最近の記事

Late for the Sky

今から40数年前の、まだ携帯もSNSもない頃のオールド・ファッションなラヴ・ストーリー。旅先の九州で運命的な出会いを果たした二人。数ヶ月後の再開の後、遠距離恋愛にも関わらず、順調に愛を育んでいたが…。 雲行きが怪しくなってきたのは薄々感じていた。クリスマス以来会っていなかった。と言うのは、千恵子が長野市内から野尻湖の近くの系列の病院に移ったからだ。転勤の代わりに彼女は正社員の座を手に入れた。転勤は三ヶ月限定だった。当然長野からは通いきれないので、寮住まいという事になった

    • 風にさらわれた恋(4)

      ―今から40数年前の、まだ携帯もSNSもない頃のオールド・ファッションなラヴ・ストーリー レイト・フォー・ザ・スカイ(36) 教授に最後の挨拶に行った。何故か晴れやかな気持ちだった。将来への不安よりも、窒息しそうなこの世界から飛び出せる、やっと自由に息ができるという気持ちの方が強かった。実際は勘違いだったが。父親の顔めがけて筆を投げつけ、「詩歌」の世界を躊躇なく捨て去った、代々勅撰の集の撰者を輩出する家系に生まれた宗頼気取りだったのかも知れない。 「実言うと、君の卒論には

      • 風にさらわれた恋(3)

        ―今から40数年前の、まだ携帯もSNSもない頃のオールド・ファッションなラヴ・ストーリー 翌週、教授の研究室に呼び出された。少し面倒な事になってしまった。提出したドラフトを教授が気に入ってしまい、今秋に開かれる小規模な学会で発表しないかという事になった。以前なら小躍りしただろう。が、この時は、自分でもびっくりするほど乗り気ではなかった。が否とは言えない。そんな事したら、このギルド社会から追放だ。渋々承知した。そんな思いはおくびにも出さずに。だが、どうしよう。やりたくない。

        • 風にさらわれた恋(2)

          ―今から40数年前の、まだ携帯もSNSもない頃のオールド・ファッションなラヴ・ストーリー ロング・ディスタンス・ラブ(18) すぐに会えると思っていた。が、そうではなかった。二人とも雑事に追われていたのだ。 帰京した翌週、指導教授の研究室を訪ねた。こういう呼び出しは珍しいというか初めてだった。何だろう。ひょっとしてクビの宣告かも知れない。どう考えてもいい話ではなさそうだ。そう考えると足取りも重くなった。が、それは穿ち過ぎだった。扉を開けると、机の上にぶ厚い本が置いてあっ

        Late for the Sky

          風にさらわれた恋(1)

          ―今から40数年前の、まだ携帯もSNSもない頃のオールド・ファッションなラヴ・ストーリー 雨のウェンズディ(2) 脱臼した時間の中にいた。時と時の狭間のエアーポケットに転落してしまったのだ。思春期に味わって以来の「Hard Times (3)」の真只中だった。「Blue (4)」から何とか脱げだそうともがいていた。 上り下りいずれにせよ、早く来た方の列車に乗ろう。延岡の駅の連絡橋のガラスのない窓から線路を見下ろした時そう決めた。周遊券はあるし、時間にもお金にもまだ少し余

          風にさらわれた恋(1)

          Bonnie Raittの三大バラード

          ボニー・レイト、エミル―・ハリス、ルシンダ・ウィリアムスのライブをみてみたいが、日本では無理だろう。日本でのファンの数は各々精々1,000人いるかどうか。箱としてはビルボードクラスだろう。一方ギャラは本国での人気、知名度などを考えると、少なくとも最低でも2万か3万はくだらないだろう。ひょっとすると5万はくだらないかも。趣味にそこまでは出せない。何たってこの11月に来日するウィーンフィルでも34,000ですからね。見たかったら、アメリカ行くしかないでしょう。コロナ禍の後で。

          Bonnie Raittの三大バラード

          僕と「僕とカミンスキー」

          初めに。とある社会人講座の独語演習で、Daniel Kehlmannの”Ich und Kaminski”を2年かけて読破した。その記念として、感想文をここに残す。 マチスの弟子にして最後のシュルレアリスト、そして何よりも盲目の画家として有名だった、カミンスキーは今ではすっかり世間から忘れ去られている。また、彼は高齢故に「死」も近いだろう。いくら無名になったとは言え、死後しばらくはブームになるだろうし、その時、彼の自伝はベストセラーになるだろう。自伝の著者になれば、一時的に

          僕と「僕とカミンスキー」

          EAGLES Now and Then

          Eaglesの新譜が10月に出る。確か去年の9月から「Hotel California」全曲再現ツアーを続けていたので、てっきりそれのlive盤かと思ったら、そうではなく2018年9月のlive。ちと残念。しかし、ダンカン・フライ、ヴィンス・ギルが参加した新生Eagles初のオフィシャルCDなのでファンは必聴でしょう。 オフィシャルではないが「Hotel California」全曲再現ツアーの音を聞く機会があった。ヴィンス・ギルはギターの名手なのに一切ソロは取らずにボーカル

          EAGLES Now and Then