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17.整形外科疾患の跛行

歩き方がおかしい……

愛犬の歩き方がおかしい時、動物病院の獣医さんの前ではその症状が出ないことがあります。そんな時、愛犬のどんな歩き方をおかしいと思ったのか、どの肢がおかしいと思うのか、などがわかるように説明できれば、獣医さんも助かりますよね。

今回は、「おかしい歩き方について獣医さんに正確に伝えるためのポイント」を解説します。

観察

歩いている肢の運びや姿勢、歩幅などを「歩様」と言うのですが、その歩様を観察するには、広いスペースがあった方がわかりやすいです。

まずはリードをつけた状態で犬をゆっくり歩かせ、次第に速度をあげて歩かせます。この時、正面からだけではなく、横からや後ろからも歩様を観察してみましょう。少しだけ速く歩かせてみるのは、痛みが出た時に明確な症状が見られることが多いからです。

整形外科学的な異常と神経学的な異常では症状が違うのですが、今回は整形外科学的症状として見られる「免重動作」、「小さい歩幅」、「漕ぐ歩き方」について説明します。

免重動作

「免重」とは、「負重」の反対語で、「特定の部位に体重をかけないようにすること」です。体重をかけると痛いので、その痛む肢(患肢)をなるべく使わないようにしているというわけです。患肢を床に接地させず、宙に浮かせた姿勢(挙上)で立っているなら分かりやすいのですが、少し痛むくらいなら立っている時も歩いている時も患肢を接地させるケースが多いのです。

前肢に痛みがあって頭を上下させて歩く場合、患肢の側(患側)が地面に着いている時には頭を上げて、痛みが出ていない側(健側)を着肢した時には頭を下げる、という様子が見られます。実際に観察する時は、頭を上げる時の肢を特定しようとするよりも、頭を下げる時の肢を特定して、その逆側の肢が患肢だと判断する方がわかりやすいと思います。

上の動画の犬は、歩行時に首を上下させているのが分かりやすい例だと思います(00:30頃から)。 左の前肢が着地した時に頭が下がっていますし、そもそも立っている時に右前肢を挙上していますので、右の前肢が患側(患肢)であることは間違いないでしょう。ちなみに、後肢に痛みが出ている時の腰の上下時も同じで、腰を上げる時に接地している後肢が痛みの出ている=患肢だと判断できます。

また、見た目は接地させていても「肉球の接地面が左右対称でない」「筋肉量に左右差がある」「立っている時左右どちらかの後肢を常に1歩引いている」「歩く時に頭や腰の上下運動が見られる」といったことから免重させている=痛みを感じる時がある、と判断できることもあります。

下のイラストの犬は、左右の後肢を見比べた時に、肉球の接地面が左の方が小さく、左肢を1歩後ろに引いています。さらに左右の筋肉量にも違いが見られます。この場合は左後肢が患肢と推測できるのです正確な診断は専門の獣医さんにやっていただくとしても、愛犬の歩き方や走り方が普段とどう違うのかを飼い主が説明することで、正確な診断につながる可能性が高くなりますので、おかしいと思ったらまずは観察してみましょう。

太ももの太さや左右の後肢の位置が異なる

小さい歩幅

関節炎などを患っていると、関節の可動域が減少するために前後の歩幅が小さくなります。下の動画では00:53頃から犬を歩かせるシーンが出てきますが、関節炎のため歩幅が小さくチョコチョコ歩いています。いつもより歩幅が小さいことを伝えるだけで、獣医さんとしてはいろんな症状の特定がやりやすいんですね。

漕ぐ歩き方

さらに、痛みのために関節をちゃんと曲げられない方の肢(つまり、患肢)を前進させようとすると、船の櫂を”漕ぐ”ような大外回りのような動きになります。歩く時にこんな動きが出ているのであれば、獣医さんに「右の前肢(前足)が船を漕ぐような歩き方をするんです」と伝えれば、これまた患部を探しやすいんですね。

この様子についても動画を掲示しておきます。

右の前肢が患肢と考えられますが、左の前肢に比べて十分に屈曲しておらず、外側から回すような動きが見られます。

分かりにくい場合には、動画を撮影しスロー再生してみると良いです。私たちWiIZ-DOGのトレーナーたちも、何かあるとすぐに動画を撮ってスロー再生で観察するようにしています。その動画を整形外科専門の獣医さんに見せれば、愛犬の異常は正確に伝わり、患部の発見につながりやすいと思います。

最初はなかなかわかりにくいのですが、普段から愛犬や他の犬の歩様を観察するクセをつけておくと、いざという時に役立つと思います。是非、日ごろから犬の歩き方には注目してみてください。

WIZ-DOGドッグトレーナー 脇 依里


科学的思考を育てるドッグトレーナースクール ウィズドッグアカデミー