ドナルカ・パッカーン

来るべき民主主義社会において求められる、構成員相互における健全な敵対性を涵養していくた…

ドナルカ・パッカーン

来るべき民主主義社会において求められる、構成員相互における健全な敵対性を涵養していくために、ピーチャム・カンパニーの川口典成が立ち上げた演劇実験場のこと。資本主義/新自由主義リアリズム演劇によってこの世界を再現しようと試みています。

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  • 福田善之「オッペケペ」

    福田善之「オッペケペ」についての記事です。

  • 野田秀樹『野獣降臨』

    ドナルカ・パッカーン『野獣降臨』(作:野田秀樹)緊急上演についての記事です。

  • 森本薫『女の一生』

    森本薫『女の一生』についての記事をまとめています。

最近の記事

映画「ドライブ・マイ・カー」への一考察(『情況』2022年夏号掲載)

 村上春樹の短編小説を原作に制作された映画『ドライブ・マイ・カー』(監督/濱口竜介、脚本/濱口竜介・大江崇允)は、舞台俳優・演出家である家福悠介(かふく・ゆうすけ)の「巡礼」を描いている。プライベートにおいても創作においてもパートナーであった妻の音(おと)の急死は、家福を宙づり状態に引き込んだ。家福悠介と音との関係はたいへん良好なものだったのだが、なぜか音はほかの男と定期的にセックスを行っており、家福はそのことを知りながら黙っていた。音が亡くなったのは、家福が家をでかける際に

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      ドナルカ・パッカーン『オッペケペ』初日公演写真(後半) 撮影:三浦麻旅子

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        ドナルカ・パッカーン『オッペケペ』初日公演写真(前半) 撮影:三浦麻旅子

        • 今野勉「一宿一飯」

          江戸時代から続いていた炭坑夫たちの互助組織である友子制度において起きた「事件」をめぐる推理劇の体裁をとっている。実際におきた事件を叙事演劇風に描く劇中劇構造を持ちながら、事件当事者たちの子孫たち(それは俳優自体である)がその事件を推理するという誂えである。 叙事演劇においては、ドラマ演劇における登場人物達のキャラクター造形の一貫性や筋の統一から離れることによって、登場人物達の責任の「決定不能性」という要素が介入するが、これらの「決定不能性」を上演の場において表象するために、配

        映画「ドライブ・マイ・カー」への一考察(『情況』2022年夏号掲載)

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        • 福田善之「オッペケペ」
          2本
        • 野田秀樹『野獣降臨』
          8本
        • 森本薫『女の一生』
          10本

        記事

          卑しいレトリックーー鈴木政男『人間製本』

          転向文学として有名な中野重治「村の家」の一節である。果たして、政治の活動や運動のなかで家庭や家族を主題化することは「卑しいレトリック」なのだろうか。『人間製本』もまた、ストライキの主軸要員、白石徹男の家族との葛藤が描かれる。 『人間製本』においては、いくつかの封建的主従関係が描かれている――太陽印刷と下請け会社である坂田製本工場のズブズブな関係、坂田製本工場内における職人気質がもたらす独特な信頼関係、そして白石家における家族内の父権制。こういった社会構造の矛盾をあぶり出す配

          卑しいレトリックーー鈴木政男『人間製本』

          敗戦から75年。戦争の「中」と「後」。 ――タカクラ・テル「けやきのちかい」が問いかけるもの(『情況』2020年夏号掲載)

           ある村の話である。日中戦争からアジア・太平洋戦争へと続く戦争のさなか、農学校を卒業したばかりの戸田利明と大川弘のふたりは、いたいほど手を握り合って、由緒あるけやきに誓いをたてる。「ふたりで村の農業を根本から改革しよう。今のような古くさい農業のやり方ではしかたがない。日本をよい国にするには、農業を改革しなければならない」。隣り合う家で幼少期から一緒に育ったふたりにとって、源義家、通称八幡太郎に縁があるという両家のあいだにあるけやきは、村にある古いしきたり、役に立たないものの象

          敗戦から75年。戦争の「中」と「後」。 ――タカクラ・テル「けやきのちかい」が問いかけるもの(『情況』2020年夏号掲載)

          【書評】柳敏榮『韓国演劇運動史』(翻訳:津川泉、風響社)図書新聞2021年2月20日号掲載

          二〇二〇年という年は、韓国においては「演劇の年」に指定されていた。世界的なCOVID-19パンデミックによって通常の公演やシンポジウムの形態がとれない中、韓国演劇界は「演劇の年」のなかでMe Too問題や労働環境・福祉制度などを調査・研究する方針を定めたという。演劇(アート)業界において、やりがいという精神的対価と引き換えにした労働力搾取は現に存在し、封建・徒弟的な体質はいまだに引き続いている。業界に自浄作用を期待できるかというと言葉を濁すしかない状況があるなか、韓国演劇界が

          【書評】柳敏榮『韓国演劇運動史』(翻訳:津川泉、風響社)図書新聞2021年2月20日号掲載

          戦時下における人生と青春ー加藤道夫『なよたけ』ー

          ※戦時下に執筆され、1946年に発表された加藤道夫『なよたけ』についてのメモです。 綾麻呂 さあ、文麻呂。時間だ。 文麻呂 なぜです、お父さん。まだです。 物語の始めを整理してみよう。主人公である石上文麻呂は、政敵に負けて都落ちする父親に二つのことを言われる。一つは「勉学に励み立派な学者」となれということ、もう一つは、文麻呂が夢中になっている「和歌」もほどほどにしろ、である。つまり父から与えられた課題は、政治の世界と芸術の世界とのバランスをとれ、ということだ。この段階では

          戦時下における人生と青春ー加藤道夫『なよたけ』ー

          「人格」の居場所〜福田善之『長い墓標の列』について〜

          「モデルとした事件は東大経済学部事件であるが、この作品がその事件の劇化ではまったくない。作者は作者自身のことを書くに作者の体験ではない戦前のある現実をもってしたに過ぎない」(作者の言葉 早大劇研公演パソフレット) 社会学者・山之内靖は第二次世界大戦を「ファシズム」と「民主的体制」の戦い、つまり非合理と合理との戦いとしてだけ描き出すことを批判している。むしろふたつの世界大戦において決定的なのは総力戦という枠組みであり、階級社会からシステム社会への移行である。「総力戦時代が推し

          「人格」の居場所〜福田善之『長い墓標の列』について〜

          『野獣降臨』情報掲載媒体& メンバー今後の活動

          『野獣降臨』情報掲載媒体 【朝日新聞デジタル】 ■7月16日「野獣降臨」公演が紹介されました。 https://donalcapackhan.wordpress.com/2020/06/20/stopcovid19/ ■7月30日「劇界、続くコロナとの闘い」の記事中にドナルカ・パッカーンの取組みが紹介されました。 https://digital.asahi.com/articles/DA3S14569005.html?pn=3&fbclid=IwAR2UROVNWyeUE

          『野獣降臨』情報掲載媒体& メンバー今後の活動

          劇場従業員の方の発熱について(7月23日16:43、7月25日10:35追記)

          ドナルカ・パッカーン緊急公演『野獣降臨』においては稽古場においても劇場においても、新型コロナウイルス拡大予防対策に徹底的に取り組んでおります。 本日、公演会場の萬劇場従業員の方が検温をしたところ37.4度(病院では37.0度)の発熱があり、病院において扁桃炎という診断の上、PCR検査の必要はないということでしたが、劇場の判断で自宅待機としたとの連絡がありました。(その後、7月25日の午前中の時点で36.7度、自覚症状はないとのことですが、劇場の判断で引き続き自宅待機となってい

          劇場従業員の方の発熱について(7月23日16:43、7月25日10:35追記)

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          ドナルカ・パッカーン緊急企画『野獣降臨』ゲネプロ・初日公演写真 撮影:三浦麻旅子

          ドナルカ・パッカーン緊急企画『野獣降臨』ゲネプロ・初日公演写真 撮影:三浦麻旅子

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          演劇公演での「クラスター発生」により観客全員が濃厚接触者と判断されたことへの対応について(2020年7月14日現在)

          演劇公演での「クラスター発生」を受けて、昨日演劇公演での「クラスター発生」報道を受けての対応について(2020年7月13日現在)を書きましたが、新宿シアターモリエールでの演劇公演で発生した感染クラスターに際して、観客「全員」が濃厚接触者として判断されたと昨日夜に報道がありました。 濃厚接触者として判断された場合濃厚接触者として判断された場合、保健所の指示に従い、感染者と接触があった日から2週間ほどの自宅待機、つまり不要不急の外出は自粛、公共交通機関の利用も自粛することが求め

          演劇公演での「クラスター発生」により観客全員が濃厚接触者と判断されたことへの対応について(2020年7月14日現在)

          演劇公演での「クラスター発生」報道を受けての対応について(2020年7月13日現在)

          2020年6月30日~7月5日に新宿シアターモリエールで行われた演劇『THE★JINRO―イケメン人狼アイドルは誰だ!!―』においてクラスターが発生したとの報道がありました。(参考:朝日新聞DIGITAL) 主催団体の株式会社ライズコミュニケーションによる7月12日の発表によると、「出演者16名、スタッフ5名、ご観覧者様9名の、合計30名」に新型コロナウイルスの陽性反応が見られるとのことです。 感染が確認された観客の皆様、また出演者・スタッフの方々の回復をお祈りいたしますとと

          演劇公演での「クラスター発生」報道を受けての対応について(2020年7月13日現在)

          ドナルカ・パッカーン『野獣降臨』あらすじ(のような)

          あらすじ(のような)夢の遊眠社が1987年にエディンバラ演劇祭で海外上演を行った際の写真集に野田秀樹自身によるあらすじが掲載されています。『野獣降臨』という戯曲は非常に複雑に錯綜しているのですが、「これ一回きりのお客様サービス」と書かれたそのあらすじには、この物語が「被差別民族」の物語であることが明白に書かれており、そのドラマツルギーは「被差別民族」を描くためのドラマツルギーだと言ってもよいでしょう。「千鳥足(酔っ払い)の弁証法」という言葉がありますが、『野獣降臨』は「蛇行の

          ドナルカ・パッカーン『野獣降臨』あらすじ(のような)

          「野獣降臨」上演会場の萬劇場【感染対策】

          ドナルカ・パッカーン緊急企画である野田秀樹「野獣降臨」の上演会場は大塚の萬劇場さんです。この緊急企画が実現できたのは萬劇場さんの感染対策の情報発信があったからこそです。(以下、敬称略にします) 萬劇場コロナウイルス感染予防対策ガイドライン萬劇場は緊急事態宣言が解除された5月25日にさっそくガイドラインを発表されていました。わたしはTwitterでそのガイドラインと空き日程の情報を得て、さっそく萬劇場に電話しました。 新型コロナウイルスによるステイホームのなか、野田秀樹『野

          「野獣降臨」上演会場の萬劇場【感染対策】