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啓示。

余りにも克明だった。その夢の感触は現実を越えていた。明晰夢の向こう側にあった。僕は彼女が運命の人であることを悟ったし、彼女もまたそれを自覚して振る舞っていた。それは現実を超えた意味を持っていたし、100%の啓司だった。僕は目が覚めてから、詳細に記録をした。他の夢とは違って、その記憶(といって差し支えなかった)が、簡単に消えることはなかった。

彼女は全く知らない人だった。誰かに似ている訳でもない。つまり、僕がまだ出会っていない人だ。夢の組成は、種々とした記憶から紡がれることが多いけれども、彼女がユニークな存在であることには自信があった。彼女と繋いだ手は、他の誰とも似つかわない実体だった。

メモに、声紋は残せない。僕の後悔は彼女の声を忘れてしまったことだ。(声の記憶は、親でも難しい)でも、僕は彼女をみつけようと思う。それを可能世界のユートピアで終わらせないために。それを現実事として、僕の脳みそに刻み込むために。


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