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【お知らせ】『その名はカフカ』が紙の本になりました

「どういうこと?本にはしないって言ってたのに、話が違うじゃない」
「常にあらゆる状況を想定しておかなければならない、と君に注意したのはつい最近のことだと思ったんだが。僕は端からあの東洋人の工作員は信用していなかった。考えをすぐに変えるからね」

と、いうことでっ!
いや、何が「と、いうことで」なのか自分でもよく分かっていませんが、昨年一月からnoteで連載を続けて今現在第三部まで存在している長編小説『その名はカフカ』、紙媒体の本になって誕生いたしました。

じゃじゃん。

本記事では「何をどうしたらこんなものを作ることになっちゃうのか」、「実際どうやって作っていったのか」、「どこで誰に売るつもりなん?」、といったことを中心に「『その名はカフカ』書籍化」について書き綴っていこうかと思います。
お付き合いただける方がいらっしゃれば幸いです。


本にはしないって言ってたのに

はい、「電子書籍にも紙の本にもしない」って宣言したのはつい一ヶ月前のことです。

昨年12月8日の投稿ですね(チェコでは7日の夜でしたが)。
忘れもしません、その二日後の10日のことです。とき子さんから、もの凄いLINEが届いたのは。
とき子さんが「特許取りたいから言わないで!」とおっしゃるかもしれないので、どのような手段だったのかの詳細は記述しませんが、とにかく「オンラインでカフカの第三部を年内に読み切れる気がしないから」ということですごい工夫を凝らして私の小説を読んでくださろうとしていらっしゃり、「ここまでして読んでくれるのか~」と私、感動してしまったのです。

そして、決めたのです。
「本、作ろう」と。

前出の「長めの独り言」では、「お話の内容(国際情勢だとかそういったこと)から言って、いろいろイチャモンつけてくる人がいそうだからnoteの外に出すのはやめておく」と言っていたのですが、改めて考えてみて、「電子本ならまだしも、自費出版で紙の本にしたところで全然関係ないところから『キミの言っていることはおかしい』なんて文句つけてくる人が現れる可能性は非常に低い」という結論に達し、私はもう怖いものなしとばかりに「本を作る」ほうへ突っ走り始めました。

(……この記事をお読みになったとき子さんが「私のせいかよ……」と重く感じていない事だけを祈ります。笑)

noteから原稿になるまで

実は八月に第二部Kontrapunktを書き終えた時点では「本にするかも?」という可能性は考えていて、最初の短編からすべてnoteからWordにコピペして縦書きにして、夏の間に二回ほど校正していました。前項に書いたような「この小説を本にしたらヤバいよね」という思いが大きくなったのは十月半ばで、その頃校正もストップして放ったらかしていました。

12月10日、いきなりモリモリやる気を出して三度目の校正を開始(そう言えば私、この時熱を出していたんですよねえ。まさかその結果として、この本……?)、そして14日には橘鶫さんにあとがきを依頼。

え、今、何と?

もう一回言いましょうか?

橘鶫さんにあとがきを依頼。

何たる図々しいって声が聞こえてきますよ。でも他の方に頼むって、その時の私には考えられなかったのです。連載中欠かさずコメントをくださり、この作品に対する理解は作者の次に深いであろう(もしかすると作者が気が付いていないところにも気が付いていらっしゃる)長編小説連載の大先輩、鶫さん。
依頼した時には「一月中旬までにいただければ」なんて言っていたのですが、さすが鶫さん、大空を突っ切るイヌワシの如くクリスマスに原稿を送ってくださいました。

そうして昨年のクリスマス明けには、本にする原稿が揃ってしまったのです。

「逆開きの本」は果たして理解されるのか

原稿は完成し、挿絵も描き、表紙も描き、題字も書き……そんなことをしながら年の瀬も迫ってきました。
「本を作る」と決めてから、一番心配していたのが「表から見て背表紙が右側にある本を印刷してくれる印刷会社は果たしてチェコに存在するのか」ということ。
インドヨーロッパ語族スラヴ語派アルファベット表記のチェコ語はもちろん左から右への横書き一辺倒の表記文化です。つまりこの国ではほぼ100%左綴じの本しか印刷されていないわけです。そんな国で、果たして縦書きで右綴じの本を出したいんだけど、と言って理解してくれるだろうか……。

しかし、相手だってプロ。説明すれば、分かってくれるんじゃないか。
そう思った私がネットで探した「個人の本も刷りますよ」と言っている印刷屋さんの中で選ぶ基準は「安さ」や「質」よりも、面倒くさい特殊な注文にも応えてくれそうな「プロっぽさ」。

ネットをふらふらしているうちに「ここなんじゃないか」と思うような印刷屋さんを発見。それから数日間はそのお店のサイトをじ~っと眺めてウズウズしていたのですが「これ以上待っておられん」と思い、すぐには返事をもらえないことは分かっていましたが、大晦日31日、質問フォームに「逆から開く本、印刷してくれますか?」と書き込んで送ってしまいました。

もちろんこちらも1月1日は祝日ですが、2日からは平日、世間は普段通り機能します。そして2日の午前中にいただいたお返事は
「できますよ」
でした。

そこからは超特急で紙を選んで出来上がりの本の厚さを聞いてカバーを作り入稿。それが1月4日の話。
そして一週間後の1月11日、届いたのです、『その名はカフカ 1』100部が。

6部ずつのパックになって届きました。100部刷ったので、全部でこの写真の五倍近くあります。

先日「私が小説を書いているのはnote内での秘密で、現実世界では一切誰にも話していない」と書きましたが、12月に熱心にWordばっかりいじっていたら、さすがに「何やってんの?」とパートナーに聞かれたので、一応は伝えてありました。そうでなかったら、いきなりこんな荷物が家に届いてちょっとパニックになってたかもしれません。笑(ちなみにパートナーの日本語力は拙カフカをスルスル読めるほどには高くないので、小説の内容はバレていません……一体私は何をそんなに怖れているのだろう。笑)

とき子さんのLINEで感動してから本が家に届くまでにかかった時間は、なんと僅か一ヶ月と一日でした。

どんな本にしたのか

具体的にどんな本に仕上がったのかも書いておきたいと思います。

大きさはA5(148 x 210 mm)で、厚さは16,5 mm、ページ数は318ページ。
収録されているのは長編を書き始めるきっかけとなった短編「その名はカフカ」、第一部Preludium、第二部Kontrapunkt、番外編「カフカを広げて図書館、秋初め」です。

つまり、noteで全部読めるってこと?

ま、それはそうなんですが。
読み返して「この日本語、ないわ~」と思うようなところは全部直しました。それから「ここでこのキャラがこれを言うと、ちょっとつじつまが合わないんじゃない?」というような箇所がいくつかありまして、そういったところも書き換えてあります。あと、連載中は登場人物の外見の描写をあまりに挿絵に頼りすぎて怠っていたため、主要人物に関してはある程度書き加えました。

noteに存在しなくて本でしか見られないのは、筆者あとがき、鶫さんによる作品解説、そして挿絵。
挿絵は全部で六枚です。318ページに対して六枚。KaoRuが出す本だったら、もっと絵が入ってそうなのに、と思われましたでしょうか。
ここで、私が「小説の本を出すことで何がしたかったのか」が大事になってきます。私がこの本でしたかったのは、自分が小説の本として理想だなと思うものを作ること。「大人向けの小説で挿絵がふんだんな本」は、私が欲しいものでも理想とするものでもありません。挿絵によって登場人物の外見を固定し、読者の想像の邪魔をするような本は作りたくなかった。だから今回新たに本のために描いた絵も、登場人物は含まれません。

noteで無料で読める小説を紙の本で出す。
これは本当に、私と同じように紙の本が好きで、私の小説に「お金を出して紙という媒体で所有する価値」を見出してくださる方にしか意味のない行為なのです。ですから、「せっかく小説を書いたんだから、これで一儲けしようぜ」なんて思ったわけじゃ全然ないんです。ただ、自分が書いたものを自分が好きな形で存在させてみたかった。どうして作ったのかと問われても、このくらいしか説明のしようがありません。

ふっ、ここで「いかに私の作った本はお金を出す価値があるのか」という宣伝ができればいいのですが……私に言えるのは「えへ、趣味の本作っちゃっいましたよ、もし興味があったらお手に取ってみてくださいな」程度のことなのであります。

六枚の挿絵の内の一枚。挿絵はすべてペン画です。


どこでどうやって売るの?

【2024年2月27日改稿】
本記事公開時点では「主な販路はこちらになります」とご案内したにもかかわらず、その後右往左往したネットショップ開設(詳しくはこちら)。ショップが復帰した後は暫く開店していたのですが、いろいろ考えた末、GoogleFormsでご注文を受付け、お支払いは基本的にPayPalでお願いする、という形態に統一することにしました。

ご注文フォームです。


最後に価格設定に関してですが、こちらはあまり迷いませんでした。
本を手にして「これは400コルナ以下では売りたくないな」と思い、現在17ユーロが400チェココルナともう少し、くらいなので上記のお店では17ユーロ設定としました。現在、約2700円のようです……円安ですね。
(自費出版の価格設定に関してはつる・るるるさんが素敵な記事を書かれています。)


長くなりました、既に4000字超えております。
「『その名はカフカ』が本になりました報告書」は以上です。


『Dosáhnu, konečně』 21 x 30 cm アクリル


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