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さよなら、未来人さんは遠くを見た。

 土の中から飛び出した!!

 土から産み上がった僕の脳内に、言葉が浮かんだ。

 "未来"

 僕の脳内で曖昧に見えるのは、煌びやかで、機械が巡り、人々が群がり、心が豊かで、笑いの絶えない世界。

 この世界が本当にあるのかわからないけど、僕はこの世界に行きたいと直感で思った。この土しかない世界から一歩抜け、その曖昧な夢の世界。

 僕は、浮かんだ"未来"と言う言葉はそう言うことなのだろうと思った。

 唯一あった道を歩く。ただ真っ直ぐ、確信を持って歩く。ここを歩けば未来に繋がる気がした。

 何日も何日も歩くと、やがて土の道は石畳になり、いつしかコンクリートになっていった。

 周りの風景も、土だけから木が増え、川ができ、山が増え、家がパカっと生まれる。

 うごめく隙間から見える土から、ビルやコンビニや鉄塔が湧いて出てくる。

 いつしか鉄とステンレスが生い茂り、金属の森になった。その場所から、一人の男が出てきた。

 「ぴfuvbょぴきyO!!おーい!人が来たぞー!」

 その男は、不思議な言葉の驚き声を出し、鉄の森から仲間を呼び出した。

 ぞろぞろと子供や大人たちが鉄とコンクリートの家や、電線の穴倉から出てきた。笑いながら、僕のことを囲む。

 それぞれが僕に向けて、「何処からきまの?」「何しに来たの?」と聞いてきた。

 「僕は土から生まれて、未来を探しにきた。ここに未来はありますか?。」

 ここの人たちは"未来"という言葉を知らないらしく、何故か僕のことを"未来人"と名付けた。

 最初に会った男が、「多分、ここにあるんじゃないかな。」と、周りの仲間に視線を向けた。

 半分は頷き、残りは興味なさげに帰ってしまった。

 男たちに連れられて歩くと、景色はやがて蛍光色が広がり始め、電飾が地中を泳ぎ始めた。

 空はまるで蛍光ペンで彩られたように明るく、でもそれは何処か毒々しく感じた。

 僕は到着したのは、首がモニターになった人々が遊んでいる広場だった。

 「ビプ36ニhdeyjロ、メア;(&@キハ5433テァテォ。」

 やっぱり、言葉なのかもう認識できない不思議な言葉を発した一人が僕の前にやってきた。

 よく見るとモニターにも、何かよく分からない言葉が連なっていた。しかも、何か会話しているようにも見えるし、独り言のようにも見える。とにかく、モニターの言葉は激流だった。

 「彼らは電脳人間だ。やぁ!き÷は!サミllgresd8〒*>ヲカワ。」

 広場にはテーブルが並び、いい匂いを漂わせる料理と服が並んでいて、男の仲間たちがそれをムシャムシャと音を立てて食べている。電脳人間は見ているだけだった。

 それはまるでパーティのようで、金属の森も柔らかさが生まれ、今度は地面から遊園地が生えてきた。空からは風船とキャンディーが降ってくる。

 男たちと電脳人間は、楽しく会話をしていた。まさにパーティで談笑する貴婦人のように。僕はそれに入れない幼い子の気分。

 「ねぇ、君たちは未来に行かないのかい?。」

 僕がそう聞くと、みんな笑った。

 「未来?なんだい未来人さん?僕らにはわからないよ。」

 「ヌメ5269pgjmamwワ、ヤナワヤkgt12zsナナハシハ(¥&-/,!(5シメチョ!。」

 男の後に電脳人間が何か喋ると、なぜかみんな納得した。男に通訳を頼むと、どうやらこういう意味らしい。

 未来なんてとこ行かなくても、ここにはなんでもあるから。満足、大満足!!

 「そう、ここはなんでもある!なんでもあり!みんながみんなを求め合っている!。」

 そう言いながら、四方から男の仲間たちがうじゃうじゃ出てきた。互いに何か言い合っている。

 「僕は君を必要としている!。」「僕は君を必要としている!。」「僕は君を必要としている!。」「僕は君を必要としている!。」

 みんながガヤガヤ言い合ってる中、突然、男が大声を出した。

 「みんな一緒!心が通じ合ってると思うんだ!みんな一緒!!。」

 今度は「みんな一緒!。」「みんな一緒!。」「みんな一緒!。」「みんな一緒!。」と連なるように叫んでいる。

 僕は、その中の一人の首根っこを掴み上げた。

 「君は、どうしてみんな一緒だと思うんだい?。」

 そいつはまるで魚のように暴れながら教えてくれた。

 「僕を必要としているからだよ。たぶん。」

 そいつは、後ろの方にいるやつにもそう声をかけた。するとまた連鎖するように「君のことが必要だからだよ。」という声が広がる。

 面白かったので、「もうすぐ世紀末だよ。」とデマかせをいってみると面白いくらいにそれが広がり、気付くと「みんな一緒!。」戻っていった。

 僕はもう一度「どうして?。」と質問をしたが、「君を必要としているから。」としか返ってこなかったので、目の前の人間の川みたいになってる広場に投げ捨てた。

 ずっと続く「みんな一緒!。」という言葉はやがて、「みんしょ!。」という言葉になった。そして、気づいたら「しょ!。」だけになっていた。

 しょ!しょ!しょ!しょ!しょ!しょ!しょ!しょ!しょ!しょ!しょ!しょ!しょ!しょ!しょ!しょ!しょ!しょ!しょ!しょ!しょ!しょ!しょ!しょ!しょ!しょ!しょ!しょ!

 すると、いつの間にか目の前に甲冑を見に纏った足軽や武将達が大河のような大行列を作り、「しょ!。」という言葉は甲冑が動いた音になっていた。

 地面から生えた遊園地は、分裂し、家になり、その中で遊園地になっていた。一人一人の遊園地。

 その中では、マイクを持つ者、銃を持つ者、椅子やボールになんだかよく分からない棒をもつ者までいた。

 いつしかその中の遊園地は、濃い紫、毒々しい光を放ち、咲いた。そこから電子人間が羊水まみれになってこぼれ落ちた。

 ボタボタ、たくさんの電子人間が生まれる。

 奴らは立ち上がると、音楽を流し始め、踊る。同時に、足軽も武将も踊り始めた。

 「ファンキーで、グルーヴィで、エモくて、ブチ上がって、チルってるって!」

 電子人間の最初に喋る言葉はこれだった。正確にいうと、それ以外は分からない。脳が言葉として理解してくれない。

 僕はなんだか、その光景から遠ざかる気分になる。地面がグニャ〜ンっと広がって、遠くなる。

 ふと、思う。

 ここに、未来はない。

 皆、ここが1番だと言うが、僕はそうは思わない。

 そう思うと、突然、彼らの世界が変化した。

 空は金色に変わり、地面は銀色が広がった。突然、イルカが飛び上がり、宇宙人が爆発して現れる。

 山と古い家を壊すようにサーカスとチンドンが詰まった屋根のない、長いバスが縦横無尽に走り出す。

 人も、車も、コンピューターも、木も、草も、果物も、野菜も、肉も、山も、地面も、海も、川も、魚も、ゴミも、みんな笑っている。

 みんなみんな、笑っている。

 そこから、僕の足元2メートル先が境界線のように変わっていく。

 僕のいる場所は、草原だった。

 透き通るような風が吹いていた。

 その風は一本の道に沿うよう、そして、その道と同じように流れていた。


「君は行ってしまうのかい?。」

 最初に出会った男が、境界線の手前で僕に声をかけた。

 「はい。僕の未来はここにはないです。」

 「ちょっと、なんて言ってるか分からないなぁ。」「何語だありゃ。」「聞き取れねぇし、なにいってるかわかんsf/; d&@(」

 何故か、言葉もわからなっていた。そのせいでみんな僕に対して怪訝な顔を見せている。

 あっちの住人は境界線に沿って、一列に並んでいた。みんな僕を見ているか、興味のない人間は、やっぱり帰って行った。

 僕は振り返って、たった一本の道を歩んでるきだそうとすると、

 「僕もいく。」

 少年が僕の元に走ってきた。あっちの住人達は誰も止めようとはしていない。

 「君も行きたいのかい?未来に。」

 「何言ってるのかわかんねぇけど、面白そうだから行くわ。」

 少年にも僕の言葉は通じないらしい。でも、なんだか心は繋がっている気がした。

 僕は少年と一本の道を歩くことにした。

 長いこと歩き、太陽が地平線の先から照らす頃、たくさんの道に分かれる分岐点についた。

 それは二本とか三本ではない。数えるのも億劫になるほど無数に道があった。

 「どの道にいくの?。」

 少年は不安そうに僕を見つめる。

 僕は、安心させるように少年の頭を撫でた。

 「どの道に行こうか、どの道に行ってもどこかに着く。どこに着くは分からない。宇宙の果てまで続いているからね。」

 少年はポカーンとしていた。やっぱり少年には僕の言葉は通じないらしい。

 でも、僕はそれでもいい。

 また、透き通るような風が道から吹いてきた。

 「じゃあ、この道を行こう。」

 僕は、行こうと決めた道にまっすぐ指を刺した。少年は大きく頷き、ただ真っ直ぐ道の先を見ていた。

 その先は、大きな太陽と世界が広がっていて、何があるか未知の世界だ。

 ただ、その道には"未来"あると確信していた。

 「じゃあ、僕たちはこの道を行くけど、君はどの道を行く?。」

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