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【Interview企画/学生小委員会】ドボクと社会・知事の哲学とは…?【香川県知事-Vol.2】

みなさんこんにちは!土木学会学生小委員会です!
前回に引き続き、7月に実施したインタビュー企画第一弾の様子をお伝えします。現代社会と土木の関わり方に対する池田知事の持つ哲学や将来の日本、土木業界を担う若者に対するアドバイスなど、必見です!!

↓前回はこちら!


ドボクは…永遠!?「諦め感」って…?

川端(学生小委員会)――――――
 以前、国土交通省の道路局長をされていた時に、道路は社会基盤の施設として大切で、今後も力強く整備をしていきたいとおっしゃっていましたが、それはやっぱり人流、物流から日本の経済とかに果たす役割みたいな側面が強いというお話なのでしょうか?

取材チーム

池田知事―――――――――――
 ひとつはそういうことです。それともうひとつはやっぱり僕は土木はある意味永遠だと思ってるんですよ。
 少し前は、仮に二車線でも高速道路を建設さえすれば「工場を建てますよ」という企業が多かった時代があったんです。ところが現在は四車線の高速道路でないと、企業が進出をためらう傾向にあります。20年ぐらい前に要求レベルが上がっています。当然、社会は高度化しないと発展しないので良いことですが、社会が高度化すると求められるインフラの質っていうものはだんだん上がってきますよね。
 土木の仕事っていうのはインフラ作りなんだから、20年後には違うインフラが求められて、時代に合わせた要求に応える仕事があると思うんですよ。だから、そういう意味では「着実にやっていく」っていうことが一番大事な分野が土木だと思います。土木にゴールはないということですね。
 よく財務省をはじめ、財政を気にする人には「キリがない」と言われるんだけど「当たり前だ!」と思います。キリがあったら人類の成長は止まりますよね。キリがあったら大変なんです。だってみんな自分の孫やその孫の代まで考えていけばキリがあったらその頃はどうするんだよ…!キリはないですね。

川端(学生小委員会)――――――
 私たち土木学生は将来、土木技術者として何十年も土木業界に身を置くことになると思いますが、社会のニーズに合わせて必要なものを当たり前として届けていくっていうことは、土木技術者に課せられた使命だと思っています。一方で池田さんがおっしゃったように理解されない側面、変な話「金食い虫」であるといわれてしまったりだとか「ハコモノにお金を使うんじゃなくて人にお金を使いなさい」みたいなことを言う人もいると思っています。そういう意味では社会の中でも認識にギャップがかなりあると思いますが、その中で、特に土木技術者や国土の政策に関わる国土交通省の方は今後どのようなことを意識しながら仕事に向き合うべきか、お考えはありますか?

池田知事―――――――――――
 やはりキリがないし、常に時代の要求に応えていくうえで財源や公共投資としての是非を問われるのはあると思います。例えば、多くの道路が砂利道だった時代に舗装路を作るということにはそれはもう諸手を上げて賛成ですよね。あるいは、毎年洪水が起きている時代に治水をやると「そらぁもう早くやってもらわな困る」みたいな意見が出ます。一方そういう時代と比べて、二車線が四車線に増えるみたいな話は「今もう通ってるからいいですよ」と思われてしまいます。そういうものではあるんですが、だからこそ昔とは違うニーズを拾って反映させるためのいろんな努力が必要かもしれませんね。
 その上で僕自身が心がけてたのは、日々道路を使っている中で「やっぱそこちょっとつっかえて不便だな」とか「ちょっと見通しが悪くて危ないな」とか感じる時があるじゃないですか。例えば、右折車両で混んでるのであればそこの部分だけでも上手にレイアウトを見直すとか、中央分離帯の木を一つだけちょっととって車線をいれるとか、不完全かもしれないけれど改善すると。そういうような心がけをすることによってみんなが「やっぱり言えばよくなるんだ」「またやってもらおうじゃないか」と思えるような流れを作れると思うんですよね。
 ところがそういう困りごとを「ちょっと我慢してくださいよ」とか「そのうち横にバイパスが出来たら解決しますから、分かりますけどちょっと我慢してください」みたいに放置すると「もう別に何年たっても変わりもしないし、別に困ってると言っても、そんなにとことん困ってないしいいかな」みたいな「諦め感」が出ます。諦め感みたいなのが出てくるとやっぱりさっきの「もっと良くなっていきたい」という気持ちが失われる部分があるんですよね。だから「諦め感」が出ないように、住んでる方の「良くなるんだ」とか「私の周りよくなった」とか「あんたんとこもやってもらえば」みたいな想いがどんどん生まれる世の中にしたいですよね。

川端(学生小委員会)――――――
 そうすると、土木は社会にいる一人一人が「一歩でも前に進みたい」「もっと上を向こう」という気持ちを持つことから生まれてくるということでしょうか?

池田知事―――――――――――
 そうそうそう。そういうことだと思うんですよ。大きいことにもそういう気持ちが広がってくると「それだったらあっちもやってもらったらいいんじゃないか」となりますよね。

「ないない尽くし」の社会、これからどうする…?

川端(学生小委員会)――――――
 人口減少や税収の減少など、私たちを取り巻く厳しい現実を学ぶことが多い中で将来土木に関わる自分たちの中でどうするべきか?というスタンスを考えるのが難しい状況にあると感じています。そこでインタビューに来る前に学生小委員会の4人で道路などのインフラについて、今後どういう風に取り組むべきか?という議論をしたときに、ただ造るとは少し違う工夫の仕方もあるんじゃないのか?という話になりました。
 例えば、現状の取り組みとして地域高規格道路を整備して現道の改良をすることで、利便性や災害に対する強靭性とかを担保するなどの「ハード的な施策」を積極的に取り組まれているところだと思うんですけど、私たちの意見としてはここに「ソフト的な視点」を加えて、例えば制限速度を少し緩和してみるなど、運用方法を見直して柔軟な道路の使い方を検討することも重要だと思いました。「ハードとソフト」という二項対立に持って行くのが適切か分からないんですけれども、そういった点には何かご意見をお持ちですか?

池田知事―――――――――――
 言われた通りで、今使っているものが「もうこれはこういうものなんだ」といった今までの常識にとらわれず、「道路の幅をちょっと広げればもっともっと色々使い勝手が考えられるよな」とか「立体交差にすればまた変わるよな」みたいな、ハードの拡張も考えるべきことではあるんです。一方で、今ある幅の中で、敷地の中で「もっと流れが良くならないか?」とか「もっと安全にならないか?」とか制約条件の中でまだまだ考える余地はあると思うんですよね。特に幹線道路なんか割と広く作ってるところも多いから、よく見ると「ここはちょっとこうやったら(一車線くらい)入るよな」とか、そういうのがあるんですよ。だからそういう今与えられた公共空間、道路区域、そういう中で何ができるかっていうのをまず考えてみるっていうのはすごく大事なことだと思います。
 それで、確かに最後財源がなきゃできないという問題はあるけれども、これは最近の世の中の悪い癖だ思っていて「お金があるか、ないか」をまず考えて、お金の許す範囲、財政の許す範囲で何か考えていますよね。でもそれは順序が反対だと感じていて、何が求められているかってことを考えた上で、その必要な財源であれば何とかしようと。本当に必要なものにはお金は集まってくると思うんです!いろんな意味でね。コロナ対策だって、最後は十兆円も使ったわけだから、思考回路は間違えてはいけません。「お金があるからこれをやる」んじゃなくて「必要なもの」。そのあとで財源のことはみんなで考えるべき話だと思います。

川端(学生小委員会)――――――
 そうすると、先にお財布を開いて「うーん」って考えるよりも、社会に何を求められて、どう応えていくのかっていう部分をよく考えること大事なんですね。

池田知事―――――――――――
 そうですね。

池田知事ご夫妻

感想

今回のインタビューを通して、長年官僚として社会基盤施設の整備に携わってこられた方の考え方に触れ、私たちが予想した以上の柔軟な発想や確固たる理念に驚きました。今の土木業界では担い手不足や社会における認知度の低さなど、様々な課題に直面にしています。これに対して次世代を担う私たちは、技術の向上にとどまらず柔軟なアイディアや自身の持つ哲学に思いを巡らせ、社会の将来像とその中での私たち自身の位置づけを見つめなおすことこそが求められていると感じました。

二回にわたってお送りした、今回の池田知事へのインタビュー。
明日からは、インタビューに併せて行った現地調査の様子をお伝えします!!

<メンバー随時募集中!>

今回の記事を通して「インタビューを通して、直接話を聞いてみて考えを巡らせたい!」「インタビューしたい相手がいる!」という学生は、是非とも学生小委員会に参加し、私たちとともにいろいろな方へインタビューに行きましょう!

今回私達のインタビューのために貴重なお時間を頂戴しました
池田豊人様
池田恵様
には厚く御礼申し上げます。本当にありがとうございました。

<取材チーム>

学生小委員会
東洋大  宮﨑康平
東洋大  川端浩平
早稲田大 樋口蒼太朗
香川高専 土田虎ノ助
2023年7月2日 『池田とよひと後援会事務所』にて