見出し画像

スズラン。

「君はバラというより、スズランだね」

かつて関係を持った教師は私をそう評した。例に漏れず自分の行いを正当化するクズだったが、数年前に亡くなった。

「バラの方、分かりやすくていいじゃない」

教師は、まるで教え子を諭すように続ける。(言っておくけど彼はみすぼらしいくらいに裸だ)

「君はその棘を隠すじゃないか。でも、好きなんだ。君が持つ、そういう陰湿な美しさが」


彼がスズランのブーケを買ってきた時、私の背筋には氷柱が走った。

「君にぴったりじゃないか」

私は情動的になりそうな心を押さえつけて、何とか言葉を紡ぎ出す。

「ねぇ、どうしてそう思ったの?」

「だって、すごく可憐だよ」

「……スズランには、あなたが簡単に死ぬくらいの毒が流れているの」

彼は少し考えるふりをしたが、すぐにあっけらかんと答える。

「君も、時々そういうとこがあるじゃないか」



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?