな日は頭の具合が良くない。念のため鎮痛剤も飲んだが、あまり効いていない気がした。日によってはほとんど影響がないくらいに感じる日もあるのに、悪い条件が重なる日には、はっきりと病の存在感が現れる。横になれば頭の重み、痛みはマシになる。子どもたちの騒がしさが、耳鳴りをかき消してくれた。

 先述の娘の久しぶりの登校の日、持ち帰る物が多いので迎えに行った。ぐんぐん背が伸びている娘は、支援学級の先生と同じ身長になっていた。家族でおでかけする際には薄く化粧をしたりもする。腋毛やすね毛も自分で剃る。先日は、コンプレックスの一つであったらしい、繋がった眉毛の真ん中を自分で剃り落とした。イメージが変わったとクラスメイトに驚かれたそうだ。他の生徒より大人びてみえる理由は、黄色い学帽を被っていないせいでもあった。久しぶりの登校ですっかり忘れていた。

 息子のランドセルは、私の両親と一緒に買いに行った。祖父母の前でランドセルを選ぶ息子に向かって、娘は「キラキラしたのとかやめといた方がええで。小さい頃はよくても、だんだんと恥ずかしくなってくるから」とアドバイスしてくれた。子どもの自意識は、大人が思っている以上の早さで大人びていく。

 大量に咲く桜が苦手だという話を書こうと思っていたが、だんだんそんなことはどうでもよくなってしまった。「桜の木」がマインクラフトに導入された直後、桜の木を植えまくると、散る花びらが多すぎて処理が重くなってしまった。本物の桜がもうすぐ咲き始める。2年前、息子の幼稚園の入園式に出た時と同じく、私は主夫になっている。現場で力仕事が出来ない人間は必要ではなく、事務員として入り込む余地はない会社を、3月末で退職する。私は次はどんなコマンドを駆使してマインクラフトを楽しもうかなどと考えている。桜色の花びらを使って、美しい桜並木を、などと考えている。実際にはきっと「ドラゴンボールごっこしよ!」という息子の言葉に振り回されてしまうことになるのだろう。

 少し記す。
「呼ばれる時肩をトントンと叩かれたり、教科書忘れたから見せてもらう際に近寄った時、肩が当たったり、笑い転げて背中をばしばし叩かれたり、そういう接触があると、すぐに意識するし、好きになるもんだよ」
「あー、やっちゃってるわ。身に覚えあるわー」
「クラスで一番の美少女とかいるだろ。でもそういう子って案外、自分とは関係のない人と思って興味を持てなくて、隣の席で少し話した子とか、自分にとってだけはかわいいと思える子とかを、好きになるもんなんだ」
「あー、確かにイケメンはうちも苦手」
「小学6年生の時に好きだった子と、中3の時にも一緒のクラスになったんだけど……(以下略)」

(了)

シロクマ文芸部「桜色」に参加しました。
近況エッセイ。最近は調子のいい日が多かったのに、寝不足&悪天候(気圧)にやられてしまいました。


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