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ベンチャー経営者が初めて採用する時にすること


自己紹介

初めまして。株式会社Crispの佐貫と申します。
戦略コンサル→スタートアップ立上(50名くらいマネジメント)→起業を経て、会社経営を12年ほどやっています。昨年、5年間続けてきた動画事業を売却したのをきっかけに、いろんなベンチャーの経営者・経営幹部や人事の方と交流するようになって、「みんな、こんなにも採用に悩んでいるのだな」と思ったので、採用の話でも書いてみようと思います。

採用でそんなに悩んだことがない

実のことを言うと、私自身は自分の会社の採用で悩んだことはあまりありません。前職のスタートアップ時代に自分で採用をやって50名のチームを作ったという経験もあったからでしょうか、初めてのときは当然、多少の試行錯誤はありましたが、それでも1ヶ月くらいで「うちの会社はこれで取れる」とコツが分かったような気がします。もちろん、採用の最初はかなり真剣に頭を使いますし、簡単とは言いませんが、経営者がちゃんとポイントを押さえて考えれば、思ったよりもスムーズに解決できるのではないかと思っています。
もちろん、正解はありませんし、あくまで私のやり方ですので、「ああ、こういうやり方もあるんだな」程度に思っていただければ幸いです。

ベンチャー採用のコツ

ペルソナとアトラクトは今北産業で

端的に言うと、「どんな人が取りたいか」「その人たちに何を伝えたら来たいと思ってもらえるか」を今北産業で(「今来たばかりだから、3行で説明してくれ」という意味のネットスラング)伝えるのがポイントです。ただ、これが簡単なようで難しく、少なくとも経営者が採用を人事任せにしている限りは実質、解決不可能な問題ないのではないかと思います。

「高収入イケメン」みたいな採用要件になっていないか?

ベンチャー経営者から採用のご相談をいただいた際に、「どんな人を取りたいですか?」と聞いてみるのですが、「素直で地頭が良くて行動力旺盛な人!」みたいな回答がありがちです。これって完全に「高収入イケメンで優しい人と付き合いたい」と言っているのに等しいですね(笑)「誰だって欲しいわ、そういう人!」って話なので、理想は分かるものの、まずこの次元で考えるのはやめておきましょう。

その会社ならではの人物特性を描く

むしろ、「うちの会社の人はパッと見、大人しいけれども、みんな芯が強くてクレイジー」とか「世の中を良くしようという志が高くて、社員で集まると、いつもそんな話をしている」みたいな「その会社ならでは」の人物特性を描いた方がいいと思います。そして、これは「どんな人が集まる組織にしたいのか?」という経営の問題であり、経営者の思想が欠かせません。なので、人事に丸投げはちょっと違うかな…と思います。

採用要件がペルソナにまで落とし込まれているか?

さて、採用要件ですが、「顧客折衝ができるエンジニア」とか「行動力を伴うコンサル人材」とか、往々にして自社視点で描かれやすいです。そうではなく、「営業に言われた通りに作るのでは良いものが作れないと問題意識を持っており、より上流工程に行きたい現職SIerのエンジニア」とか「学生時代にベンチャーインターンの経験があって、行動することの大切さをよく理解しているのだが、コンサル会社の働き方になんだかモヤついてきた若手3-5年目」みたいに、もうちょっと求職者視点で描写してみます。「自社で欲しい人」でとどまらず、「こういう人っているよね?」みたいな「あるある感のあるペルソナ」にまで落とし込むのがポイントです。

「〜をDXする」は禁句

「〜をDXする!大胆に挑戦!」みたいな言葉が世の中に溢れていませんか。アトラクトする際、実はこういうミスってやりがちです。「うちの会社ってこんなすごいプロダクト作ってる」「こんなすごい機能をリリースした」知ってもらうこと自体は良いことのはずなのですが、自社視点で伝えすぎてしまうと、求職者の自分事になりません。「ふーん、そうなんだ…」「俺には関係ないかな」「なんかちょっと敷居が高いな」そんな受け止め方になりがちです。

課題に共感してもらうことが大切

同じことを言うにも伝え方を変えましょう。他にももっと良い伝え方はあると思いますが、例えば、「世の中には〜という負債があって嫌じゃないですか。この会社はエンジニアリングの力で〜を解決しているんですよ」みたいな構文です。実際、私自身もこの構文は使いますが、これだけでも「確かに、世の中にはそういう負の側面、ありますね。それは変えたいな!」みたいにスイッチが入る可能性が上がりやすくなります(あくまで基本なので、実務ではいろんなコミュニケーションの合わせ技です)。

恋愛に例えると分かりやすい?

恋愛に例えるならば、好きな人を前に「俺すごいよ!」とは言えば逆効果なはずで、「この人と一緒いると楽しい」「安心する」と思ってもらえることの方が望ましい状態なはずです。良いところを見せようと力が入りすぎているのかもしれません。カッコつけず、「どうしたら共感してもらえるか?」の方が大切なのではないかと個人的には思います。

求職者の自分事にすることが大切

これを上手く伝えたのが、SmartHRさんだと思っていて、年末調整でお馴染みの「扶養控除等申告書」の用紙を見せて、「あの紙を電子にします」みたいにPRしていたと思います。あれを見たときに誰もが「あの煩雑な紙がなくなるのか。めっちゃ良い!」と心の中で歓声を上げたはずです。アトラクトの方法は一つだけではありませんが、そうやって共感を誘い、求職者にとっての自分事にすることがアトラクトの一つだと私は思っています。

伸びてるアピールしすぎていません?

ただ、そこを「給料がいい」とか「SOがある」とか「事業責任者に抜擢する」とか強いカードを使いすぎると、お金やポジション目当てになってしまいますし、とっておきの「会社伸びてる」カードに頼りすぎると、逆境時に事業に向き合ってくれるだろうか?という不安が否めません。
ベンチャーなのだから「一緒に世の中変えようぜ!」というシンプルなメッセージにしたいですよね。だからこそ、求職者の自分事に転換するコミュニケーションが大事だと思っています。

採用におけるベンチャー経営者の役割

経営者が組織に向き合えば解決する

いろんな会社のお話を聞いて思うに、採用に関する多くの問題は、経営者が組織に向き合えばかなりの程度解決するのではないかなと思っています。事業の高い目標から採用数が定められて、ここから先の採用プロセスを経営者は人事に丸投げしてしまってはいませんでしょうか。確かに、カジュアル面談やオファー面談に経営者が参加して「決定率を高める」みたいなコミットはしているのかもしれませんが、それ以前に、「どんな人を会社に迎えるか」「どんな組織にしたいか」という問いを経営者自身が磨き上げきっているかはとても大切な問題です。
これだけの人材難ですと、新卒採用に注力するベンチャーがますます増えていくと思いますが、ここの問いが甘いままに「素直で地頭が良くて行動力旺盛な人!」的な人物像にとどまっていると、かなり苦戦するかと思います。「その会社ならでは」の人物像に立ち返りましょう。

採用において経営者は「王様は裸」になりがち

「採用が上手くいっていない」「なかなかいい人取れないんです」という会社ほど、経営者が「王様は裸」みたいな状態になっていると思っていて、社長の知らないところで思わぬ問題が発生しています。
少し極端な例を挙げると「コミュ力が高くて実装力が高くて給料が安いエンジニア」を平然と募集していたり、「世界トップ企業出身のハイスペ人材」を選考担当者が社名を知らなかったばかりに書類で落としていたりみたいな、信じられない現象が起こっていたりします。
「マジかよ!?」って話ですが、誰もチェックしていないわけですから、そうなるわけです(注:膨大な採用オペレーションを回している人事さんを咎めるのはやめましょう)。

採用におけるイメージ減損率をいかに抑えるか

経営者の「こういう事業展開で行きたい」も「こういう人取りたい」も、採用では伝言ゲームになりますから、経営者の理想のイメージも、経営者→人事→エージェント→求職者…と伝言ゲームが続く限り、減損していきます。「採用におけるイメージ減損率をいかに抑えるか」がポイントなはずですが、「採用数はこちら!ちょっと大変だけど人事さん頑張って!」だと、さすがに頑張り屋さんの人事でもしんどいです。
イメージ減損率を下げる方法は色々あるのですが、会社によって正解が異なるので、気になる方は個別に聞いてください。

経営者はペルソナとアトラクトをチェック

繰り返しになりますが、「なんかちょっと上手くいかないな…」「思うように採用できないな…」と疑問に思ったら、ペルソナとアトラクトが今北産業になっているか、経営者ご自身でチェックしてみるのがよいかと思います。
CHROなんてそうそう取れないと思うので、これを経営者自身がやらないといけないのがちょっと大変ですが、会社の創業からの数年間を全て知っている唯一の人物が経営者なので、経営者こそが適任者だったりします。
「そこまでやりたくないよ…大変だよ…」悲痛な声も聞こえてきそうですが、とりあえず現状の採用のチェックだけでもしてみてください。

採用コスト、その差は200万円×人数!?

一番やっちゃダメなのが丸投げです。
採用のコアを決めないまま、経営者が人事に丸投げし、人事はエージェントとRPOに助けを求め、いたずらに採用コストは上がっていく…というのはベンチャーあるあるです。
観測範囲でベンチャーの採用コストは1名50万円〜250万円くらい。その差は200万円。100人取ったら2億円、1000人取ったら20億円の差がつきます。
経営者が組織に向き合わない代償は計り知れません。

まとめ

長くなりましたので、まとめます。忘れそうになったら「ペルソナ!アトラクト!今北産業!」と唱えてください(笑)

  • ペルソナとアトラクトは今北産業で

    • 自社視点ではなく、求職者視点で描けているか

    • 「あるある感のあるペルソナ」に落とし込めているか

    • 求職者の自分事になるようアトラクトできているか

  • 採用プロセスを経営者自身がチェックする

    • 採用数だけ決めて人事に丸投げしていないか

    • 社長の知らないところで思わぬ問題が発生していないか

    • 経営者の理想のイメージが求職者に伝わるよう設計できているか

困ったら相談してください

「一人で考えても難しそうだな…」と思う方はオンライン通話で無償相談に乗りますので、DMください。経営者・人事・事業責任者など採用に関わる方であればどなたでも結構です。いろんなケースを知ることが私の学びにも繋がりますし、少しでもベンチャーの採用が楽になって、世の中が良くなれば私としては望外の喜びです。

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