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子どもの肯定感を左右する<ひらがな読み書き>-読み書き支援の現場から-

「先生、100点だったよ」

1年前に新規入会した小学3年生の女の子。ひらがなの読み書き支援を続けて10カ月がたったころのことでした。静かだけれど、自信に満ちた、喜びの報告でした。

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見落とされていたひらがな読み書きの未定着
彼女の入会面談では、ひらがなの読み書きに対する不安は、特に語られませんでした。しかし、本人の「そそっかしさ」を説明するために語られたエピソードの中に、「もしかすると、ひらがなの読み書きに何か困り感があるのかもしれない」と思わせるものがいくつかありました。そこで、ひらがなの読み書き検査を提案しました。

実際に読み書き検査を実施してみると、読めているように見えていたけれど、実は拗音(小さい「ゃ・ゅ・ょ」がつく音)の読みが未定着であることや、形が似ている文字(き・さ・ち)の読みが曖昧であることが分かりました。

それではなぜ、拗音の読みが未定着でありながら「読める」ように見えていたのでしょうか。

それは「きゃ」だけを読もうとすると「きゃ・きゅ・きょ」のどれかで迷ってしまうけれど、「きゃべつ」と単語で出てきてくれば、「きゅべつ」や「きょべつ」と読むはずはないので、「きゃべつ」と正しく読めていたのです。そのため「読めている」と思われていました。

ただし書こうとすると「ゃ・ゅ・ょ」で迷うので、合っていたり合っていなかったりするのです。その結果「そそっかしくて間違えている」と思われていたのです。

読めているのにテストで間違えてしまう悔しさ
そこで単元学習よりも先に、まずはひらがなの読み書きの習得に重点を置いて活動していくことを本人と保護者の方と一緒に決めました。50分間の学習活動のうち20分~30分は、ひらがなの読み書き支援に割きました。
ひらがなの読み書き支援を始めてしばらくの間は、彼女をほめるとまるでそれを打ち消すかのように、「でもね、お友だちにはバカにされちゃうんだよ。テストでバツばっかりだから。それが、くやしいんだよ。」とよくこぼしていました。

そんな彼女でしたが、漢字の読みを確認すると、口頭であれば学年相応のものも正確に読むことができていました。教科書の物語文も1回通して読めば物語の内容を理解し、2回目以降は登場人物の心情もふまえて、台詞部分の声色を変えて読んだりもしていました。

こうした「物語を読むのが楽しい!」という思いが伝わってくるような彼女の姿をみるにつけ、まずは彼女のひらがなの読み書きの課題を解消したいと強く思いました。そうすればできることは増えるだろうし、なによりも自信を取り戻してもらえるのではないかと考えたからです。

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気にかけてほしい子どもの読み書きの状況
子どもの学習について考えるときに、真っ先に気にかけてほしいことがあります。それは、そのお子さんのひらがなの読み書きの状況です。

なぜなら、現代の学校で「理解しているよ」「覚えているよ」「わかっているよ」ということを子ども自身が表現しようとしたときに、必ず求められるのが「ひらがなの読み書き」の力だからです。

問題文が正確に読めていなければ何を答えたら良いのかが分からず、本当は答えがわかるはずの問題でもテストに答えることはできません。また、答えを正確に書いて表現できなければ誤答となってしまい、やはり正解にはなりません。

彼女のことを例に話すと、「人形」や「日光」を声に出して読んでもらうと、「にんぎょう」「にっこう」と正しく読むことができていました。しかし、漢字の読みテストの解答欄には「にんぎう」「にこう」と書いてしまうので、バツになってしまうのです。
そして周囲からは、「わかっていない」という評価をされてしまうのです。本当は、読めていたとしても。
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「正しく読めること」が周囲に伝わる喜び
さて、10カ月間のひらがなの読み書き支援を実施し、彼女は「心の中の言葉」を書いて表現できるようになりました。
彼女自身も、支援を受けていく中で、確信をもって読める音が増えていること、また、自分が書きたいと思っている言葉が、相手に伝わるように正しく書けるようになってきていることを実感しているようでした。それは、彼女が書く文字の大きさや、丁寧さにも現れていました。
その結果、とうとう学校の漢字の読みテストで100点をとることができたのです。

これまでも漢字は十分に読めていました。ただ、正しく表記できないことで、バツになってしまっていたのです。そんなわけで、彼女の喜びは、100点がとれたということよりも、学校の先生やお友だちに「私は漢字を正しく読むことができている」ということが伝わったということでした。
そして、その喜びをかみしめるようにして、報告をしてくれたのです。「先生、100点だったよ」と。それは、静かだけれど自信に満ちた、喜びの報告でした。

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NPO法人ダイバーシティ工房では、ひらがなの読み書きが不安なお子さまならどなたでも通える「ひらがな読み書き教室」を2020年10月より新たにスタートします。また、スタートにさきがけて9月、10月に「保護者向け無料勉強会」を開催いたします。お子さまの発達に合わせた学習やサポート方法について、ぜひ一緒に学んでみませんか?
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文責:石川恵子

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児童発達支援管理責任者/社会福祉士/キャリアカウンセラー。
若者の社会復帰を支えるNPO職員、学童クラブ指導員などを経て、現在NPO法人ダイバーシティ工房が運営する「スタジオplus+」本八幡教室の教室長。発達障害や不登校など「学校生活に特別なニーズがある子どもたち」を対象にした学習支援を行う。


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