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袋詰の生涯。

あぁ、やるせない。俺は袋の中で生まれてしまった。なぜ俺が思考しているかは分からない。周りの羽虫はただのたうち回るばかりで、俺の言葉に答えてくれない。酸素が薄くなり、頭がぼおっとしてくる。為す術はない。俺が奇跡的に獲得できた思考をもってしても、きつく結ばれた袋から脱出する方法は思いつかない。

俺は人間を悪いとは思わない。袋の中で蠢く俺たちを見て、人間は蔑みの視線をぶつけた。恐らく、俺たちは忌み嫌われる存在なのだろう。俺たちが何の害悪になるのかは分からないが、わざわざきつく縛るということは、俺たちを遠ざけているのだ。袋の中で生まれる俺たちを、隔絶しているのだ。 

あぁ、息が苦しい。隣の羽虫がくたばった。なんてつまらない生涯なんだ。俺の奇跡も袋詰めの中で完結する。もしも呪いが使えるなら、俺は自分自身を呪ってやりたい。あぁ、頭が痛い。


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