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この<私>が書くことーー安部公房「すべての他人に共通している内部」

安倍公房は1964年『他人の顔』において、「すべての他人に共通している内部」への問いを放った。

「ともあれ、こうする以外に、素顔に打ち克つ道はないのだから、仕方がない。むろん、これが仮面だけの責任ではなく、問題はむしろぼくの内部にあることくらい、知らないわけではないのだが……だが、その内部は、なにもぼく一人の内部ではなく、すべての他人に共通している内部なのだから、ぼく一人でその問題を背負い込むわけにはいかないのだ……そうだとも、罪のなすりつけはお断りだ……ぼくは人間を憎んでやる……誰にも、弁解する必要など、一切認めたりするものか! 足音が近づいてくる…… だが、この先は、もう決して書かれることはないだろう。書くという行為は、たぶん、何事も起らなかった場合だけに必要なことなのである」(p.283-284.)

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