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サーキュラーエコノミーの市場規模と将来性|スタートアップ/上場企業が語る、事業のリアルとこれから|イベントレポートvol1

この数年でサーキュラーエコノミー(CE)という言葉が広がり、産業界でもスタートアップから大手まで多くの企業が自社の取り組みを拡大させる動きを見せています。今回は、サーキュラーエコノミー特化メディア「Circular Economy Hub」を運営する株式会社ハーチ、アーキタイプベンチャーズが主催し、サーキュラーエコノミーの先進企業(スタートアップ・上場企業)4社が登壇したイベントの内容を紹介します。

この記事は、2022年12月5日に開催された「サーキュラーエコノミースタートアップ/上場企業が語る、事業のリアルとこれから」の公式イベントレポート(前編)です。本イベントレポートは、株式会社digglueが制作し、各社の許可を得て掲載しております。本レポートに関するお問い合わせはこちらまでご連絡くださいませ。​(文責:株式会社digglue 濵田智子)

イベントの開催について知りたい方はこちらをご覧ください。

イベントの様子

「サーキュラーエコノミー事業を語る」に向けて|イベント主催CEhub那須さん

今回のイベントの目的とは

那須)本日はお集まりいただきましてありがとうございます!本日は会場にもオンラインでもたくさんのご参加者の方にお集まりいただいております。私は本日の司会を務めます、Circular Economy Hubの那須と申します。

まずは、本日のイベントを主催するCircular Economy Hub(CEhub)について紹介させていただきます。CEhubは、2020年3月に設立し、サーキュラーエコノミーに特化した情報発信、イベントやワークショップの開催、企業・自治体のサーキュラーエコノミー活動の支援を行ってきました。

情報発信としては、ニュース、インサイトの記事をメディア掲載しているほか、Podcastなども発信しています。ぜひサーキュラーエコノミーに関する情報収集にお役立ていただければと思います。また、サーキュラーエコノミーの協働・共創の場を作っていくべく、コミュニティも運営しています。

那須)さて、本日のイベントの内容に入る前に、本日の主旨をお話しします。今日のイベントは、

  • CEスタートアップ・上場企業の概況を知る

  • CEの可能性を考える

  • 応用編:CEスタートアップ・上場企業への転職・参入・協業を考える

という3つをテーマにして進めてまいります。

サーキュラーエコノミーを実現していくために先陣を切って活動展開されている企業の実態を聞いていく場となります。また、事前のアンケートでも、CE企業への転職や協業、自社もCE事業に参入することを検討されている方が多くご参加いただいているというお答えをいただいていますので、ぜひ今日の内容が、皆様にとって今後を考えていく上での何らかのヒントになればと思っています。

サーキュラーエコノミーを理解するために

那須)ここで本日のイベントを理解する一つの視点として、経産省・環境省から出された「「サーキュラー・エコノミーに係るサステナブル・ファイナンス促進のための開示・対話ガイダンス」」を紹介したいと思います。これは2021年1月に出されたもので、投資家と企業が、サーキュラーエコノミーへ向けた取り組みについてどのような対話・開示をしていけば良いのかを示したガイドラインです。

那須)着眼すべき項目が6つにまとめられています。このうち「リスクと機会」「戦略」「指標と目標」「ガバナンス」については、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)を踏襲したものですが、サーキュラーエコノミーに特化した今回のガイドラインには「価値観」「ビジネスモデル」が加わっており、これが一つの着目ポイントかなと思います。

💡TCFDとは
TCFDとは、金融安定理事会(FSB)が2015年に設立した、民間主導の「気候関連財務情報開示タスクフォース」のこと。気候変動が世界経済にリスクを与えていることに伴い、金融市場が気候変動の影響に関する包括的で質の高い情報を必要としていることから、気候関連の財務情報の報告を促すために設立された。 https://cehub.jp/glossary/tcfd/

特に価値観については、一部の部署のみで実践されているというよりも、サーキュラーエコノミーが企業の中核に据えられているか、こういった点を投資家は見ていく必要性を示しています。これらは、投資家が中長期的な目線で企業を評価していくベースラインにもなり、サーキュラーエコノミーを推進していくポイントでもあるわけです。今日もおそらく、特に「価値観」はピッチの中でふんだんに出てくるのではないかと思います。

それでは、最初のプレゼンに入っていきましょう。VCの北原さんにお話を伺います。

サーキュラーエコノミーのマーケットを概観する|アーキタイプベンチャーズ北原さん

サーキュラーエコノミーはなぜ必要なのか?

北原)アーキタイプベンチャーズでパートナーをしております北原と申します。アーキタイプベンチャーズは2013年に設立したVC(ベンチャーキャピタル)です。投資の対象としてはBtoB Techで、スタートアップのアーリーステージ(シードプラスのフェーズ)に特化しています。1号ファンド10億円、2号ファンド60億円を運用し、1号はAI系スタートアップ、2号はBtoB SaaSをメインに投資してきました。

私のキャリアとしては、総務省からボストンコンサルティングへ転職し、その後2019年にアーキタイプベンチャーズに参画いたしました。サーキュラーエコノミー、サステナビリティ、Climate Techを対象に投資しています。

さて、ここからはサーキュラーエコノミーの話です。
100ギガトン。まずはこの数字、どういうものかお分かりでしょうか?これは、世界の”年間資源投入量”です。東京ドームの2500万個分。

8ギガトン。ではこちらの数字はいかがでしょう?こちらは先ほどの100ギガトンのうち、循環して活用されている資源の量です。つまり全体の8%が資源循環している。100ギガトンも投入して、たったの8ギガトン・・・。

ここに大きなサーキュラーギャップがあることがお分かりいただけると思います。これは世界の数字。では日本の場合はどうかと言いますと、日本の資源循環は投入量のうち15.7%です。

こういった生活を続けていった先に何が待っているでしょうか。それを表したのがこの「Earth Overshoot Day」という図です。人間の資源消費がこのまま進んでいった時に地球何個分が必要になるのかという図。これが、実は今年7月28日には、年間の資源消費分を使い果たしてしまっているんですね。

それを、全世界が日本と同じような生活をしていったと仮定した時に「いつまで」持つのかという計算もあります。その場合には5月6日までにOvershootしてしまうのです。

これは資源消費の話ですが、今話題になっているCO2排出量の観点を見ていきますと、資源消費・製品製造から出るCO2排出量は、1995年時点で全体の15%、2015年時点では23%となりました。「モノ」に関わるCO2排出量を別の観点でまとめたものには、全体の45%にのぼるというデータもあります。いずれにしても資源消費によって、地球環境に対してはCO2の観点からも影響を及ぼしているのです。

世界に広がるサーキュラーエコノミーの潮流とは

そのような現状を受けて、世界でもサーキュラーエコノミーを実現していこうとする流れが強まってきています。分かりやすい事例がこのエレン・マッカーサー財団が打ち出している「バタフライダイアグラム」です。日本でも「リデュース・リユース・リサイクル」の3Rの考え方は広まってきていますが、さらにその先に向かっているんです。

これは資源循環のあるべき姿を視覚化しているもので、左側に再生可能な資源、右側に石炭などの枯渇性の資源となっていて、それが上から下に向かって、どのように消費され、最後廃棄されずにどのように循環していけば良いのかを概念的に示しているんです。

できるだけこのサイクルを小さくしていく、ということがここでのポイントになります。最終製品にまでなったものをあらためて材料や資源に戻して再利用するには、大きなエネルギーがかかってしまうからです。

なので、第一にはできる限り同じ状態で使いきることが求められる。とはいえ資源はだんだんと劣化していきますから、だんだんと下に落ちていく。落ちていくんだけれども、最後にマテリアルリサイクルなどでしっかりと拾えるようにしていく、というのが示されている図なんです。

サーキュラーエコノミーの市場規模

そうした世の中の変化も受けて、このサーキュラーエコノミーの市場というのは注目を集めています。

経済産業省が進めている「成長志向型の資源自律経済デザイン研究会」からの資料ですが、経済規模は4.5兆ドル、2050年には25兆ドル日本だけでも80兆円と言われています。グローバルに見ると新たなプレーヤーが出てきています。

例えばLanzaTechというアメリカのスタートアップ企業です。微生物による生合成技術・ガス発酵技術・触媒技術を持ち、ライセンシングを行って事業展開しています。日本との関わりでいうと、2014年に三井物産から出資を受け、積水化学、ブリヂストン、住友理工などとの取引実績があり、ゴミや使用済みタイヤ、各種ゴムやウレタンなどの資源を循環させていく取り組みが進んでいます。そして、もうすぐユニコーンの仲間入りするのではと見込まれています。

日本のサーキュラーエコノミーのプレーヤーとは?

グローバルのマーケットマップを日本に置き換えた時にもさまざまなプレーヤーがいます。

こちらの図は、左上から右下に流れるように見ていただき、マテリアル(素材)にまつわるプレーヤー【Susteinable Material】、それを利用してどのように製造し【Sustainable Manufacturing】どう消費者に届け・購買され【Sustainable Delivery/ Purchase】、最後にその資源をどのように回収し、リサイクル・アップサイクルして資源に戻していくか【Resource Recovery】と。さらに、それは物質の世界の観点ですが、ここにどのようにソフトウェアを絡め、効率的にしていくかという観点があります。これが全体を支えるシステム面で、トラッキングやトレーサビリティがあり【Tracking/ Traceability】、消費者の行動変容【Consumer Behavior】があります。

今日登壇されるスタートアップの皆様も、この図で見ていっても本当に多岐にわたります。では、私の話はここまでとさせていただき、次はスタートアップピッチにバトンをお渡ししたいと思います。

サーキュラーエコノミーのプレーヤーとして|登壇企業の紹介

那須)ここからは、サーキュラーエコノミー事業会社4社の企業ピッチをお聞きいただきます。こちらが今日登壇する4社です。それでは順にお願いいたします。

ここから先はイベントレポート中編でご覧ください。

この記事は、2022年12月5日に開催された「サーキュラーエコノミースタートアップ/上場企業が語る、事業のリアルとこれから」の公式イベントレポート(前編)です。本イベントレポートは、株式会社digglueが制作し、各社の許可を得て掲載しております。本レポートに関するお問い合わせはこちらまでご連絡くださいませ。​(文責:株式会社digglue 濵田智子)

今回登壇・レポートを担当しましたdigglueでは、サーキュラーエコノミーをテーマとしたイベントを定期的に開催しています。Peatixのグループをフォローしていただくと最新イベントの情報をお送りします!ぜひフォローしてください。(こちらから▶︎


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