見出し画像

EAGLES Now and Then

Eaglesの新譜が10月に出る。確か去年の9月から「Hotel California」全曲再現ツアーを続けていたので、てっきりそれのlive盤かと思ったら、そうではなく2018年9月のlive。ちと残念。しかし、ダンカン・フライ、ヴィンス・ギルが参加した新生Eagles初のオフィシャルCDなのでファンは必聴でしょう。

オフィシャルではないが「Hotel California」全曲再現ツアーの音を聞く機会があった。ヴィンス・ギルはギターの名手なのに一切ソロは取らずにボーカルに専念、が、声が甘いというか線が細い感じがする。ダンカンははっきり言ってボーカルもギターも中途半端、存在感薄い。が、あのグレンの息子という事で何故か許してしまう。意外だったのは、ジョー・ウォルシュが老体にムチ打ち頑張っている。何故か泣けてくる。が、全体的に懐かしいという感じはしても「刺さる音」ではないような気がする。このメンバーで新録出して来日して欲しいが、コロナとギャラで難しいでしょう。何たって最も高い席は$1,500。無理です。

今のEaglesがすっかりドン・ヘンリー株式会社になってしまってちょっとねと思っていたところ、Youtubeでデビュー直後のLiveを発見した。THE "EAGLES" IN CONCERT, BBC TV 1973というのがそのタイトル。元ブリトーズのバーニー・レドン、元ポコのランディ・マイズナーの姿が眩しい。このバンドは、この二人の音楽的血筋の良さ、いまや絶滅危惧種、現在山猫(Thundercat)どもに「ヨット・ロック」と蔑まれているウェストコーストサウンドの正統な後継者として、デビュー当時は注目されていた。

確かにこの当時のミュージカル・ディレクターはバーニー・レドンだというのは、その自信に満ちた顔つき、プレースタイルからはっきりわかる。が、バンジョーはエイトビートには合いません。その彼が後々、ドン・ヘンリーとグレン・フライから解雇を言い渡されてしまうなんて、この時点では夢にも思ってなかったでしょう。ローンアレンジャー、グレンはどこかふてぶてしい。ジャクソン・ブラウンとかジャック・テンプチンとかJ.D.サウザーとかの名ソングライターを擁する「L. A.サーキットの首領は、この俺様だ」という思いがその自信の裏付けなんでしょう。ドン・ヘンリーは何故か、緊張しているように思える。テキサスの田舎で毎日夕日を眺めながら「いつかお前の所に行ってやるからな」と念じ続けた夢が叶ったのにね。ただ、全てを悲しみに変えてしまうスモーキーな声はあのころから健在、唯一無二の素晴らしい声です。ベースを抱えてハイトーン・ヴォイスで熱唱するランディ・マイズナーの姿は、何故かザ・バンドのリック・ダンコ(晩年はダンゴ)に重なる。この曲"Tryin'"てタイトルではなかったっけ。クレジットはCertain Kind of Fool。どうなってるんだろう。歌詞はデビュー直後のバンドに相応しい思いを綴っているが、ドン・ヘンリーの検閲が入ったら却下だったろう。直接的で深みが無い。Desperadeよりはるかに薄っぺらいぞー。でもこの曲は後のTake it to the limitへつながる埋もれた名曲です。

セットリストはTrain Leaves Here This Morning/Whatever Happened Saturday Night/Peaceful Easy Feeling/Certain Kind of Fool/Early Bird/Silver Dagger/Take It Easyの30分弱の演奏。このうちPeaceful Easy FeelingとTake It Easy以外は今では恐らく絶対にライブでは聞けない曲。これらの言ってみればフォーキーな曲を抑圧し、創設メンバーであり初期は音楽監督でもあったバーニー・レドンを追放することによって、Eaglesは国際的なバンドに脱皮・成長した。ミックとキースによるブライアン追放と同じく「原父殺し」ですね。が、私にとってのEaglesはここにあります。

Dylanの16分の最新シングル「最も卑劣な殺人」の歌詞で、多くの物故ミュージシャンに混ざって、まだ存命中のミュージシャンがの名が4人挙げられている。そのうちの一人がなんとドン・ヘンリー。名誉な事だとは思うが、Dylanに歌われるなんて、一体どんな気分なんだろう(How do you feel?)。聞いてみたい気がする。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?