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工学部生に告ぐ! 国際会議の進め方 〜会議の価値は,圧倒的な準備による〜

英語は『お箸』です.ご飯を食べるための道具なんです.は?のっけから何を言っているの?と思わないで聞いて下さい.一昔前であれば,国際会議というものは,大企業だったり,海外との関わりのある商社で行われているもの.英語が流暢に話せる一部のエリート社員だけが参加するものだったかもしれません.もう今は違います.そして,これから国際会議は,間違いなく加速して多くなります.リモートワークによってさらに加速.AI翻訳の発達によってもさらに加速.もはや日常.インターネットの記事もソースが海外メディアということを忘れてしまうほどに自動的に翻訳されていたりする.様々な家電製品の取説も,少し変な日本語で書かれていたりしますよね.それほどまでに世界はつながっている...

修士を卒業して,やっと国際学会や英語の論文から離れられると思ったら大間違いです.むしろ,これからが英語で読み書きする,発表・協議する場面が飛躍的に増えます.将来,国際会議に臨まなくてはならなくなるあなたに,英語が苦手の私が,この記事を送りたいと思います.何かの助けになればと思います.

英語やだ〜.蕁麻疹がでる〜.という暗記もの大嫌い(でも歴史はなぜか好き)な私でも,27年のエンジニア人生において,海外出張20回以上,3年間のアメリカ赴任,国際学会発表など英語が必要となる仕事もこなすことができました(ぜいぜい.呼吸は荒くなりますよ.全力で走りましたから.めちゃくちゃしんどかったのは事実です).

その秘訣は,なんといっても1に準備.2に準備.3,4は予想で5は度胸といった感じでしょうか.以下,具体的に説明します.

1.準備

他の記事でも書きましたが,件名(タイトル)というのは非常に大切です.決して適当に付けない癖をつけて下さい.論文のタイトルなどもそうですが,会議案内を送付する時の名称は,それを読めばパッと分かるものを厳選する.

会議の準備資料:その1

書く順番としては,背景(現状の課題みたいなもの)があって,それを何とか解決したい訳だから,その目的を書く.

会議までに,情報収集やヒヤリングしたことをまとめる.
協議したい事柄を列挙するとともに,収集した情報から導かれる考察
①自分の意見
②出席者への質問事項
③出席者への依頼事項
これらを一旦,日本語でしっかりと明文化する.発表や議長役(facilitate)が上手くいかなかった時に英語を言い訳にする人がいますが,そういう人は日本語であっても大差ありません.日本語できちんと言語化できていないことがほとんどです.日本語で理路整然と言語化できていないのだから,納得する説明が第二外国語でできるわけがないのです.しっかりと論点が日本語で整理できたら,それを英訳していきます.その時には,Google翻訳やDeepLを活用すればいいんです.ただ,それをそのまま使わないことです.何度も言い回しを変えたり,文法や時制を確認する手間を惜しんではいけません.すでに翻訳ソフトで随分楽をさせてもらっているのです.これ以上はだめです.楽をしてはいけません.

2.準備

会議の内容やテーマによっては,若干フォーマットが変わると思いますので,別のフォーマットも用意します.

自分の提案主体の会議の場合は,アプローチについてできるだけ具体的に分かりやすく説明します.

このフォーマットで重要なポイントは,異論・反論の部分です.必ずしも自分の提案がすんなり受け入れられるとは限りません.すんなり受け入れられるなら,そもそも会議なんて必要なくて,メールでお願いすれば済む話です.実際には,なかなか賛成してもらえなかったり,反対意見が必ず出ます.むしろ,それが普通です.無意味な会議のほとんどの場合,行き当たりばったりというか,反対意見を全く想像していない.異なる立場の人に理解・納得してもらうために会議を開いているのだから,反対意見を想定して,それも含めて次のアクションにつなげるといった事前の思考トレーニングをなぜしておかないのか.

立場の異なる人たちの反対意見を想像して,それすらも言語化するのです.そうすることによって,相手の考え方がより深く分かるようになります.そうなればしめたもので,その反対意見も考慮した次善策も浮かんできます.その英文を用意せずに,アドリブで国際会議を乗り切ろうなんてずうずうしいです.これは出席者に見せるものではないので,白熱した会議になったとしても,良い負けないように自身でしっかりと準備しておく資料です.

会議の準備資料:その2(下段の異論・反論を想像して記述しておくことが大切

3.4.予想

さらにもう1ページ.こちらのフォーマットは,会議というよりは,国際学会発表の準備で良く利用したものです.研究の結果から,考察や提案,次の研究プランなどを発表する場合です.

聴講して頂いた方々(会議に出てもらった人たち)に,出席して良かったと思ってもらうためには,提案の主旨をより深く理解してもらう必要があります.そのためには,頭の中をまっさらにして,自分の発表原稿を眺めてみる.論理に飛躍がないだろうか.適切なグラフを表示しているだろうか.円グラフで示したら一目瞭然なのに,正規化もせず棒グラフでくどくどと説明していないだろうか.この発表を初めて聞いたとして,最低でも5個の想定質問文を和英併記で書いておく.(わざと意地悪な人を頭の中で思い浮かべて,いやらしい質問を考えてみるのも一興です.)
そして,その想定質問に関する回答集も和英両方できちんと書き残しておく.

会議の準備資料:その3(下段のように想定質問と回答集を用意することが大切

5.度胸

会議の準備資料1〜3にぎっしりと自分の頭で考えた英文をまとめてきたのです.『これでもか』っていうくらい準備したのです.日本での英語教育は賛否両論ありますが,Reading/Writing(Speaking以外.およよ.)の英語教育は伊達じゃない!ここまでやっておけば,発表の当日,緊張したことはほとんどありません.もちろん流暢な英語で話せているわけではありません.でも,起承転結というか原因と結果,課題と対策が理路整然と組み上がっていれば,相手にしっかりと伝わります.理解してもらえます.ディスカッションが盛り上がります.相手がどんどん私に意見を聞いてきます.うれしくなります.でもアドリブで流暢な英語はでてきません.辿々しくも一生懸命説明していると,相手が言い換えてくれます.あなたが言おうとしているのは,○○ということか?あるいは□□ということか?ますます協議に熱が入ります.黙っているのが一番ダメです.海外の人と大阪でお好み焼き屋さんに入った時に,これはどういった料理ですか?と聞かれて,真面目にキャベツを千切りにして...と説明する必要は必ずしもないのです.『Japanese Pizza!』でOkです.

海外の人が下手くそながらもお箸で日本食を食べていたら感心しませんか?
『らーめん.食べる.お昼.あなたに.』と言われたら,昼食をあなたと一緒にラーメン食べたいと言っているなと分かりますよね.相手は,特にエンジニア同士なら,英語を母国語としない人に綺麗な感動する英文を話して欲しいなんて思っていません.発表者の理論やアイデア,開発したプログラムや製品に関する情報を求めているのです.

国際弁護士になりたいわけじゃないんです.英語で感動する小説を書こうとしているわけじゃないんです.恐るな!僕らエンジニアは,日本語・英語以外にも,プログラム・図(図面)・数式という世界共通コミュニケーションツールを3つも既に持っています.

エンジニアは,製品開発力で勝負です!だからこそ,英語という道具を上手く使いこなす努力も続けたいですね.Enjoy development of your ability of English!


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