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一万編計画

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一万編の掌編小説(ショートショート)を残していきます。毎日一編ずつ。
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記事一覧

花を殺す。

今朝、俺はスウェーデンウォッカの瓶に冷凍庫につっこんだ殺風景なそれに)、切り花を移した。…

パンセモ。

一七九(モ113/ペ69) 人生の形容詞として、歯車はしばしば濫用される。好転することを、歯車…

スズラン。

「君はバラというより、スズランだね」 かつて関係を持った教師は私をそう評した。例に漏れず…

袋詰の生涯。

あぁ、やるせない。俺は袋の中で生まれてしまった。なぜ俺が思考しているかは分からない。周り…

光の彼方へ。

1年ぶりの健康診断で、右の視力が上がっていることが発覚した。僕は元より不同視で、右眼は1あ…

波打ち際の落書き。

五年ぶりに来た彼からの連絡は、同窓会の誘いだった。名前を見ただけでどこか面映ゆくなるよう…

マゾヒズム宇宙。

乳房がなる木々を抜ければ、一方通行な無重力がはじまる。電源のオンオフがある訳では無い。乳房を掻き分けて行くのには、それ相応の覚悟がいる。重力と決別をすること。少しの重力で壊れてしまうほどに、身体が脆弱になること。それらを引き受けた君は、くらげになって宇宙へ漂う。脳は壊死して、思考を放棄する。誰もが夢見る無為の世界へ、必要なのは君の覚悟だ。 覚悟がもろければ、無重力はそっぽを向いてしまう。君はひしゃげて、出来の悪いしゃもじになってしまう。少しの怯えも、少しの疑いも、無重力は見

恋12年。

恋がウイスキーを追い越してしまった。 シーバスリーガル12年。僕はそのラヴェルを見て、過ぎ…

都市のキリン。

「あれは、キリンよ」 徹頭徹尾、キリンだ。キリン以外の可能性を探る方が難しい。道路の、真…

青いカーネーション。

無言の愛。僕はそれが好きだ。大好きな君を青いカーネーションに込める。忘れられないあなたを…

味のない煙。

閑散としたパブでシーシャを吸っていると、一席を開けたカウンターに女性客が座った。彼女は腰…

バタークリーム・サイネージ。

バターにんげん。僕はバターにんげんだった。かりかりに焼き上がった君に僕はラバの痰みたいに…

君色の癌。

癌が僕の身体をむしゃむしゃと、まるで蛹になる前の青虫みたいに蝕んだ。あっという間だった。…

メッセージ。

どうして哀しい気持ちになるんだろう。 過去を過去で終わらせたくなくて、僕は躊躇いを越えようと思った。思い立った日に送らなければ過去はどんどん遠ざかっていくだけで、心臓の弁みたいな抵抗機械が図に乗るばかりだ。僕は君と話したいと思っている。それだけで十分じゃないかと、たかだか誕生日のメッセージくらいで一日中右往左往している思考が馬鹿らしいけれども、僕はメッセージをようやく送信する。気付けばたった一言だ。誕生日おめでとう。 返信が来て、僕は無の世界に取り残される。想像と仮定と現