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音楽随筆集「Rainbow In The Dark」DIO

 昨年末頃から突然始まった「悟空とベジータごっこ」について記しておく。

 息子(6歳)が悟空となり、私はベジータとなり、戦いを繰り広げる。
「サイヤ人の王子であるエリートの俺様がカカロットごときに……」などと、ベジータっぽい台詞を言いながらも、私が演じるベジータは悟空にボコボコにやられ続ける。修行パートもあり、悟空はラーメンを食べてプロテインを飲んでパワーアップしていく。ベジータは修行中にビールを飲み始めてしまい、むしろ弱くなってしまう。

 助っ人として私はフリーザを連れてきた。既に最終形態になっている、白くて小さいフリーザである。
「私の戦闘力は53万です」一人二役を演じる私は、フリーザ的な台詞も吐いてみる。
「悟空の戦闘力は1無量大数!」と息子は桁違いの戦闘力を口走る。
 更に悟空は「ブラック悟空」へと進化している。最近のアニメ「ドラゴンボール超」に出てきた「ゴクウブラック」のことらしい。アニメは見ていないが、You Tubeで適当な知識を得たのだろう。ブラック悟空は金色(超サイヤ人)よりも強く、鼻くそをほじりながらベジータを軽くあしらい続ける。かめはめ波も進化して「レインボーかめはめ波」を打ち始めた。

 なるほど、全ての色を混ぜると黒になる。レインボーが極まりブラック悟空になったというわけか、と思った私の脳内にDIO「Rainbow In The Dark」が流れ始めた。ロニー・ジェイムス・ディオの暑苦しい歌声が集中力を乱す。少しでも油断すると、ごっこ遊びの方向性がどこに向かっているか把握しそこねる。「もっと集中して!」と息子に怒られる。

「なんだこのMVは。なんだこのロニーのファッションは」というのは「そういう時代だったから」で片付けておくことにして。歌詞考察サイトを読んでも分かるような分からないような。少なくとも「悟空とベジータごっこ」を歌っているわけではなさそうだった。

 
 息子の演じる悟空は「ドラゴンボール」での悟空とはかなりキャラが違っていて、布団の上に座り、横に置いた枕に肘を置いて玉座のようにして、王様のように振る舞い始める。ベジータが襲いかかっても当然あっさりと攻撃は跳ね返される。「Kill The King」? と、ロニーの歌う曲が頭をかすめる。

 仲間だったはずのフリーザが裏切り、悟空の仲間となってしまう。二役を演じながら敵味方に分かれるのはかなり大変なことで、悟空側につきながらベジータを煽りつつ、ベジータに戻って「なぜ裏切ったフリーザ!」などと雄叫びをあげる。代わりになる味方を呼んでみるが、やってきたのはスポンジ・ボブとその親友パトリックで、何の役にも立たない。

 その後息子の演じるブラック悟空はサイボーグになってさらに強くなる。「影分身の術!」などと言って増えもする。ヤケクソになったベジータが襲いかかると、「ザ・ワールド!」と言って時間を止め(「ジョジョの奇妙な冒険」に出てくる、ディオのスタンド能力。時を止める)、硬直した私に無数の矢を射ち込んでくる。時間停止解除とともに倒れ込みながら、私は目をつぶる。一瞬だけでも暗闇の中に逃げ込んで休みを取る。
「さっきDIOの『Rainbow In The Dark』が流れたのは、この伏線だったのか……」などと思いながら。

 といった「悟空とベジータごっこ」を先日は一時間ぶっ通しで行った。という話。

(了)


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