尾道市立大学 特別講義 「デザインと編集」
母校である尾道市立大学の「デザインと編集」の講義にてお時間を頂き、自身の活動についてお話をさせて頂きました。卒業してから3年半の仕事や制作の話に加えて、今の学生さんたちと同じ環境で学んでいた経験を活かし、学生時代の作品をいくつかスライドで紹介しました。
初学者や学生さんをターゲットにした、モチベーションコントロールやコミュニティ構築のお話がメインだったので、内容自体はプロ向けではないですが、学生時代のあどけない作品の解説をアーカイブとして記載します。
当時の自分は決して優秀な学生ではなかったと思いますが、卒業後も1人のクリエイターとして制作に向き合い続けることができています。
あどけないながらも、実直に手を動かし続けることの楽しさや尊さが少しでも伝わると嬉しいです。
2年前期 グリッド課題
自身で考案したグリッドに準じてグラフィック制作を行う課題。1年次は基本的にアナログ作業がメインなので、本格的にAdobe製品を使用し始めたのがこの頃だったと思う。印刷形式で提出する想定だったので、カラーモードはCMKYで制作しているが、色彩もレイアウトも目的がはっきりしない印象。
ただ、作る際に楽しく向き合えていた課題ではあったため、その経験からグリッドや幾何学図形をベースにして制作するスタイルが始まったように思う。
2年後期 ポスター課題
自身の出身地をテーマにポスターを制作する課題。愛媛県の祭事等に着目し、地域の妖怪をモチーフにして制作した。サイズはA2くらいだった記憶がある。
タイポグラフィの意識が毛頭ないので、文字周りはかなり雑な印象だが、アイコニックな造形や色彩感覚は今と繋がるところがあるように思う。感覚的ではあるが、図形の緩急もなんとなく意識し始めている。
個人的には思い入れのある作品だったこともあり、後にこれが卒業制作のテーマに繋がる。
3年後期 自由課題
当時、かなりの本数の映画を見続けていたこともあり、自由課題で映画をモチーフにしたカレンダーを制作した。かなり安直なテーマ設定と制作動機だったのもあり、グラフィックのトーンがひどく統一されていない。
一方、モチーフのプールが広いので、SNSで発信した際にエンゲージメントが伸びた記憶がある。この頃から作ったものをインターネットに積極的にアップし始めるようになった。
卒業制作(尾道市立大学卒業制作展2020 優秀賞)
卒業制作として制作したB1ポスター群。
妖怪は人々の記憶が長い時を超えて受け継がれることによってデザインが完成してゆくという点に興味を持ち、彼らの居場所をどのように残せるかを考え、妖怪のポスターを8枚制作した。
在学初期〜中期に比べてグラフィックのディテールやトンマナに対する解像度が高まっているように思う。現在もこの作品についての質問や話題を頂く機会が多いので、活動における重要な作品になっている。
その他
課題以外で自主的に作っていたもの。思いつくままに手を動かしていた気がする。
まとめ
母校の大学で1コマの講義を行うにあたり、半年程前から少しずつ準備をしてきましたが、今回の経験から"教える"という行為の重要性については再認識できました。
受け手が情報の精査をすればいいのでは。という話ではあるかもしれないですが、そもそも情報の精査をするのに経験や基礎情報が必要なわけで……。玄人が制作やキャリアにおけるマインドやメソッドを"こうあるべきだ"と、半ば決めつけがちにSNS等で初学者や学生に向けて気軽に発信してしまうのは危ういと改めて感じました。今後もこうした機会を頂いた上で適切に発信してゆきたいです。
何事もある程度は楽観視しないと前に進めないこともあります。漠然とした不安を抱えながらも、未来を信じて真面目に頑張っている人たちと共に歩んでゆきたいです。