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私は君に、鋏を届けに
シオマネキという蟹がいる。彼らは大人になる前に、自身の片腕を切り落とす。
車窓を飾る海岸線が流れていく。シーズンオフの海辺は彩りを潜め、人影といえばそれぞれの居場所を独り占めにするサーファーや釣り人が砂浜に散見されるばかりである。その人影も列車が進むにつれまばらに消えていき、閑散とした風景に見覚えもないまま、私は理由のない郷愁を抱く。
通り過ぎていく砂浜のどこかに、湿った砂をかぶったまま置
白猫の話をする錆色の鼠の話
そんな怖い顔しねえでくれよ。
何も追い出そうってんじゃねえんだから。そこへ座りなって。
この通り、こちとら老いさらばえた痩せネズミなんでな。オマケにホラ、腕が一本足りてねえ。アンタなんかがその気になったらこの屋根裏から叩き出されるのはこっちの方だ。
ちょうどブドウを絞ったところだったんだが、飲むかい。白サラミをやるつもりだったんだ。クラッカーの欠片がまだあったから、そいつを出すよ。
この