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21.骨端成長板

仔犬と生活していると、朝ケージから出すたびに、「あれ? 昨日より大きくなっている!!」と思うことがあります。仔犬って、日々、いや刻一刻と成長しているんですね。

今回は仔犬の骨の成長についてお話します。

成長板

イヌにもヒトにも、骨の両端近くに「成長板(骨端板)」という、骨が成長する部分があります。軟骨組織でできているため、レントゲンを撮るとこの部分が映らず、黒い線として見えます。成長とともに、この成長板の一方(骨の先端の方)で軟骨部分が増殖していき、もう一方(骨の中心に近い方)が硬い骨(硬骨)に置き換わっていくのですが、それによって骨が長軸方向に伸びていき、結果として骨全体が伸びていくことになるのです(軟骨内骨化)。この軟骨部分がすべて硬骨に代わることを「成長板の閉鎖」といい、閉鎖をもって骨の成長が止まる、ということになります。

成長期に骨端部にある成長板

成長が止まる時

この軟骨内骨化はそれぞれ個別の骨によってその閉鎖の時期に差があります。つまり、イヌもヒトも、全身の骨は、均等に成長していくものではないのですね。あるときは肢が伸びた、あるときは首が伸びた、といった感じで成長していくもののようです。

ではどのくらいの差があるのか?

犬種やその個体によっても違いますが、寛骨(骨盤にある臼状のくぼみを持った骨)は、早いイヌで3.5ヶ月ほどで、大腿骨や脛骨(後肢の骨)は、早いイヌで4.5ヶ月、遅いイヌだと14.5ヶ月でやっと閉鎖、といった感じです。

仔犬の運動は注意が必要

軟骨部分は軟らかい部位ですので、どうしても硬骨部よりいろんな圧力には弱いものとなっています。ですから、まだ全体が硬骨化していないうちにこの部分に過度な圧力が掛かると損傷してしまうリスクが高いわけです。だからといってまったく負荷をかけない(運動をしない)と早期閉鎖(成長が止まる)が起こるというデータもありますので、とどのつまり、お散歩を中心とした適度な運動で、「漸進性の原則」という運動の原則に特に注意を払って、徐々にカラダを作っていってやることが大切だということなんですね。

となると、ここでちょっと気になるのが、アジリティーやドッグダンスといった、ドッグスポーツです。

ドッグスポーツは、イヌもヒトも楽しめ、両者の絆を深めるのにもとても有効だと思います。イヌは「最高の相棒」ですから。しかも、「長期抑圧」という運動能力の研磨は小さいころからの繰り返しが大切ですので、早めに始めさせたい気持ちもよくわかります。ただ、あまり早い時期、まだまだ成長途中の仔犬に過度の負荷が掛かるジャンプや回転を毎日やらせるのは、成長板の損傷やまだ完成されていない関節への負担が大きすぎる、ということは明白です。幼いころから高負荷の運動を始めるのは、運動能力を向上させるための小脳トレーニングとしては良いとしても、カラダの組織の成長という運動器トレーニングにおいては大きなマイナスになるリスクが高い、ということなんです。

イヌたちは、大好きな飼主さんの指示に従おうと、興奮して無理をしてしまうことがあります。痛みが出てから“やりすぎた”では遅いですよね。仔犬の場合、競技会等に出場する年齢、そのための練習を始める時期、カラダを作るための運動プログラムなどは、カラダの成長度合を観察しながらじっくり検討していく必要があると思います。

イヌのカラダを考えて一緒に目標を達成していくことで、生涯を通じて真の「最高の相棒」になれるよう、頑張りましょう!

WIZ-DOGドッグトレーナー 田端 圭子


科学的思考を育てるドッグトレーナースクール ウィズドッグアカデミー