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森本薫『女の一生』

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森本薫『女の一生』についての記事をまとめています。
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森本薫『女の一生』初稿版とは?

ドナルカ・パッカーンでは森本薫『女の一生』の初稿版を2019年11月6日~10日に上野ストアハウスにて上演します。そもそも森本薫『女の一生』初稿版とはなんなのでしょうか? なぜいまドナルカ・パッカーンはこの戯曲を上演するのでしょうか? こちらのnoteでさまざまに書いていきたいと思います。今回はイントロダクションです。 そもそも森本薫『女の一生』とは?森本薫という劇作家が執筆し、文学座という劇団が1945年4月に初演した作品です。戦後に森本薫自身の手で改定され、その改定稿を

幕構成から考える『女の一生』の歴史認識について(1)

『女の一生』の幕構成がどうなっているのかを整理しながら、なぜ『女の一生』という回想の物語が、日露戦争の旅順陥落から始まるのかについての考察をしてみます。 まずは(1)では『女の一生』の幕構成と、あわせて舞台となっている堤家の商売について説明します。 『女の一生』の幕構成について(初稿版)初稿版と戦後版とでプロローグ(第一幕第一場)とエピローグ(第五幕第二場)が大きく異なるのですが、初稿版では次のような幕構成になっています。 第一幕第一場 昭和17年(1942年)正月 第一幕

幕構成から考える『女の一生』の歴史認識について(2)

この記事タイトルの(1)では『女の一生』の幕構成と、あわせて舞台となっている堤家の商売が支那との貿易であることを紹介しました。ちょっとゆるい紹介になってしまったなあと思っていますが、今回は「なぜ『女の一生』という回想の物語が、日露戦争の旅順陥落から始まるのか」についての考察をしてみます。こちらは「へえなるほどね!」というお話になればいいなと。 『女の一生』は回想の物語である前回の記事(1)にも書いた通り、『女の一生』は第一幕第一場と第五幕第二場という、いわばプロローグとエピ

森本薫の台詞・世界の奇妙さについて

これまでの記事では『女の一生』というひとつの作品について書いてきましたが、今回はその作家である森本薫について紹介し、さらに森本薫の台詞・世界の奇妙さについて書いてみます。 森本薫とは?森本薫は第三高等学校(後の京都大学)在学中から劇作を発表しはじめ、のちに岩田豊雄(獅子文六)の薦めで文学座に入座、数々の作品を執筆します。1946年に34歳という若さで逝去したため、作品数はさほど多くは有りません。牧羊社の『森本薫戯曲全集』は一冊本として刊行されています。生れは1912年ですか

森本薫の台詞・世界の奇妙さについて(2)具体例

前回の記事で森本薫の台詞の人工性・虚構性と、そこに描かれる感受性について書きました。今回はその「奇妙さ」の具体例を2つほど挙げて解説をして行きます。 句読点の位置の奇妙さ森本薫『女の一生』の稽古をやっていてたいへん重要だと思ったのは、句読点です。まずは具体例を見てみます。以下に引用するのは、第二幕の堤家の長男である伸太郎と、その家で働き始めた主人公であるけいとの会話です。 けい なんですか、そんなむずかしいことは私にはわかりませんわ。お商売をなさるのにそんなこと迄お考えに

今回上演する初演版完全上演の「底本」は?

森本薫の台詞・世界の奇妙さについて(2)具体例を書いた際に、演劇研究者の日比野啓氏よりTwitter上にて指摘がありました。 初稿版は『シアターアーツ』掲載のものでしょうか。だとすると、みなもとごろうが「専門家による高度の筆跡学や文献学的な処理を経なければ不可能である。しかし、今はその用意がない」と書いている点についてどう処理されたのか気になります。 大事な指摘ですので、応答しておきます。 『女の一生』初稿版テキストについてこのnoteにおいて初稿版テキストの紹介をした

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ドナルカ・パッカーン『女の一生』戦時下の初稿版完全上演 公演写真 撮影:三浦麻旅子

ドナルカ・パッカーン『女の一生』戦時下の初稿版完全上演 情報掲載媒体まとめ

新聞掲載※朝日新聞10月31日夕刊に公演記事が掲載されました→朝日新聞DIGITAL ※赤旗日曜版(11月3日)に公演情報が掲載されました 推薦コメント作家・大塚英志によるTwitterでの推薦コメント。 稽古場&インタビュー映像

ドナルカ・パッカーン『女の一生』戦時下の初稿版完全上演 感想まとめ

Twitterまとめ記事ブログなどの感想歌舞伎評論の犬丸治氏によるfacebook記事 日本近代演劇研究の井上理恵氏によるブログ記事 荻野哲矢氏によるfacebook記事 因幡屋ぶろぐ 松崎みどり氏によるブログ ※他にもありましたらお教え下さい!

『女の一生』戦時下の初稿版完全上演 公演映像を期間限定公開!【公開は終了しました】

2019年11月に上演した森本薫『女の一生』戦時下の初稿版完全上演の公演映像を期間限定で公開いたします。【5/31に公開は終了しました】 世界各地での新型コロナウイルスの流行によって外出あるいは直接的な人との接触を控える行動が求められています。今後「日常生活」が回復するのか、それとも変容していくのか、それはまだ分りませんが、長期的な視点から「日常生活」を見直す必要が生じてくると考えられます。 日本が国民国家として成立する日清日露戦争から始まり、真珠湾攻撃の直後にて幕切れと