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国や文化、言語の境界を超えて、地域の課題に挑戦する”仲間”、”つながり”をつくる、DOOR to ASIA

DOOR to ASIA」は、アジア各国で活躍する若手デザイナーが地域に一定期間滞在し、地元事業者のことを深く理解し、 “コミュニケーションデザイン” を制作・提案する、デザイナーズ・イン・レジデンス形式プログラムです。

DOOR to ASIA」(以下、DTA )のスタートは2015年。東日本大震災で打撃を受けた東北の事業者の方々と小さくても確かな繋がりを作ることから始まりました。
現在まで24カ国97人のデザイナーと、48事業者/自治体の方々と一緒に17プログラムを作ってきました。
しかし、2020年から続くコロナ感染拡大の影響で海外からの渡航制限が続いている状況です。そのような中にあっても交流を絶やしたくないとの想いで、2021年からオンラインプログラム「Knock! Knock! Open the DOOR to ASIA」を開催しています。

「DOOR to ASIA」 は、何をするプログラム?

DTAは、地域事業者が抱える課題に対して”デザイン”という手法を使い、事業者が持つ価値を共に整理し、自分たちが歩むべき道筋を確認し、信頼できる仲間をつくっていくことでより良い地域の未来の実現を目指していくプログラムです。

地域内外をつなぎ、国やセクターの領域を超えたプレイヤー同士の学び合い・助け合いのプラットフォームをつくることを目的としています。

デザインを通じて、事業者とデザイナーの間に小さくても確かな、未来につながる扉を開くことができたら。
そんな想いから、「アジア」や「未来」に向けてひらく「扉」という意味で「DOOR to ASIA」と名付けました。

参加する国内外のデザイナーは、数日間泊まり込みで事業者の仕事や暮らしに入り込み、事業者の方々がどのような場所でどのような想いを持ち、何を目指しているのかを五感で理解しようとします。

同時に、受け入れ事業者や地域住民も最大限の熱量でお互いの背景や背骨にある理念を理解しようとします。
こうすることで表面的な課題のヒアリングだけでは決して生み出せない、愛のあるデザインが出てくるのです。
プログラムの最終日には、事業者の暮らしや人生観までを知ったデザイナーが、その事業者にとって正しいデザインとは何かを考え、愛のこもった提案を届けます。
その結果、相手に対する深い理解と共感が生まれ、事業者と外部プレイヤーであるデザイナーたちの一生続く家族のような関係にもつながっていくのです。

地域の事業者さんとデザイナーの間で生まれる「信頼」のサイクル

農山漁村を含む地域には、歴史的な遺産や農林水産物といった物理的なものだけではなく、人々の生活に根ざした知恵や長い年月をかけて培われてきた技術、語り継がれる歴史・文化が今もなお大事にされているところがあります。

しかし、それらの多くは地域に住む人たちにとっては当たり前すぎるがゆえ、その価値を認識できていなかったり、自分たちでどのように活用していくべきかわからなかったりするケースが少なくありません。
また、予算規模や言語、発想力や発信力などが障壁となり、外部との連携や自らの強みをいかした活動に展開させることが難しいケースもあります。

このような問題や課題を抱える事業者にとって、DTAは事業や商品の強みを再確認する機会になるでしょう。また、各地に自分たちを深く理解してくれる仲間ができることで、これまでの延長線上にはなかった未来を想像するきっかけにもなります

地域・事業者とデザイナーの双方にとって

事業者にとってDTAは、自分たちの可能性をデザインという形で提案してもらえるプログラムです。また、参加デザイナーにとっても多くの学びがあります。
アジア各国で活躍する若手デザイナーが参加するため、国境を越えたデザイナー同士のつながりをつくることができるとともに、アジア各国の共通課題である「地域創生」や「自然災害」におけるデザインの役割を実践的に学ぶ機会にもなります。

また、プログラム終了後には事業者の多くが「今まで出会ってきた誰よりもDTAデザイナーが自分たちのことを理解してくれた」と口にします。
はじめは半信半疑だった人たち、特に内向きだった人たちが国や言葉の壁を越えて親友のような関係性になることもありますし、参加した海外デザイナーが「自分の国でもDTAのプロジェクトを実施したい」と、自分の言葉・自分のプロジェクトとして紹介することもあります。
このように、DTAから生まれた種が芽生え、国境や言葉の壁を越えて新しいきっかけになる、そんな循環が生まれています。

DOOR to ASIA が生み出す価値とは?

DTAは文化も言語も年代も異なる人々が共通の目的で集合し、それぞれに課せられた成果を出すために自身の力を最大限に発揮しようと挑戦するプロジェクトです。
実際に、DTAを通して、一般的なマスマーケティングのやり方ではなく、個人と個人の間に「確かな繋がり」を作っていくことが実は近道であり、しっかりとした成果を生み出すことができると感じています。

相手のことを理解し、全力で応援し、「デザイン」という手法で伝えていくプロセスは問題を解決するだけではなく、「繋がる関係作りの場」なのではないかと思います。

DTAに参加していると、運営スタッフも含めた全参加者の心が動く瞬間を感じることができます。
例えば、これまで外国の人と話す機会が無く、自身の仕事を客観的に理解しデザイン提案など到底不可能だと考えていた日本の地域事業者が海外の若いデザイナーの真摯な姿に感銘を受け、想像していなかった理解力を目の当たりにした瞬間の表情。
通訳を介しながらコミュニケーションをはかり、数日過ごしただけなのに相手を想う力が強くなり、自然と涙があふれるデザイナーたち。
地域事業者の強い想いを海外デザイナーにどのように通訳し伝えれば良いか、悩みながらも短期間で成⻑する通訳/コーディネーターの姿。

DTAを通して、驚くほど多くの「人が人のために何かをする」瞬間と出会うことができます。そうした共通経験が、「これからも応援したい」、「つながり続けたい」と思う関係性をつくるのだと思います。

誰かのために、自分の役割を考える

他人事ではないと思える仲間が世界の各地に存在し、その人のためにみんなで連携して全力で取り組む。DTA参加後もそうしたプロセスが続き、「また会いたいな、また一緒に何かやりたいな」と思えるようなつながりやコミュニティが生まれます。

2015年に東北でスタートしたDTAは、これまで24カ国・97人のデザイナーと48事業者/自治体の方々と一緒に合計16のプログラムを実施してきました。
そのうちのおよそ半数の事業者はプログラム終了後も何らかの形で参加デザイナーと仕事を継続し、海外デザイナーは自身の国でもDTAを実施したいと新たなプロジェクトが生まれています。

こうした動きを後押ししているのは、参加者の“やりたい気持ち”や“”エネルギーです。そして、関係性を継続させるには、「Thinking of you」=「あなたを思う」気持ちが必要です。
目に見える成果物がすぐに産まれなくとも、心と心が通い合うことが大切。
DTAでは、その感覚を共有できる人たちが一緒になって創り上げることに意味があると思っています。

コロナ禍で、オンラインで開催 “Knock! Knock! ”

コロナ禍で各国の行き来が困難になった今、人々の意識も情報も内向きになりがちで、未来の可能性も狭まっているように感じます。
しかし、こんな時代だからこそ、それぞれの現場や立場、試行錯誤していることや挑戦していることなどを共有することにより、ヒントを得たり、お互いに影響を与え合ったりしながらより良い未来をつくっていけるのではないかと思います。
また、ひとつの場所に集まって開催することだけが意義ではないとも思えるようになりました。

こうした思いのもとスタートしたオンラインイベント「Knock! Knock!」は、自然災害や社会課題などに対して国を超えた交流のあり方を当事者全員でつくろうとしています。
国単位のざっくりとした情報ではなく、個人が抱えている悩みや喜び、試行錯誤は、きっと誰かの背中を押し、前を向いて歩む参考になると思います。
だからこそ、もっと多くの人に聞いてもらいたいですし、交流が続いて誰かのより良い人生につながることができたらとも思っています。

1回目のKnock! Knock! Thailnd
オンラインイベント


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