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化学やサイエンスの書籍(ご紹介)

 化学やサイエンスに関する書籍について、思いついたままにご紹介したいと思います。何かのご参考になれば、うれしいです!

『元素はどうしてできたのか 誕生・合成から「魔法数」まで』,櫻井 博儀 (著),PHP研究所 (2013)

 著者の櫻井先生は東京大学理学部の教授です。この本には、元素のなぞを解明しようとしてこられた、いろいろな研究者たちが登場します。例えば、原子の存在を初めて物理学的に証明したのは、かの有名なアインシュタインなのだそうです。
 Nh(ニホニウム)で注目された日本人研究者らも、この分野の研究に貢献しており、わかりやすく述べられております。他にも私の知らなかったことが数多くあり、とても勉強になりました。読み終えるころにはきっと、化学で知った元素の奥深さと不思議さに、すっかり魅了されていることでしょう。

『化学の歴史』,アイザック・アシモフ(著),玉虫  文一/竹内 敬人(訳),筑摩書房(2010)

 「化学」とは、一体何なのでしょうか? 簡単に言うと、化学とは「物質」の科学です。ちなみに、化学と同音の「科学」の英語は、ラテン語のscientia(知識)に由来する、scienceです。ここで扱う「化学」のほうは、英語では、chemistryとよばれます。
 「物質」とは、物体の材質です。物体だけでなく、生物や地球なども、突き詰めていけば「物質」でできている、といえます。しかし、普段、われわれは物質を意識することはほとんどありません。そのような例えとして、「空気のような存在」という言葉が思い浮かびます。
 つまり、物質は、さまざまなありとあらゆるものを成り立たせるのに不可欠な存在でありながら、あまり表には現れず、それらを裏方で地味に支え続けているのです。その、目立たない「物質」にスポットライトを当てるのが、化学を学ぶことである、と思います。
 本書は、古代から現代まで、化学を発展させたさまざまな人物が登場し、物質をいろいろな方法で探りながら、次々と新しいことを発見していく冒険物語のような話で、読者を飽きさせない面白さがあります。
 しかも、後半になるまで、元素記号なしでのわかりやすい説明が続きます。これは、数学の説明で、数式がないのと同じようなことです。従って、多くの皆さまにとって、とてもわかりやすいと感じるはずです。

『バイオケミカルシステム理論とその応用―システムバイオロジー解析を効率化する』,白石 文秀 (著),産業図書 (2006)

 著者である九州大学教授の白石文秀先生と知り合ったのは、新聞記事に掲載されたご研究に、当時、高校生だった私が大変興味を持ったため、先生の研究室にお邪魔し、高校化学部で進めていた研究に対し、貴重な指導・助言をいただいた時です。
 本書は、数学に基づいて化学的な観点から生体内の代謝反応を解析する理論を構築するとともに、その手法を応用研究につなげていく事例を紹介しています。体中では酵素が触媒となって、複雑な化学反応が多く起こっていて、そのバランスが崩れれば、病気の発症につながります。
 これまで解明が困難であった代謝反応を解析する方法を数学的アプローチで開発した先生の業績は、医療の発展にとって、大きな意味があり、先生は、こうした分野の研究を、60歳を過ぎられた現在もなお、医学研究者らと共同で、第一線で研究されておいでです。
 なお、大学レベルの難しい数式が含まれており、私は数学があまり得意ではありませんので、本書の内容を十分に理解できたとは言い切れませんが、知的な刺激が豊富に得られ、視野が大きく広がりました。
 本書は、先生の学問への情熱やこれからの社会において、得意とする何かを一つでも持つとともに、それを強みに他の人たちと協力するなかで、力を発揮して貢献できると感じることができる、と思います。

『化学の基礎77講』,東京大学教養学部化学部会 (編集),東京大学出版会 (2003)

 大学1,2年生が学ぶ化学の基礎が示された本で、東京大学の先生方30名が、各章を執筆しています。高校までの化学の内容と、大学の化学の内容の橋渡しとなるのが、本書です。
 中学、高校の化学は、物質がなぜそのように存在するのか、あるいは、なぜそのように変化するのか、という理由を、あまりきちんと示さずに、「まぁ、とにかくそうになるんだよ…」との説明で濁される部分が、比較的多いです。
 しかし、大学に入ると、学問の最先端の内容に触れ、より深く学びます。
例えば、東京大学の入試問題は「なぜ」そうなるか、という理由を問う論述があります(150字程度で答えよ、など)。大学の化学の基礎を知りたい人に勧めたい、と思う本です。

『ラブ・ケミストリー』,喜多 喜久(著),宝島社 (2012)

 「ラブ」と「ケミストリー」の両方に興味がある人、つまり私のような人に、ぜひお勧めしたいライトノベルです。なお「ケミストリー」への興味は、ほんの少しでもあれば十分です。
 本書の舞台は、かの有名な東京大学かもしれない架空の大学で、本書の主人公は、そんな大学の大学院に通う学生です。これまで世の中の人がなかなか知るよしもなかった内容が、たいへん興味深く描かれています。ちなみに著者の喜多さんは、実際に東大院生だったとのことです。

『誰も教えてくれなかった実験ノートの書き方』,野島 高彦 (著),化学同人 (2017)

 実験ノートの書き方を、大学で研究を始める学生に向けて丁寧にわかりやすく解説した書籍です。私も、学生のころは、せっせと実験をしては、ノートに記録し、学位論文(学士と修士ですが・・・)を仕上げていました。
 実験ノートは、研究したことを示す証拠となり、研究を進める上で、その書き方をきちんと押さえておくことは大切だなあと、読んでみて、改めて思います。興味のある人は、ぜひ手にとってみてはいかがでしょうか。

『コロイド化学史』,北原 文雄(著),サイエンティスト社 (2017)

 コロイドの発見から現在までの研究内容をわかりやすく紹介した本で、『愚者は経験を尊び 賢者は歴史に学ぶ(先人の言)』との言葉から始まります。
 1~100 nmの大きさの粒子(=コロイド粒子)が分散した物質を、コロイドといいます。ゼリー、絵の具、煙や雲、石けん水、墨汁、色ガラスなどがコロイドです。
 グレアムの言葉として、「自然界にははっきりした区別というものは存在しないし、物質の区分けは絶対的ではないという格言が事実によって証明されているのではないだろうか」とあり、物質の成り立ちを考えるのにとても良いのでは、と思います。

『人をつくる言葉』,大村 智(著),毎日新聞出版 (2016)

 著者の大村先生は、2015年の「ノーベル生理学・医学賞」を受賞し、今年、86歳です。地元の大学を卒業されたのち、5年間、東京の高校で教諭を務められたあとに、さらに研究を深めるべく教諭を辞められて、のちにノーベル賞を授与されるほどの歴史に残る偉大な研究に取り組まれました。「線虫の寄生によって引き起こされる感染症に対する新たな治療法に関する発見」という研究テーマです。どんな生き方をすれば、そんな人生になるのでしょうか・・・。
 この本には、大村先生が長年にわたってノートに書き留めて心がけてこられた言葉の数々が、数えてみたところ、106種類も記載されています。私が以前から好きな言葉の一つである「一期一会」も収録されていて、ちょっとうれしかったです。今後の自分の人生において指針となる言葉が一つでも見つかった人のなかには、もしかすると、将来のノーベル賞受賞者がいるのかもしれない、と思います。

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