身体運動学:WIZ-DOG

愛犬にいつまでも健康に長生きして欲しい、それはすべての飼い主の切なる願いだと思います。…

身体運動学:WIZ-DOG

愛犬にいつまでも健康に長生きして欲しい、それはすべての飼い主の切なる願いだと思います。WIZ-DOGは幼犬から高齢犬に至るまですべてのライフステージにおける適正な運動を追究してまいります。

最近の記事

28.運動のモーション分析

人も犬もそれぞれの運動に合わせて、筋肉が関節を上手に動かすことでカラダを動かします。ここでは、それぞれの運動時の関節の動きなどを分析しながら、その運動が犬のカラダに与える影響を考えます。 脇腹ねじり運動(ツイストクランチ) 脇腹にねじり運動を加えます。 胸椎・腰椎関節の内、上下や左右への曲げ伸ばし(屈伸)は胸椎関節より腰椎関節の可動域が大きく、左右へのひねり(回旋)は腰椎関節より胸椎関節の可動域が大きくなっています。と言うか、回旋運動では腰椎関節はほとんど回らないんです

    • 27.後肢大腿部の筋肉

      後肢の筋力強化 「大腿四頭筋」とは、「大腿部(太もも)」前部にある「四頭筋(4つの頭を持つ筋肉)」です。 「ハムストリングス」は、太ももの後部にある4つの筋肉群です。 大腿四頭筋とハムストリングスは、膝関節の屈伸に関しては、一方が伸びれば一方が縮み、一方が縮めば一方が伸びます。この関係を「お互いの拮抗(きっこう:お互いに逆の作用をする)筋」といいます。 両方とも屈伸筋としての働きと抗重力筋としての働きを担っています。 犬は、体重の約6~7割を前肢で支え、後肢は3~4

      • 26.環椎と軸椎

        環椎(かんつい)は、頭蓋骨の後頭部と関節する椎骨、第1頸椎のことで、下の図の赤く塗られた骨です。名前の通りリング状になっています。軸椎(じくつい)は、環椎と関節する第2頸椎で、左の図のオレンジ色に塗られた骨です。環椎同様、真ん中には脊髄が通る空洞がありますが、その下には環椎を突き刺すような突起(軸椎歯突起:じくついしとっき)があります。 環椎後頭関節 頭蓋骨の後頭部と環椎をつなぐ関節は環椎後頭関節と言い、椎間板はありませんが環椎後頭靭帯(膜)などの強い靭帯でつなぎとめられ

        • 25.イヌの骨格を描いてみよう!

          体幹の骨格 まずは、紙の左上に楕円形を書きます。 頭部の骨です。もちろん頭部の骨は1個ではありませんが、集合体としてひとつの「頭蓋骨」として書いてください。一般的には「ずがいこつ」と読みますが、解剖学上は「とうがいこつ」と読みます。 頭蓋骨の右側から斜め右下に向かって小さい骨を7個連ねて書きます。 これが首の骨「頸椎(けいつい)」です。人も含めてほとんどの哺乳類、クジラもキリンも7個あります。頸椎の内、頭蓋骨に一番近いものを「環椎(かんつい)」、その次を「軸椎(じくつ

        28.運動のモーション分析

          24.位置や方向の定義

          人の解剖学では、掌を正面に向けてまっすぐ立たせた状態を「解剖学的正位」と言います。ここでは、下図のような姿勢を「犬の解剖学的正位」とします。正位を基本に方向などを説明します。 ※ 当記事では、解剖学的読み方を記載していますが、あまり一般的ではありませんのでこだわる必要はないと思います。 ※ 4本の肢を「四肢(しし)」といい、前の2本を「前肢(ぜんし)」、後ろ2本を「後肢(こうし)」と言います。WIZ-DOGでは、カラダ全体から四肢と頭頸部、尾部を除いた部分を「体幹(たいか

          24.位置や方向の定義

          23.苦手な下り坂

          イヌは四本肢で歩きます。おそらくそのせいでしょう、路面の傾きや着肢場所の状況などにより、前後左右どの肢をどこに着地させ、どう力を入れれば上手に歩けるのか、ヒトよりも頭を使って歩いているようにみえます。 平路において、ヒトは、体重を移動させながら、右と左の肢を交互に出せば前に進めます。しかし、イヌは主に後方に蹴り出すことによる推進力で前に進むようにできています。どの肢で推進力を得て、どの肢でカラダを支えなければならないのか、路面の状況により臨機応変に対応しなければならないわけ

          23.苦手な下り坂

          22.山歩きの効用

          皆さん、愛犬とお出かけしていますか? カフェやドッグランには毎週のように行ってます、という方も多いかもしれませんね。 今回はイヌと一緒に行くトレッキングのお話です。山歩きはイヌのカラダづくりにどんな効果があるのでしょうか? 早速トレッキングに出かけてみましょう。 さあ、出発です!! 落ち葉の上を歩く 登山口から入って木立の中、まずはふかふかの落ち葉の道です。イヌたちも軽快に歩みを進めます。落ち葉の上は少し歩きにくいので、イヌたちはヒザやヒジをしっかり持ち上げて進みます

          22.山歩きの効用

          21.骨端成長板

          仔犬と生活していると、朝ケージから出すたびに、「あれ? 昨日より大きくなっている!!」と思うことがあります。仔犬って、日々、いや刻一刻と成長しているんですね。 今回は仔犬の骨の成長についてお話します。 成長板 イヌにもヒトにも、骨の両端近くに「成長板(骨端板)」という、骨が成長する部分があります。軟骨組織でできているため、レントゲンを撮るとこの部分が映らず、黒い線として見えます。成長とともに、この成長板の一方(骨の先端の方)で軟骨部分が増殖していき、もう一方(骨の中心に

          20.抗重力筋の強化

          立つためのリハビリテーション 有名なアメリカの映画「スーパーマン」の主役クリストファー・リーブは落馬事故による脊髄損傷でほぼ完全麻痺となってしまいました。残念ながらすでにこの世を去っていますが、そのリハビリテーションの中で「立位保持運動」が行われていました。 「……さらに、台立ちも行いました。足でからだを支え、骨密度を増すためのものです。膝、腰、胸を紐で板に留め、立位をとらせます。こうすれば、バランスさえとれれば直立することができます。これは三週間の訓練で直立できるように

          20.抗重力筋の強化

          19.サルコペニア

          筋肉が組織として衰える 筋肉が量的あるいは質的に減衰して力が入らなくなる現象を「サルコペニア」と言います。その定義はまだまだ定まっておりませんが、今回は、神経機能の衰えとは関係なく、筋肉そのものが新しく生まれ変わる力あるいは再生する力が衰える、いわゆる栄養学的な筋力の衰えについて説明します。加齢や怪我、疾病、栄養の問題で筋肉量の減少及び筋力の低下が見られる現象です。 最近はイヌも寿命が延び、ヒト同様高齢化時代を迎えることとなりました。歳をとっても生活の質をできるだけ低下さ

          19.サルコペニア

          18.神経疾患の跛行

          「痛い」跛行と「しびれる」跛行 「歩き方がおかしい」と一口に言っても、整形外科学的疾患と神経学的疾患では症状が異なります。私たちヒトでも、捻挫をした場合と正座の後などの足がしびれている場合では、何となく足の運びの違いがわかりますよね。 粗っぽく言えば、整形外科学的疾患は、骨や筋肉、関節、靭帯や腱などが故障するハードの疾患で、神経学的疾患は神経の信号伝達機能に支障をきたすソフトの疾患……でしょうか。歩き方についても、これまた粗っぽく言えば、前者は「痛い痛い」と感じながら一歩

          18.神経疾患の跛行

          17.整形外科疾患の跛行

          歩き方がおかしい…… 愛犬の歩き方がおかしい時、動物病院の獣医さんの前ではその症状が出ないことがあります。そんな時、愛犬のどんな歩き方をおかしいと思ったのか、どの肢がおかしいと思うのか、などがわかるように説明できれば、獣医さんも助かりますよね。 今回は、「おかしい歩き方について獣医さんに正確に伝えるためのポイント」を解説します。 観察 歩いている肢の運びや姿勢、歩幅などを「歩様」と言うのですが、その歩様を観察するには、広いスペースがあった方がわかりやすいです。 まず

          17.整形外科疾患の跛行

          16.ウォーターセラピー その3

          水中運動で心肺機能を強化 ウォーターセラピーの記事第三回目は、水中運動(水泳)が心肺機能に与える影響について、です。 心肺機能とは 心肺機能とは心臓と肺の機能のことで、心臓は血液を通じて全身に酸素や栄養を行き渡らせ、肺は血液で運ばれてくる二酸化炭素と酸素を交換する働きをします。肺で行われる、空気中の酸素を取り込んで二酸化炭素を体外に出すという作業を呼吸といいます。人も犬も空気中の酸素を取り込みその酸素を使って活動していますので、運動している時は、休息している時より多くの

          16.ウォーターセラピー その3

          15.ウォーターセラピー その2

          水中運動で筋力強化 ウォーターセラピーの記事第二回目は、水中運動(水泳)が筋肉に与える影響についてです。 屈伸筋と抗重力筋 筋肉にはいろいろな働きがありますが、運動との関係で言えば、大きく、「カラダを動かすために関節を屈伸させる働き」と「カラダが勝手に動かないようにブレーキをかける働き」の2つに分けられます。筋肉が前者の働きをする時に、その筋肉を「屈筋/伸筋」といい、後者の働きをする時は「抗重力筋」と呼ばれます。 例えば立ったままヒザを持ち上げようとすると股関節が曲が

          15.ウォーターセラピー その2

          14.ウォーターセラピー その1

          「暑い季節になったら犬と一緒に水遊びしたい!」「うちの子を泳がせたい!」……そう思ったことはありせんか? ヒトもイヌも、日常とは異なる環境で遊ばせるとリフレッシュできますよね。さらに、海や川、プールなどで泳がせたり、波打ち際を歩かせたり、となると、日常与えられない水中運動の機会を与えることができます。水が嫌いなイヌにとってもリフレッシュになるのか?……はさておいて、泳ぐことや水の中を歩くことは体づくりや健康維持のためにとても有意な運動であることには間違いありません。私たちは

          14.ウォーターセラピー その1

          13.犬の歩様

          四足動物の歩き方あるいは走り方というと、馬術やドッグショーの関係者などがその知見を多く持っていますが、それらは、一般家庭犬の「健康」維持や回復、診断などの現場でも大いに活用できると思います。 今回は、まずその入り口について考えてみたいと思います。ただ、四足歩行の場合、どの歩様を「歩く」と表現していいのか「走る」と表現していいのかよくわかりませんので、ワードとしては「歩き方」を使います。 ヒトの歩く運動と走る運動 「歩く」という運動と「走る」という運動の違いをご存知ですか