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アナロジーの構造『才能をひらく編集工学』【無料公開#17】

8月28日発売の『才能をひらく編集工学』より、本文の一部を無料公開します。「編集工学」とはなにか、「編集工学」におけるものの見方・考え方を知ることができる第1章「編集工学とは?」と第2章「世界と自分を結びなおすアプローチ」、第3章「才能をひらく「編集思考」10のメソッド」より一部公開予定です。今回は第2章アプローチ04より一部を公開いたします。

似てる→借りる→当てはめる アナロジーの構造

アナロジーが動くところでは何が起こっているのでしょうか。分節化すると、大きく3つのステップで考えられます。

1.何かと何かが「似ている」と思う
2.(似ているものの構造を)「借りてくる」
3.(借りてきた構造を)「当てはめる」

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似ているものを、借りてきて、当てはめる。

まず、何かと何かが似ていると気がつくことです。

アナロジカル・シンキングに強くなるには、「これって、あれみたいだな」と思うことを、常に歓迎すること。

「関係発見力」がものを言います。

見た目が似ていたり印象が似ていることもあれば、物事の関係性や話のなりゆきなど、情報の構造が似ていることもあるでしょう。

アナロジーはおもに「構造の類似」を推し量ることにあります。

その上で、似ているものの構造の何かしらを借りてきます。

特に科学におけるアナロジーを成立させる重要な性質として、言語学者の瀬戸賢一さん(1951- )は、以下の3点をあげています。

1.関係性
2.選択性
3.単一性

関係性

「関係性」は、たとえるものとたとえられるものの類似性が、その関係のみに関わるということです。

電気における電池と電流は、水における池(溜まっている状態)と水流(流れている状態)の関係を借りてきている表現です。

選択性

「選択性」は、双方の特質すべてが関係づけられるものではなく、たとえば「男は狼」といえば、毛むくじゃらとか牙があるといったことを問題にしているのでないことは、ある程度の常識を共有していればわかります。

数ある特徴の中から、わたしたちはアナロジーにふさわしいものだけを選択できるのです。

単一性

「単一性」は、たとえるものを複数にしないということです。

「AをもってBとみなす」のであれば、そこにCやDの他の系列の特徴は入れない。「電池」というふうに水の貯蔵のメタファーで行くのであれば、そこから出るものに植物や動物や光や空気のメタファー等を持ち込まず、同じく水の特徴から借りて「電流」としたほうが、論理の統一が保てるということです。

これは主に、科学的なアナロジーにおいて重視されることです。(瀬戸賢一『メタファー思考 意味と認識のしくみ』講談社現代新書 1995年)

最後に、借りてきたものを、未知のものに当てはめます。

こうして、「語り得ないもの」を「語り得るもの」に変換する努力をしながら、未知なるものを理解したり、説明したり、発想したりしているわけです。

ミニ演習04
▼「じゃんけん」は石と紙とハサミのアナロジーですね。身の回りにあるアナロジーを探してみてください。無自覚なままに使っているアナロジーがたくさんあるはずです。


著者プロフィール

安藤昭子(あんどうあきこ)

編集工学研究所・専務取締役。出版社で書籍編集や事業開発に従事した後、「イシス編集学校」にて松岡正剛に師事、「編集」の意味を大幅に捉え直す。これがきっかけとなり、2010年に編集工学研究所に入社。企業の人材開発や理念・ヴィジョン設計、教育プログラム開発や大学図書館改編など、多領域にわたる課題解決や価値創造の方法を「編集工学」を用いて開発・支援している。2020年には「編集工学」に基づく読書メソッド「探究型読書」を開発し、共創型組織開発支援プログラム「Quest Link」のコアメソッドとして企業や学校に展開中。次世代リーダー育成塾「Hyper-Editing Platform[AIDA]」プロデューサー。共著に『探究型読書』(クロスメディア・パブリッシング、2020)など。

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