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アートにみるフェティシズムとディシプリン展への協力とその先のできごと

不思議なタイトルにあるとおりの、フェティシズムとディシプリンをテーマにした作品展に協力しました。
様々な角度からこのテーマに向かい合ったクリエイターの作品を目にすることができると思います。

こういったテーマの企画展はなかなかバランスが難しいようで、アートに偏りすぎたりアカデミックになりすぎたりポルノになってしまったりしがちでなかなか「いい具合」に収めたものがなかったように思いますが、今回の展示は誰でも楽しめて、新しい知識や知らなかった価値観、そして好奇心を刺激するなにかに出逢えるんじゃないでしょうか。

好奇心は探求の源泉。
探求心は視界を明るくし世界をどこまでも拡げる無限の力を持ちます。

SAYOさんによるイラスト

DOCTRINEの写真作品の一部は、こんなかたちでイラスト作品として昇華されました。SAYOさんの作品になります。

詳しくは本展を企画/キュレーションし開催を実現した玲芳龍さんによる解説記事をご覧ください。
また、さらにスクロールすると展示のさわりとDOCTRINEからみたこの企画展の意義に触れた内容があります。


「アートにみるフェティシズムとディシプリン」展
2022月6月4日(土)〜6月11日(土)
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DOCTRINEから見た「アートにみるフェティシズムとディシプリン展」

この企画展は「アートにみるフェティシズムとディシプリン展(物神崇拝と拘束展)」という名前の通り、かなりハードコアなテーマに基づいて企画されています。
つまり、「ある人の性癖の根源」を象徴的に視覚化・具現化した作品を展示した強烈なものであると言い換えられます。

作品としてそれを見たとき、それは完成されたオブジェクトであったり写真やイラストなので「毒気」はだいぶ抑え込まれているかもしれませんが、それを作り上げた当事者の中では激しい熱量のなにかがうねり狂い爆発していたはずです。
その結果、生まれた作家の生命の輝きの残滓的な作品なわけです。

でも、この企画展ではそのようなドロドロ煮えたぎったものは感じさせないようにさりげなく巧妙にパッケージされています。
静かな住宅街にあるこぢんまりとはしているけどしっかりとした硝子張りのオープンギャラリーというかたちで。

ギャラリーの内部は狂気と情熱に満たされていますが、一歩出た外からはそれを感じさせません。
むしろおしゃれで風変わりな作品展のように、通行人の目には映っていたことでしょう。
その敷居の低さと抵抗感を生まない空気感こそ、この企画展における最大の仕掛けだったように思えます。

はじめに言っておくと、もちろん様々なフェティシズムを持ったガチの方々はとても多く来場されています。
しかし、それに負けないぐらいアート関連のポータルで情報を見て足を運んだ方や通りすがりに気になり飛び込んだ多くの「それ以外」の人々が、言葉通り連日に渡って押し寄せました。
小さなギャラリーは入場制限しながら多くの人々を吸い込んでいきました。
フェティシズムに傾倒していない人たちにとって、この展示で触れて知ったものはすべて異質でしょうし驚きの塊だったと思います。

普段、彼らが自らが触れないような異質で異様で狂気に満ちたもの。
でも先入観のないそんなみなさんだったからこそ、純粋な好奇心から食い入るように見て回り、何度も何度も小さなギャラリーを歩き回り、作家に意図を尋ねて周り、驚いたり感心したりそんな光景が毎日デジャヴのように繰り返されていました。

これは持論ですが、フェティッシュをフェティシストにだけ発信してもおもしろみがありません。愉快という意味のおもしろさではなく拡がりや化学反応的なおもしろさのことです。
ですが、今回のような硝子張りの企画展ではフェティシスト以外にリーチし、純粋な反応や感想が得られます。
フェティッシュを扱う我々にとっては新鮮な反応であり声として届き、彼らにとっては未知との遭遇、認知の拡張になったはずです。

誰かのフェティシズムを受け入れる必要はない。
ただ、知って感じてもらえればそれでいい。
そういう相手に「求めない」「押しつけない」フラットすぎるぐらいのスタンスは、本来かなりの毒気に満ちたものをいともたやすく自然に触れさせてしまった。

実は初日にしてこの企画展は成功だと感じていました。
結果としてたくさんの来場者に恵まれ、作品達は新たな持ち主を得て、支援もたくさんいただいた。そういう意味での成功ももちろんなのですが、そういう単純な話ではないです。
この数年間の重く暗い社会情勢に情熱を喪いかけていた多くのフェティシスト達に改めて自身のフェティシズムと対峙させ、再確認させ、再び心の火を灯したこと。
そして、フェティッシュの向こう側にいた多くの人々に呼びかけることなく振り向かせることができた…つまり、日常の境界線を飛び超えて異なる世界・価値観を知ってもらえたということ。
この数日間はとても意義がある、例えば人の心や宇宙に変化を生み出すきっかけになったのかもしれません。

この日のために尽力した作家のみなさんに感謝と労いの言葉をかけたいし、来場者への感謝もあるけれど…それ以上に、このチャレンジングな企画を怯まず実現させた玲芳龍さんを労いたい。
長年にわたりフェティッシュシーンの森羅万象を見つめ続けた先に発見した答えだったんだと思います。昨日今日の経験や知見では成すことができない途方もない想いの果てに生まれた企画だったのでしょう。

遠い過去に発せられた光が、現在に届き、さらに未来を照らしました。
「アートにみるフェティシズムとディシプリン展(物神崇拝と拘束展)」とは、星の輝きのような企画展。

展示の触り

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