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連想ネットワーク(演習解説)『才能をひらく編集工学』【無料公開#24】

8月28日発売の『才能をひらく編集工学』より、本文の一部を無料公開します。「編集工学」とはなにか、「編集工学」におけるものの見方・考え方を知ることができる第1章「編集工学とは?」と第2章「世界と自分を結びなおすアプローチ」、第3章「才能をひらく「編集思考」10のメソッド」より一部公開予定です。今回は第3章メソッド02「情報の周辺を照らす 連想ネットワーク」より一部を公開いたします。今回は昨日の演習の解説です。ぜひ演習に取り組んでから読んでみてください。

演習2 連想ネットワーク 解説

まず、演習1の「あなたの部屋の好きなもの」を選びとるところで、最初の「好きなものフィルター」がかかりました。

そこからさらに「一番のお気に入り」を選び出す際に、再度フィルターが用いられます。

サーチライトのフォーカスを緩めたり絞ったりしながら、特定の情報に焦点をあてたり、その可能性を広げたりといったことを、日常の中でも頻繁に行っています。

そうして選び出したひとつのものから、一気に連想を広げていただきました。

この時にも、「何を連想するか」というところでアテンションとフィルターが動いたことを感じたでしょうか?

いま私の目の前には「有田焼のマグカップ」があるのですが、ここから連想を広げてみます。

[買った場所]を思い浮かべたり、中に入れる[飲み物]に注目したり、あるいは他にお気に入りの[有田焼]の食器を思い浮かべたり、このカップで[一緒にコーヒーを飲んだ人]との思い出も蘇ってきます。

[ ]内がフィルターにあたるものです。

それらにアテンションを向けながら、ひとつひとつ言葉にして拾い集めていく演習をしていただきました。

このように、ひとつの情報にはさまざまな切り口があります。

その切り口を意図的に切り替えていくことで、さまざまな角度から情報を眺めることができるのです。

ここでは、そのためのちょっとしたコツをご紹介しておきましょう。

「助詞を変えてみる」という方法です。「マグカップ[が]……、」「マグカップ[の]……、」「マグカップ[を]……、」といった形で、情報にくっつく助詞を変えてみると、そのあとについてくる情報の景色が変わっていくのがわかりますか? 

助詞(が、の、を、に、へ、と、より、から、で、や、など)が磁石となって、次にくっつく情報を連れてくるのです。

言葉によって吸着される情報の性質を利用することで、多様な連想情報をどんどん集めていくことができます。

ちょっとしたTIPSですが、視点の切り替えになかなか有効です。他のものでもぜひ試してみてください。

スクリーンが切り替わるように思い浮かぶものが変わっていくことを楽しめたら、思考がほぐれてきたしるしです。

第2章アプローチ02からのヒント

イノベーションとは、0から1を生み出すものとは限りません。

多くの場合、既存の知識や事象の組み合わせによって導かれるものです。

異なる情報に対角線を引く力が、新しいものを生み出します。

情報と情報の間に関係線を見つけるには、それぞれの情報の食指をなるべく豊富に持っておくことが肝要です。

「イノベーション体質」になるには「関係発見体質」になるべきで、そのためにはまず「連想体質」である必要があります。

情報の「まわり」に潜在する連想ネットワークやシソーラスをいつでも取り出せる状態にしておくことで、物事の関連性がぐっと見つかりやすくなります。

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生命の編集プロセスがそうであるように、必ずしも最初から完璧な設計図のもとに情報を組み立てることを目指す必要はありません。

むしろ、編集の可能性は、偶然や想定外にこそ潜んでいます。

「ブリコラージュ」(ありあわせのものを組み合わせて何かを創り出す、状況を切り抜ける方法)によって、多様な働きや意味や価値を創り出す。

「連想」を自在に操れるということは、ブリコラージュの幅を広げることでもあります。

カイヨワの言う「対角線の科学」は、すでに分類されて固定されてしまった世の中の情報を、まったく新しい目で捉え直すという方法です(無料公開#11)。

時に自由な見方を妨げる固定観念も、異質な視点を持ち込んで対角線を引くことで、揺さぶっていくことができます。

そのためにはまず、いつでもたくさんの切り口を持ち出せるようにしておくべきなのです。


著者プロフィール

安藤昭子(あんどうあきこ)

編集工学研究所・専務取締役。出版社で書籍編集や事業開発に従事した後、「イシス編集学校」にて松岡正剛に師事、「編集」の意味を大幅に捉え直す。これがきっかけとなり、2010年に編集工学研究所に入社。企業の人材開発や理念・ヴィジョン設計、教育プログラム開発や大学図書館改編など、多領域にわたる課題解決や価値創造の方法を「編集工学」を用いて開発・支援している。2020年には「編集工学」に基づく読書メソッド「探究型読書」を開発し、共創型組織開発支援プログラム「Quest Link」のコアメソッドとして企業や学校に展開中。次世代リーダー育成塾「Hyper-Editing Platform[AIDA]」プロデューサー。共著に『探究型読書』(クロスメディア・パブリッシング、2020)など。

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