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サーキュラーエコノミーを持続可能なビジネスで支えていくには?|スタートアップ/上場企業が語る、事業のリアルとこれから|イベントレポートvol3

この数年でサーキュラーエコノミー(CE)という言葉が広がりを見せ、産業界でもスタートアップから大手まで多くの企業が自社の取り組みを拡大させる動きを見せています。今回は、サーキュラーエコノミー特化メディア「Circular Economy Hub」を運営する株式会社ハーチ、アーキタイプベンチャーズが主催し、サーキュラーエコノミーの先進企業(スタートアップ・上場企業)4社が登壇したイベントの内容を紹介します。

この記事は、2022年12月5日に開催された「サーキュラーエコノミースタートアップ/上場企業が語る、事業のリアルとこれから」の公式イベントレポート(後編)です。本イベントレポートは、株式会社digglueが制作し、各社の許可を得て掲載しております。本レポートに関するお問い合わせはこちらまでご連絡くださいませ。​(文責:株式会社digglue 濵田智子)

イベントの開催について知りたい方はこちらをご覧ください。

「【12月5日ハイブリッド開催】サーキュラーエコノミースタートアップ/上場企業が語る、事業のリアルとこれから」

イベントレポート前編の内容は▶︎

1. 「サーキュラーエコノミー事業を語る」に向けて
|イベント主催CEhub那須さん
今回のイベントの目的とは/サーキュラーエコノミーを理解するために

【Tips】経産省・環境省「「サーキュラー・エコノミーに係るサステナブル・ファイナンス促進のための開示・対話ガイダンス」」を解説📝

2. サーキュラーエコノミーのマーケットを概観する
|アーキタイプベンチャーズ北原さん

サーキュラーエコノミーはなぜ必要なのか?/世界に広がるサーキュラーエコノミーの潮流とは/サーキュラーエコノミーの市場規模/日本のサーキュラーエコノミーのプレイヤーとは?

【Tips】世界のサーキュラーエコノミーの潮流と、サーキュラーエコノミーのスタートアップのカオスマップを公開!カオスマップの見方の解説も📝

イベントレポート中編の内容は▶︎ 

サーキュラーエコノミーのプレーヤーとして|登壇企業の紹介

📝資源循環をコーディネートする|株式会社TBM
プラスチック、紙の代替素材として使われる環境配慮素材「LIMEX」
- 資源循環をコーディネートするサービス「MaaR(マール)」

📝循環型社会実現のためのデジタルインフラを目指す|株式会社CBA
廃棄物処理DXプラットフォーム「CBA-wellfest」
- 環境業界全体のビッグデータベースを目指すCBAの今後

📝テクノロジーの力で持続可能な世界を実装する|株式会社digglue
サーキュラーエコノミーDXの「MateRe(マテリ)」
- 欧州最先端のDPPに対応したトレーサビリティをカバーする

📝創業95年のエネルギー企業が挑む|シナネンホールディングス
脱炭素×コミュニティがテーマのシェアオフィス「seesaw」
- 課題解決型のコミュニティを目指して

Q&Aタイム

那須)ではここからは、オンライン会場からいただいた質問に答えていきたいと思います。先ほどプレゼンがありました各企業に向けての質問と、全体へ向けての質問をいただいていますので、お答えしていきたいと思います。


LIMEX・MaaRについて|株式会社TBM

Q)使用済みLIMEXは、ペットボトルなどのように再資源化もできる素材ですか?

大場)はい、LIMEXはリサイクル可能な素材です。単体ではもちろんですし、分別された状態であることが望ましいですが、他の素材と多少混じっていても当社のリサイクル工場にて、センサーを利用して分別を行い、リサイクルしていくことができます。一方で課題もあり、LIMEXの市場への普及とともに回収スキームを構築していくことが必要です。

Q)サブスクリプションサービスは具体的にどのようなサービスですか?

大場)「MaaR(マール) for business」についてですね。月額1万円から、3つのサービスをパッケージにしてご提供しています。特定のLIMEXやプラスチック素材の製品を集めていただき、それを回収していくというのが一つ。環境配慮型素材のLIMEXおよび資源循環から生まれた製品をご提供するのが一つ。さらに、四半期に一度、環境教育関連の資料をお送りする、といった内容です。

Q)自社での回収網は、スケールアップしていく上でどのような課題がありますか?

大場)スケールアップすることによって課題が解決する、という方が大きいと思っています。物流の課題としては、やはり回収の量や効率性です。スケールアップして物流網を作るまでの過程で、そのギャップをいかに埋めていくかに課題があると考えています。


これからのCBA-wellfest・信用について|株式会社CBA

Q)廃棄物処理DXについて、金属やプラスチックなど、扱う廃棄物の種類は決まっていますか?

宇佐見)いいえ、決まっていません。導入の方法として、企業の廃棄物担当者の方と一緒に、できるところから資源化を進めていきます。ですから、先に我々として廃棄物の中で取扱種類を決めているわけではないんです。「できるところから」というのは、地域によって排出される廃棄物の種類など様々なので、一概に何をやるかは決められないんです。

Q)排出物や排出事業者との間で、再生利用する際に品質に関する信用や信頼はどのように扱っていますか。

宇佐見)現状としては、出来た再生品を使える所に利用いただく事からスタートしているので、現状品質が問題になるということはあまりありません。ですが今後拡大していく上でも、処理業者や排出事業者との協力を広げ、より精度の高い回収や分別を行い、より品質が高い再生品を製造できるようにしていきたいと思っています。地道な、地に足をつけた活動ではありますが、しっかりと推進して行ければと思っています。


seesawからはじまった琵琶湖水草プロジェクトについて|シナネンホールディングス

Q)亜臨界水処理のプロジェクトについて、琵琶湖の水草が大量に繁茂した原因は、地球温暖化ですか?

池谷)まさにその通りです。地球温暖化が原因となり、この数年で急激に水草の繁茂が発生するようになりました。その解決策として、私たちのピッチの時間にご紹介しました亜臨界水処理技術の活用を提案して、採択されました。


資源循環サプライチェーンの協業と競争|株式会社digglue

Q)循環サプライチェーンを有機的に機能させるための、DXによる情報のシェアや物理的なモノの移動を企業間・プロセス間で連携する動きがありますか?

原)はい、あると思います。この再生工程をつなぐプロセスの中で、大きな課題となるのがロジコストで、これは少し紹介したい部分なんです。

プラスチックの例ですが、排出された資源を回収し、そのまま輸送するよりも、いったん破砕し減容してから運んだ方がコストダウンとなります。10トントラックの中身を考えればわかりますよね。使用済みの製品やプラスチックよりも、破砕し、粉々にした状態で載せた方が空間を広く使え、たくさんの量をいっぺんに運ぶこともできます。となってくると、重要なのは破砕業者との連携です。

それから宇佐見さんもおっしゃっていた「共同配送」も一つの大きな解決策になってくると思っています。弊社も大手企業とのプロジェクトをいくつか行っていますが、その中で感じるのは、多くの企業が実は、「競争領域」と「協働領域」とを分けて考えておられるということです。そして廃棄や再資源化、サステナブル領域というのは「協働領域」と捉えられていることが多いんですね。

工場が多い地域というのは、周囲に複数のメーカーや企業が工場を建設している傾向がありますので、互いに競合どうしとなる一方で、担当者レベルで話して「これとこれは一緒に運べる」といった話をすることもあるそうです。ですが、実際には話はなかなか進まない。なぜなのか。やはり普段互いに「競争領域」で競争し、意識し合っている企業同士。さらにはお互いに大手企業の大きな組織の中にいる、そんな現実が立ちはだかるわけです。

そんな中で、全体を引っ張っていけるようなプレーヤーが出てこられるかというと、難しいのです。逆にそこは、私たち独立系スタートアップの果たすべき役割なのかもしれないですし、業界全体を変えていく意思を持って進めていくべきなんだろうなと思っています。


市場におけるサーキュラーエコノミーの取り組み評価|アーキタイプベンチャーズ

Q)上場銘柄のサーキュラーエコノミー関連の取り組みに関する評価は、現状はまだ実績ベースの評価がメインであるものの、今後そのほかの指標と同様に、将来性を含んだ評価が行われるようになっていくといわれています。今後の市場で正しく評価されるのに必要なことは何でしょうか?

北原)市場からの評価を獲得していくという意味では3つの観点があると思っています。①投資家に対してどのように伝達するか、②サーキュラーエコノミーの取り組みで経済性を成立させられるか、③どのように事業を構築していくのか

①最初の那須さんのスライドにもありました(前編をご参照ください)が、経済産業省からどのように企業のサーキュラーエコノミーを評価すべきかというガイドラインが出ています。こうした取り組みをしっかりと数値に落とし、投資家とコミュニケーションをとっていくことがやはり非常に重要になっていきます。

②経済性については供給制約への対応力が市場評価のポイントになる時代になっているという話です。振り返ってみると、供給制約(モノが必要だけれど作れていない)の時代、生産能力が高まり需要よりも供給が上回っている時代へと経済構造が変化してきていました。そして、昨今のコロナによる移動制限やウクライナ情勢、米中関係などの国際関係の緊張によって供給制約が強まっている。安定した供給力というものが、もう一度企業にとっての差別化要因になり始めている、それが今という時代だと思っています。そこに答えていくことがトップラインの成長に効いてくるし、企業の成長を考える時のリスク判断指標にもなります。

③最後は山の登り方です。先ほどお示ししたマーケットマップのそれぞれのボックスごとに、勝つためのキードライバーは異なるのではないかと考えています。

プラットフォーム領域の場合、幅広い業界をまたいでデジタル化していくことができるのかどうか。あるいは、「サーキュラーエコノミー」自体を正面から事業の中核に据えていくべきかどうか。

というのも、数ヶ月前に上場した衣服のシェアリング事業をしているスタートアップAirClosetさんは、サーキュラーエコノミーというのは最初、全く打ち出していませんでした。消費者の消費体験として、プロが選んだ最新コーディネーションをレンタルで気軽に体験できるというのが中心だったわけです。そこから、一回使ったものをどうするのかという観点で、リユースやシェアリングといった資源循環の観点を取り込んでいき、経済性の引き上げ、サステナブルなブランディングでの新たな顧客獲得を進めていかれました。

つまり、サーキュラーエコノミーを導入するというところから入っていくのではなくて、価値ある消費者体験を構築した上で、サーキュラーエコノミーを取り入れて、どういう意義があるのかを読み替えていき、価値を伸ばしていく。そういう登り方もあると思います。

マーケットからの評価というご質問に対しては、そうした3点があるかなと思います。

那須)それではここまででイベントを終了させていただきたいと思います!非常に濃密な時間を過ごすことができ、みなさまありがとうございました。


登壇企業情報

登壇スタートアップ・上場企業4社の企業ページを掲載します!ご興味のある方は、ぜひこちらをご覧ください。

株式会社TBM

株式会社CBA

株式会社digglue

digglueでは、サーキュラーエコノミーをテーマとしたイベントを定期的に開催しています。Peatixのグループをフォローしていただくと最新イベントの情報をお送りします!ぜひフォローしてください。(こちらから▶︎

シナネンホールディングス

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