旅する絵本♡がはばたく①
前回までは、旅する絵本♡が生まれるについてでしたが、今日はその後の展開について「はばたく」と題して、記したいと思います。
(1)新型コロナがやってきた
旅する絵本♡が生まれたのが2019年12月。その後、イベントなどを通じて、1カ月間で、約50冊の旅する絵本♡が、ドンハマ★のもとを旅立っていきました。
旅する絵本♡の運営母体である、えほん未来ラボ(えみラボ)の立ち上げ期ともちょうど重なり、仲間のサポートも受けて「えほん未来会議」というキックオフイベントを2/24に開催する予定でした。リアル会場50名、オンライン20名の参加が見込まれていたので、旅する絵本♡を実際に体験できる時間も準備して、更に広めていける態勢に入っていました。
しかし、その1~2週間前から、新型コロナが各地で急激に深刻化。不要不急の外出自粛が叫ばれるようになり、「えほん未来会議」も泣く泣く中止せざるを得なくなりました。今から考えるとまだコロナ序章のような状況だったわけですが、その後、えほん未来ラボ(えみラボ)の活動は全面的に休止、当然、旅する絵本♡も同じく、まったく動けない状況を余儀なくされました。
個人的な話ですが、本業の企画もことごとく中止、仕事場もオフィスからテレワークに大転換。ほぼ一日中、家での暮らしになりました。気晴らしに散歩に出たり、買い物に近くのスーパーに行ったりもしましたが、いつまで続くかもわからない状況で、不安な日々を送っていました。
(2)このまま負けたくない
世界規模でもコロナのパンデミックが起こっていましたし、日本国内でも、学校の一斉休校措置、コロナ患者数の激増など、状況は緊迫度を増していました。
これまで絵本に関わってきた者として、こんな時だからこそ、絵本でみんなが少しでも元気になったり、束の間でもホッとしたりできる、そんな行動を起こせないか、やはり考え続けていました。
コミュニケーションツールとしてのオンラインが急激に普及し、オンラインによる絵本会を立ち上げた友人知人もいましたが、どうにもこうにも私には、オンラインへの強い苦手意識と拒絶感があって、そこに加わることはありませんでした。八方塞がりのような状況で、気持ちも更に落ち込んでいました。半径1キロ、2キロの世界で日々生きながら、自分のリズムだけはせめて壊さないようにしつつ、時をひたすら待っていた気がします。
そして、4月に入りました。緊急事態宣言が発せられ、ますます不便な暮らしを余儀なくされる中、このままコロナに負けたくない、という気持ちだけは持ち続けていました。旅する絵本♡はそれまで、face to face での手渡しにこだわっていたけれども、コロナ下では叶わないことです。郵送など他の手段を使ってでも、旅する絵本♡を復活させようという気持ちがMAXに達したのです。
(3)コロナ(567)を超えたい
旅する絵本♡の復活と言っても、どの程度、送り出すのか?また、自力でどこまでできるのか?まったく見当がつきません。
コロナに立ち向かう気持ちを具体的な形にしたかったので、コロナ=567というダジャレがすぐに浮かびました。567冊を超える旅する絵本♡を送るという企画が実現したらスゴいなと思いました。しかし同時にそれを実行に移すのは、正気の沙汰ではないと思いました。
そもそも申込んでくれる人が、そんなにいてくれるかどうか見当がつきません。さらにそれだけの絵本を本当に送り出せるのか、まったく自信もありません。それまで約50冊の旅する絵本♡を送り出してきて、その作業量がどのくらいになるかは、わかっていました。加えて、今回は手渡しではなく送付ですから、経験したことのない作業工程も加わるわけで、それをほぼ一人でやってのけるは、正直あり得ないと思いました。
折衷案として、キリのいい100冊とか。COVID-19からイメージする数字なども考えたのですが、そんな中途半端な数では、やる意味がないと思いました。
ちょうど、そんな時(4月10日頃だったと思います)、大阪の友人がfacebookに「自宅の絵本を日本全国に貸し出します。送ります。」という投稿をされたのです。休校などで子どもたちが家で過ごす時間が増え、親の負担も増えている。ほとんどの図書館や本屋さんもクローズしている中で、少しでも心豊かに過ごしてほしい。そんなお気持ちから、この絵本の貸し出しを決断されたようでした。
この投稿に私は衝撃を受けました。できるとか、できないとか、ごちゃごちゃ悩んでいる場合じゃない!って言われた気がしました。とにかくやってみる。やりながらいろいろ考えればいいし、どうしても難しければ、途中でごめんなさいしたっていいじゃないかと思えたのです。こうして「アマビエといっしょに旅する絵本♡〜コロナ(567)を超えて」は、4月15日スタートに向けて動き出しました。それも、かなり高速回転で動き出したと思います。
(4)直感とこだわりの制度設計
このアマビエといっしょに旅する絵本♡、その試みのほとんどが経験したことのないことでしたので、これだけは外したくないという私の中のこだわり要素を積み重ね、あとは直感でまとめあげるような企画内容になりました。
1.コロナ(567)を超えるために568冊以上の旅する絵本を送る 2.1申込につき、2冊の絵本を送る(つまり284件の申込で568冊に到達)3.アマビエのイラストを描いた終息祈願のオリジナルポストカードを同送4.一日3件、月間約100件送付できたとして、約3カ月でコロナ超えに到達 5.参加申込は、無料。ただし、投げ銭は大歓迎 6.必要経費は、約10万円(絵本代除く)※特別給付金を全額使うイメージ
1申込につき、2冊とした理由は2つあって、ひとつは、申込数と発送数が568というのでは、果てしなく困難なイメージがありました。一方、300件ならば、何とかなりそうな気がしました。ふたつめは、送る絵本はすべて、えみラボ(ドンハマ★)セレクトになるので、申込者のイメージと違う絵本が届くリスクを少しでも回避したいということでした。毛色の違う作品を送れば、少なくとも1冊はしっくり来てもらえると考えたのです。また「2冊届きます」の方が1冊よりもワクワク感もアップするだろうと考えました。
旅する絵本♡を受け取るワクワク感や満足感がなければ、次にリレーしようという気持ちも生まれにくいはずで、ここは、根幹である「旅をする(続ける)」に直結する部分で、とても大事な部分だと思います。
旅する絵本♡を一番最初に考えたとき、自分にとって「どちらかと言えば無くても困らない絵本」を旅に出せばいいというイメージもあったわけですが、この段階では、そういう邪心もなく、分け隔てなく旅させて行こうというスタンスになっていました。(実際、装丁や発送作業が始まるととフル回転の家内制手工業状態で、絵本を選ぶというような精神的な余裕はほとんどありませんでした。それはもう絵本の神様に委ねるしかないわけです)
記念すべき「アマビエといっしょに旅する絵本」の1冊目。Beyond Covid-19という意味で、シールには《BC1》と通し番号が記されている。この通し番号が570まで付けられた。(「モモリン」立川志の輔作、いぬんこ絵、ばばけんいち編、あかね書房)
(5)アマビエといっしょに、どう拡がったか?
急遽、企画内容をまとめ、WEBサイトを作成、4/14から募集を開始しました。国内では、緊急事態宣言が、4/7に東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都府県対象に発せられ、4/16には、全国に拡大していきます。
アマビエといっしょに旅する絵本♡へのお申込みは、当初は、ドンハマ★の絵本仲間や友人知人が中心でしたが、第二週目(4/22)あたりから、ママさん仲間で「子どもむけに絵本を送ってもらえる」とうわさになったり、実際に旅する絵本♡を手にした方が、ステキな企画だとブログで紹介してくださったりして、想像を超えるペースで申込が増えていきました。
申込件数は日によって、かなり変動もあったのですが、GWがスタートの4/29には、過半数に達し、スタートして約1カ月の5/17には、全国47都道府県からお申込みをいただき、コロナ超えを達成しました。当初の予想の3倍の早さでした。
このようなスピードで達成できたのは、図書館や書店の休館、休業などを背景に、STAY HOMEを余儀なくされ、子どもと日常を過ごす中で、絵本の必要性を感じてくださった方がたくさんいたことと、旅する絵本♡のコンセプトに共感を感じて、紹介など応援してくださる方が多数いらっしゃったことにあると思っています。本当に心から感謝したいです。
旅する絵本♡の装丁・発送作業は、4/20頃にスタートしました。旅する絵本を装丁するだけでも、いくつもの工程がありますし、送付リスト作成や記録写真を残すなどの作業も必要になりました。また、装丁し終わった旅する絵本♡から2冊セレクトして、専用ケースに封入し、宛先を印字し貼り込む作業。これらの作業の繰り返しで、自宅の小部屋は、もうしっちゃかめっちゃか状態でした。のり付け作業では、床をベタベタにしてしまうなどの失態もありまして、特に最初の一週間は、先行きが見えない作業の進捗状況に、本当にこの作業は終わるのか、とても不安になったのを覚えています。
受け取った方々から、喜びの声や写真をいただけるようになって、なんとかやり遂げるためのエネルギーをもらえたとつくづく思います。
郵便局への持ち込みやポストへの投函が、日々の習慣になっていました
(6)さいごに(お金のことなど)
ちょっとお金のことを書きます。本も拠出して、送料とかも負担してすごいですね、と言われたことがあります。確かにそういう見方もあると思うのですが、旅する絵本♡でコロナ(567)超えすることが最優先事項でしたので、無料で送ることが必要と判断しました。有料にすれば、申込者が減る可能性もありましたし、私の作業としても、一回一回入金確認しなければいけなくなります。そういう作業がプラスで入るのは避けたいというのもありました。
実際、特別給付金の10万円とほぼ同じ金額が掛かったわけですが、当初の予定の3カ月で完了したとすると、1カ月約3万円。コロナで飲みに行くこともしなくなったわけですから、自分のおこづかいを使ったと考えれば、無理はさほどなくなります。仮に私の趣味が釣りで、その道具を揃えたり、いろんなところに釣りに出かけるので、月3万円掛かっていると言えば、だれもそんなには驚かないはずです。何かを為すとき、時間面でもコスト面でも、自分のコントロールが利くパースペクティブを立てることは、とても重要だと思っています。
不思議なことですが、最終的に収支を締めてみたら、掛かった費用とほぼ同額の投げ銭(支援金)がみなさんから集まっていました。「みなさんから支援をいただいて、壮大な遊びをやらせていただいたんだ」と思っています。
改めて振り返ってみて、なかなかスゴイことをやり遂げたんだと自分でも思います。もういちどチャレンジしますか?と聞かれたら、同じことは二度としたくないと答えるでしょう。つまり、あの時、あの状況でしか、成立しえなかった出来事でもあると思います。いろんな方の応援があって旅する絵本♡のコロナ(567)超えを実現できました。おひとりおひとりに心から感謝を申し上げたいと思います。
次回は、「はばたく②」と題して、これからチャレンジが始める「旅する絵本♡工房」について、書きたいと思います。
《アマビエといっしょに旅する絵本♡WEBサイト》 https://ehonmirai-lab.org/challenge-project/tabiehon/amabie/
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