見出し画像

14.ウォーターセラピー その1

「暑い季節になったら犬と一緒に水遊びしたい!」「うちの子を泳がせたい!」……そう思ったことはありせんか?

ヒトもイヌも、日常とは異なる環境で遊ばせるとリフレッシュできますよね。さらに、海や川、プールなどで泳がせたり、波打ち際を歩かせたり、となると、日常与えられない水中運動の機会を与えることができます。水が嫌いなイヌにとってもリフレッシュになるのか?……はさておいて、泳ぐことや水の中を歩くことは体づくりや健康維持のためにとても有意な運動であることには間違いありません。私たちは、泳がせたり(スイミング)、水の中をあるかせたり(水中歩行)する運動を、合わせて「ウォーターセラピー」と呼んでいます。

第一回は、まず、水の特性とそのカラダへの影響についてお話します。

水の特性

水には「浮力」「水圧」「粘性」「表面張力」などの特性があり、それぞれ運動するカラダに異なる影響を与えます。

「浮力」は読んで字のごとく「浮く力」です。カラダが水に浮いている状態をつくり、カラダ全体を重力から解放(=免荷)することで関節などへの負荷を減らしてくれます。関節炎などを患っているイヌでも運動の機会を与えられますのでありがたいですよね

「粘性」や「表面張力」は、四肢を動かす時に水をかいたり、浮いたり沈んだりする際の抵抗力となって筋力強化をもたらしますし、思うようにカラダのバランスを維持しにくくさせることから姿勢保持のための神経活性化にも寄与していると考えられます。

「水圧」は水の中でカラダを押すチカラで、カラダ作りに関しては、主に胸郭を広げる活動=呼吸活動を制限するものとして、心肺機能を高める効果につながります。

スイミングは、水の特性のおかげで、陸上運動とは違ういろんな運動効果をもたらしてくれるんですね。

①:浮力 ②:水圧 ③:粘性 ④:表面張力

水中のカラダの動き

上の2つの動画を比べてご覧ください。スイミングでは前肢も後肢も大きく円を描くように動いていますが、前肢も後肢も前後にはさほど伸ばされていませんよね。地上疾走(ギャロップ)では前後にピーンと伸ばされています。つまり、肩関節や股関節の屈伸度合いだけ観察すると、地上での全力疾走の方が可動域が大きい、と言えるわけです。

一方、肘関節や手根関節、膝関節や足根関節はスイミングの方が、よく屈曲・伸展が繰り返されています。よく見ると、スイミング(犬かき)の時は、肩関節や股関節が屈伸することで四肢が前後に伸びるのではなく、どちらかと言うと、肘より下の前腕部から趾先、膝より下の下腿部から趾先、が前後だけでなく上下にも大きく伸びる動きになるんですね。肢を動かしている間、ずっと水の抵抗を受けますので、四肢の屈筋伸筋の強化運動としてはありがたい運動となります。その代わり、衝撃が与えられませんので、骨を鍛えるという点では地上疾走に軍配があがりますね。

なぜ、肘関節以下あるいは膝関節以下の関節がこんなに強く屈曲・伸展されるのでしょうか?

運動には手先足先を固定しないで自由に関節を動かすことができる運動、開放性運動連鎖(OKC:Open Kinetic Chain)と、手先足先を固定してカラダを動かす運動、閉鎖的運動連鎖(CKC:Closed Kinetic Chain)があります。犬は水の中に入れると、四肢を前後左右に動かしながらバランスをとって泳ぎます。手足で水をかいている、手先足先が固定されていないOKC運動にもかかわらず、体幹、カラダの推進力も得られるCKC運動にもなる、つまり、推進力は得られるけれども四肢の遠位が固定されるわけではない、OKCとCKCのミックス運動、特殊な運動と言えるんですね。

イヌは、水の中で沈み込まないように、かつ前方への推進力が得られるように、前後のみならず上下にも漕いでいるようなんです。これはCKCの地上疾走では見られない運動形式なのですが、これが四肢を矢状面に沿って回転させる動きになる理由なのではないかと思います。

~つづく~

WIZ-DOGドッグトレーナー 吉田 直美


科学的思考を育てるドッグトレーナースクール ウィズドッグアカデミー