自尊心や自己肯定感と開業率
枕にかえて
日本は開業率が低い。2020年に中小企業庁が出した中小企業白書内の数値では(厚生労働省の「雇用保険事業年報」を用いて算出されるものだが)1988年をピークにして2018年度は4.4%である。新規事業者は全企業中で5%にも満たないのだ。
上の括弧内でも触れている通り、雇用関係の成立や消滅を開廃業と定義づけているため、雇用者が存在しない単独事業者などは開業の実態を把握できていない。しかし、自身すら雇用することができていない事業者など気にする必要はないだろう。(今後は副業をどうカウントするのかは課題ではある。)
どうも、えんどう @ryosuke_endo です。僕はこの開廃業率と自尊心や自己肯定感の低さは相関関係があるのではないかと仮定づけているのだが、今回はそれについて書いていくこととする。
▶︎ 仮説)自尊心や自己肯定感の低さが開業率の低さにつながる
冒頭でも書いたが、これは仮説だ。しかし、案外外れてはいないのではないかとも考えている。
詳細は以下で触れていくものの、日本の若者は自尊心や自己肯定感が低く、自身をダメな人間であると思う割合も高い。つまり、「自分は出来損ないのダメ人間である」と実感する若者が多いのだ。
これは自尊心や自己肯定感が欠如している他にないのは明白だが、自尊心も自己肯定感もない人間は「社会に向けて役に立つ製品やサービスで貢献しよう」などと思えるはずがない。自分を肯定できる自分を持っていないのだから当然の結果だと言えよう。
日本を経済面からよくしようと思っていたとしても、結局は社会指標を改善しないことには一向によくならないどころの話ではない。
▷ 経済指標の前に社会指標の改善を
本題となる開業率と自己肯定感の話に入る前に前提となる社会指標の話からしようと思う。
2013年から2020年8月までの期間、政権与党にて首相を務めた安倍内閣が採用した経済政策、通称『アベノミクス』は耳にしたことがある人が多いだろう。
詳細は省くが、この経済政策を評価する言説があることは事実だ。しかし、経済指標だけをみて物をいっているだけでなく「みたいところだけをみてものを言っている」と言わざるを得ない。
まず、株価は在籍期間中で株価が10,230円から22,882円と倍になったため経済政策がうまくいったのだ、という。しかし、その株は国内外の投資家が資金を投じているから上がっているだけでなく日銀やGPIF(公的年金投資機構)が買い支えている側面がある。特に日銀に至っては東証一部上場企業の2割弱に相当する約400社に投資している。
加えて、年金3団体(上記のGPIFに公務員共済組合と私学共済加たもの)と日銀による日本株式への投資は、東証時価総額の20%余りを保有するにまで至った。この金額はあまりにも大きい。
もし、これを売った場合に何が起こるのか。
株の暴落であることは誰が考えても明らかなのである。政府が日銀の保有している株を全て売ると判断し、実行した場合には日本の株価が大きく下がるのだ。これは健全に成長していると言えるのか。
失業率も改善したとされているが雇用されている人間の内、非正規雇用が70%である。そして、株価が上がっているのにも関わらず国民所得は1997年以降、増えていない。最低賃金はOECD(経済協力開発機構)加盟国平均の2/3にも満たない。
いくら同一労働同一賃金だといっても、非正規雇用ばかりを増やしていく政策が優遇される以上、国民所得が増加することは今後もないだろう。つまり、この国の経済はまったくもって成長しているところか、国民の12%にも満たない株式投資をしている人たちだけが得をしただけであり、一般的な労働者たちには何の還元もされていない。
むしろ消費税は増え、社会保険料負担が増えているのだから、手取り額は下がりっぱなし。これが2022年現在の日本である。
盛れるところは持って説明される経済指標だけをみて悦に浸る政府に期待することはできないうえに、経済指標の前に気にしなければならないのは国民の幸福度を測る社会指標だ。
▷ 社会指標からみる日本
国立青少年教育振興機構が2015年8月に出している『高校生の生活と意識に関する調査報告書-日本・米国・中国・韓国の比較-』では、日本・米国・中国・韓国の4ヵ国における若者の意識調査を行い比較しているものだ。
家族関係の指標項目をみると『親を尊敬している』について『とてもそう思う』と回答した若者の割合は米国70.9%、中国59.7%、日本37%。
『家族との生活に満足している』割合は中国51%、米国50%、日本39%とあり、断片的な情報ではあるが家族との関係で「とても満足」だと回答する若者は半数に満たないどころか割り込んでいる。
そこから派生し「私は人並みの能力がある」と回答する若者は「とてもそう思う」の割合が米国では6割前後と出ているのにも関わらず、日本の若者は1割に満たない。ここから言えることは明確に家族関係が自意識に影響を与えているという点だ。
また「自分はダメな人間だと思うことがある」という項目では逆に日本人の若者たちは他の3ヵ国を突き放す結果が出ていることから、明らかに自尊心や自己肯定感が低いことが明白である。
この結果に限らず、「自分の将来に不安を感じている」や「周りの人の意見に影響されるほうだ」、「自分自身への満足」といった項目で軒並み日本の若者の数値は上記4国と比較して下回る形になっている。
経済指標をどうこうと語る前に、これらの社会指標を改善することの必要性を議論すべきであり、これが必要ないというのであれば、日本から新規産業が生まれて大きな新陳代謝を期待することなどできないことは火を見るよりも明らかである。
▷ 自尊心や自己肯定感が低いから開業率も低い
これまで長々と見てきたが、この社会的指標において自意識が非常に低くなっていることが開業率に影響を与えていると述べることはできるだろう。
新規開業する人材は何も若者だけではないが、若者が将来の日本を支える人材の候補であることは疑いようのない事実だ。国外から人員を調達するのであれば話は別だが、そもそも自国民の社会的、経済的な状況を良くすることができない政府に外国人を受け入れるだけの器があるとは思えない。
家族関係について、僕個人がどうこうと言えるものではないだろうが、もし、旧来的な親が体格と経験によってマウントを取るような関係を構築している場合、今後も「話を聞いてもらえない」「認めてもらえない」と実感する子どもたちは増えるだろう。
結果、自身を認めてくれる存在が欠けていることで自尊心が欠けていく。これを改善するためには、国民所得を上げつつ、子どもに向けての支援を拡充させていくことが必要だが、民主主義国家である日本では、老人たちに向けた政策に重きが置かれる。
結局、こうなってくると開業をできるような人材が国外へ流出していき、国外で富を築き、日本は搾取される側に回る他にないのだろう。
何だか日本の未来は明るい。
だからこそ、国に何かを期待するのではなく、各家庭単位、個人単位で「日本以外の国」でやっていけるような状態を確保していくことが必要なのだろう。
労働市場は日本だけに限ってしまえば限定的だが、語学が堪能であれば(もしくは能力を発揮できる程度に身についておけば)市場は圧倒的に大きくなる。そうなれば日本にいながら海外の仕事を受注することも決してむつかしくはないだろう。
そんな風に、個人での幸福度を追求することが今後の日本では必然的必要となっていくのだろう。それが日本で生まれ暮らす子どもたちにとっていいことなのかどうかはわからない。
ではでは。
えんどう
▶︎ おまけ
▷ 紹介したいnote
アベノミクスが何をしてきたのかを知りたければ井上さんのマンガを読めばいい。読目ばわかる通り、何があったわけでもないどころか、むしろ苦しくなっているのだから日本って国は自分たちの首を真綿で締めることが得意な人種なのかもしれない。
日本で良く聞く「自己責任論」だが、自意識が低い人間に向けた放っていい言葉だとは思えない。なぜなら、自らが行うことを自分自身ですら猜疑心を持ってしまうような精神状態なのに、自己責任も何もない。なんというか、日本は誰が豊かなのかをきちんと考えたい。
有賀さんのnoteだが、料理は「調理すること」と「食べること」によって自尊心を得られるとする。ああ、たしかにそうだなと。自分がしたことを認められる第一の人が自分だというのだ。確かに我が家の子どもたちも懸命にお手伝いをしたがってくるが、あれはそういうことなんだろうな。
▷ 本noteに関連する紹介したい書籍
度々紹介しているが、橘玲の書籍はすべて為になると言っても過言ではない。いや、あなたには適応しないかもしれないが、少なくとも僕にとっては金言ばかりを授けてくれる有益なものばかりだ。この幸福論も参考になる人いには大いに参考になるだろう。
▷ 著者のTwitterアカウント
僕の主な生息SNSはTwitterで、日々、意識ひくい系の投稿を繰り返している。気になる人はぜひ以下から覗いてみて欲しい。何ならフォローしてくれると毎日書いているnoteの更新情報をお届けする。
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