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シロクマ文芸部参加作

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note内企画「シロクマ文芸部」参加記事のまとめです。
運営しているクリエイター

記事一覧

「欠けて降る月描けて書けて」#シロクマ文芸部

 今朝の月大粒ですぐ積もりゆくかつては空にありしものたち  早朝に起き出して窓を開けると…

泥辺五郎
5日前
7

「憧れの文芸部部長に手錠をかけられる話」#シロクマ文芸部

 花火と手錠を交互に見ながら僕は部長に訊ねた。 「どうして僕は部長に捕まっているんですか…

泥辺五郎
13日前
20

「山頭火と風鈴と」#シロクマ文芸部

「風鈴」と打つと検索結果に「(38)」と表示された。「種田山頭火全集・68作品⇒1冊」の話で…

泥辺五郎
3週間前
21

「燃え上がるかき氷/すくわれないスーパーボール」#シロクマ文芸部

 かき氷の屋台から火の手が上がっていた。かき氷を作る機械を酷使し過ぎて燃え上がったようだ…

泥辺五郎
1か月前
17

「老人とウニ」#シロクマ文芸部

 海の日をウニの日に変えた老人の話をしようか。  老人はある時海で溺れていたウニを助けた…

泥辺五郎
1か月前
16

「フライングフライパン」#シロクマ文芸部

 夏は夜になるのが遅いので、黒いフライパンが空を飛ぶ様子がよく見える。早めに夕飯の支度を…

泥辺五郎
1か月前
13

「オオアリクイが夫になったきっかけの話」#シロクマ文芸部

 手紙には蟻文字が記されていた。文字の代わりに蟻が這いまわって文字の形を取るというやつだ。魔法と人間が同居していた頃に使われていた古代文字だ。こんな文字を今時使う人間の気が知れない。などと思っていたら、蟻の下にボールペンで書かれた文字が見えた。ジュースでもこぼした紙に書かれた手紙だったらしく、そこに蟻がたかっていただけだった。あなたが好きですとかずっと好きでしたとか、本当はこんなことを書くつもりはなかったのですが好きです、とかそんな文章が蟻の下に見え隠れしたので、何も見てない

「音がら」#シロクマ文芸部

※「声がら」の続編にあたります。前回読んでいなくても問題はないです。  ラムネの音がらが…

泥辺五郎
2か月前
25

「風呂迷宮・風呂空間」#シロクマ文芸部

 月曜日から風呂に入れていない。もう日曜日になってしまうというのに。梅雨時の湿度の高い暑…

泥辺五郎
2か月前
21

「ミニチュアメカキリンは紫陽花を好む(挿絵つき)」#シロクマ文芸部

 紫陽花を好んで食べようとするのだ、うちで飼っているミニチュアキリンは。紫陽花の咲き乱れ…

泥辺五郎
2か月前
18

「ハウリングレインリフレイン」#シロクマ文芸部

 雨を聴く細胞が全身にあった頃を思い出す。人になる前は蛙であった。蛙になる前はオタマジャ…

泥辺五郎
2か月前
21

「人の降る街では転落死を防ぐために政府から羽根が支給された」#シロクマ文芸部

 赤い傘を差していたので、血の雨が降っているのに気付くのが遅れた。手首を切った女性が空を…

泥辺五郎
3か月前
23

「声がら」#シロクマ文芸部

 金魚鉢に残された金魚の抜け殻を見つけ、夏が近いことに気がついた。確か去年もそうだった。…

泥辺五郎
3か月前
19

「靴になった骨」#シロクマ文芸部

 白い靴のような骨が残った。祖父は日々歩き続けているうちに足が靴のようになった人だった。死因は「歩きすぎ」と診断された。骨が靴の形になるまで歩き続けたものの、足に身体がついていけなかったのだ。上半身と精神は足からどんどん離れていき、下半身は歩き続けながらも、上半身は寿命を迎えてしまった。お通夜は騒がしかった。バタバタ暴れる下半身を無理やり棺桶に納めるのに苦労したからだ。  祖父の死以来、飛び回るような忙しさで夫の死の後始末をしている祖母には羽根が生えてきた。あちこち移動する