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26.環椎と軸椎

環椎(かんつい)は、頭蓋骨の後頭部と関節する椎骨、第1頸椎のことで、下の図の赤く塗られた骨です。名前の通りリング状になっています。軸椎(じくつい)は、環椎と関節する第2頸椎で、左の図のオレンジ色に塗られた骨です。環椎同様、真ん中には脊髄が通る空洞がありますが、その下には環椎を突き刺すような突起(軸椎歯突起:じくついしとっき)があります。

環椎と軸椎

環椎後頭関節

頭蓋骨の後頭部と環椎をつなぐ関節は環椎後頭関節と言い、椎間板はありませんが環椎後頭靭帯(膜)などの強い靭帯でつなぎとめられています。この関節は上下可動域を広く持っているため、首を上下に振る動作を可能にします。そのため、環椎後頭関節は「Yes-movement-joint(うんうんとうなづく際に可動する関節)」と称されています。この関節は首を回すための可動域はなく、首を回す際は動かないようになっています。

環椎後頭関節

環軸関節

環椎と軸椎がつながる環軸関節にも椎間板がありません。この関節も環椎横靭帯(かんついおうじんたい)や歯尖靭帯(しせんじんたい)などの強い靭帯でつなぎとめられています。この関節は回旋の可動域を広く持っているため、首を左右に回す動作を可能にします。そのため、環軸関節は「No-movement-joint(いやいやと首を横に振る際に可動する関節)」と称されています。軸椎歯突起の上には脊髄が通っていますので、首を上下左右に振る際は動かないようになっています。つまり、環椎後頭関節と環軸関節は補完し合う形で首の動きを可能にしているわけです。

環軸関節

環軸椎亜脱臼

軸椎の歯突起が生まれながらに完全に形成されなかったり、激しい衝撃などで骨折や靭帯損傷を起こしたりすることで、環椎と軸椎がズレてしまう症状を「環軸椎亜脱臼」と言います。この環軸関節がズレると脊髄が刺激されることで、疼痛(痛み)や麻痺を引き起こすことになります。首を動かすことを嫌がり、上目づかいをするようになり、食餌も嫌がり、ひどくなると四肢麻痺に陥ります。

ちなみに「はずれる」ことを「脱臼」、「ズレる」ことを「亜脱臼」と言います。

環軸椎亜脱臼を起こさないよう、犬に運動をさせる時は、落下や強い引っ張りなど過剰に強い圧力を首に与えないよう注意しましょう。


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