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人生が集まる空間─コロナ禍と私たち─

人生が集まる空間、なんて抽象的な表現なんだろう。
俺の一体何処からこんな表現が溢れ出てきたんだろうか、そう思わずにはいられないほど意味のわからないフレーズだ。

8月が終わり、帰省や親友たちとの旅行を終え、この夏を思い返した時に何故かあのような言葉が思い浮かんできた。

10代の終わりと20代の始まりという区切りを迎えた私たち世代。

奇しくも私たちにとって20代のスタートは人類がこれまで経験したことのないような荒波の中での船出となった。

奴のせいで。
そう、小さな小さなウイルスのせいで。

小学校、中学校からの友人たちは高校を卒業し社会人となった者、専門学校や大学に進学した者など様々な進路を選択した。

そんな私たちにとって夏休みはそれぞれどんな道を歩んでいるのかを共有することのできる貴重な時間だ。

会社の愚痴を言ったり、学校でのキツかったこと、友達とのバカ話だったりを共有する、はずだった。

しかしこの夏は違った。

感染拡大防止が叫ばれる中、帰省を断念した友人や帰省できても家族以外との接触を禁じられた友人がいた。
ただでさえ学生はオンラインでの学生生活を強いられているのにも関わらず、故郷に帰ってきても他者との接触を制限された。

そんな中で集まれる者が集まったとき、最初の話題はやはりあのウイルスにまつわるものだ。
具体的な話は割愛するが、内容としては「仕方がないよね、」といったような諦めベースの会話だった。

話をしながら私は、この1年半の中で私たちは一体どれだけのものを仕方ないと諦めてきたのだろうかと、そう思っていた。

社会人の彼らは飲み会という歳の近い人達との交流の場を失い、半ば孤立した状態。
学生は授業がオンラインになり、キャンパスに通う機会もほとんどなく交友関係は高校時代からの延長線で新たな出会いなどほとんどない状態。

そんな私たちにとって同じような歳で、同じような思いを共有した者同士の集まりはとても貴重で、そして何より心安らぐ空間だった。

それぞれが過ごしたこの1年半という時間を集めた空間が、そこにはあった。

この夏、私は十数人と会って現状報告とこれからの抱負など心の内を共有した。

その中で気づいたことがある。
それは、私たちの帰属意識の希薄化だ。

社会人になっても淡々と職務をこなし、家に帰って寝る。
学生はオンラインのため部屋にこもりパソコンと睨み合い、家から出ず、接触するのは家族のみ。一人暮らしの学生は基本孤独だ。

それぞれが高校から次のステージへと活躍の場を移したのにも関わらず、新たなステージでの人間関係は構築されず、今の自分が何処に所属しているのかが曖昧になっているのだ。

表面上は会社に属する会社員や、大学や専門学校に所属する学生だ。しかしそこに帰属意識は生まれない。

私は帰属意識を生むためには2つの条件があるとこの1年間で感じた。

1つ目は、所属する中で自分が必要とされ、貢献しているという実感を得ること。
2つ目は、所属している環境の内部で感情を共有することができていること。

コロナ禍で私たちはこの2つ満たす組織に所属する機会を失ってしまった。

しかし地元に帰ればこれらを満たしてくれる集まりが待っていてくれる。
小中高と同じ時間を過ごした仲間たちだ。

この集まりの中ではお互いをリスペクトし合い、それぞれの特性によって補完し合う。
さらにくだらないことで笑いあったり、泣いたり、時に真剣に互いの意見を言いあったりする。

これは私の考える帰属意識を生む条件を全て満たしている。

しかし社会はどうだ。私たちを孤立化させたくせに、さらに若者を悪者扱いだ。

それ故、私たちは社会なんてどうでもいい、こいつらと幸せに居られるのなら。こいつらが幸せなのなら。
そう考えてしまう。

先が見通せない中で次いつ集まれるのかも不透明だ。

そんな私たちの中にある1番の不安は「成人式が行われるのかどうか」だ。

苦しみながら過ごした2年間を、これまでの人生を、成人式という同級生が集まる空間で集めよう。

次こそはこの夏会えなかった友達も含めて、全員で時間を共有しよう。

溜め込んだ2年間をたくさん話そう。

たとえ社会が私たちを置いていっても、私たちは君を置いていったりはしない。

これまでの20年をみんなで振り返ろう。
そして、これからの数十年をみんなで幸せに生きていこう。

そんな話を、次こそは、みんなでしよう。


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