マガジンのカバー画像

一万編計画

1,334
一万編の掌編小説(ショートショート)を残していきます。毎日一編ずつ。
運営しているクリエイター

2024年4月の記事一覧

八月の眼球。

なんや今日、目ェぱきぱきするなって思っていたら、眼球が転げ落ちてしまった。でもそこに痛み…

背中の奢り。

恋と呼ぶほどでもなかった。でも僕と君はあの頃、お互いの背中にその全てを預けきって、静かに…

焼き肉。

焼き肉を食べるといつも、あぁ自分もこんな風に死ねたらいいなと思う。自分の生きた肉体を余す…

花を殺す。

今朝、俺はスウェーデンウォッカの瓶に冷凍庫につっこんだ殺風景なそれに)、切り花を移した。…

パンセモ。

一七九(モ113/ペ69) 人生の形容詞として、歯車はしばしば濫用される。好転することを、歯車…

スズラン。

「君はバラというより、スズランだね」 かつて関係を持った教師は私をそう評した。例に漏れず…

袋詰の生涯。

あぁ、やるせない。俺は袋の中で生まれてしまった。なぜ俺が思考しているかは分からない。周りの羽虫はただのたうち回るばかりで、俺の言葉に答えてくれない。酸素が薄くなり、頭がぼおっとしてくる。為す術はない。俺が奇跡的に獲得できた思考をもってしても、きつく結ばれた袋から脱出する方法は思いつかない。 俺は人間を悪いとは思わない。袋の中で蠢く俺たちを見て、人間は蔑みの視線をぶつけた。恐らく、俺たちは忌み嫌われる存在なのだろう。俺たちが何の害悪になるのかは分からないが、わざわざきつく縛る

光の彼方へ。

1年ぶりの健康診断で、右の視力が上がっていることが発覚した。僕は元より不同視で、右眼は1あ…

波打ち際の落書き。

五年ぶりに来た彼からの連絡は、同窓会の誘いだった。名前を見ただけでどこか面映ゆくなるよう…

マゾヒズム宇宙。

乳房がなる木々を抜ければ、一方通行な無重力がはじまる。電源のオンオフがある訳では無い。乳…

恋12年。

恋がウイスキーを追い越してしまった。 シーバスリーガル12年。僕はそのラヴェルを見て、過ぎ…

都市のキリン。

「あれは、キリンよ」 徹頭徹尾、キリンだ。キリン以外の可能性を探る方が難しい。道路の、真…

青いカーネーション。

無言の愛。僕はそれが好きだ。大好きな君を青いカーネーションに込める。忘れられないあなたを…

味のない煙。

閑散としたパブでシーシャを吸っていると、一席を開けたカウンターに女性客が座った。彼女は腰を下ろすとすぐにオーダーをして、『時計じかけのオレンジ』の文庫本を開いた。僕は傍目でその表紙を見て、彼女が誰かを望んでいる雰囲気を感じとった。もちろん、『時計じかけのオレンジ』を開いたことはきっかけに過ぎない。(猟奇的な小説が、そのサインであろうはずがない)それは一つの状況なのだ。誰かを求めている女性がいて、僕がここにいる。僕はいつもより深く煙を吸いながら、その機を覗っていた。 しかし、