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花を殺す。

今朝、俺はスウェーデンウォッカの瓶に冷凍庫につっこんだ殺風景なそれに)、切り花を移した。こいつは唯一生き残りで、ナデシコだった。他の切り花ははさみで切り刻んでしまって、ある残滓は埃に塗れ、ある残滓は生ゴミと一緒に袋で窒息死をしている。花を殺すことに快感を覚えたのは、ちょうど先月くらいにあった、季節外れの真夏日のことで、汗に厭気が差した俺は青いカーネーションを陵辱してしまった。貞淑な青いお前は、否定もせず俺を受け入れた。それが俺には気持ちがよかった。花は痛いとも辛いとも、生きたいとも死にたいともすんとも言わない。俺は気分がよかった。俺はボナパルトになりたかった。花からの戴冠は、俺を崇め奉る儀式だった。

花を殺戮するこの部屋は、俺の王室で、その黄玉が俺を蠱惑する。俺は花の死体を、何よりも愛おしく思っていた。

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