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地域のメーカーと地域のデザイナーとの架け橋になる「地産地匠」のロゴデザイン。

地域に根ざすメーカーと、地域を舞台に活動するデザイナーが共に手を取り、新たなプロダクトの可能性を考えるコンペティション「地産地匠(ちさんちしょう)」。

なぜ、コンペディションの名前が地産地匠なのか。なぜ、シンボルマークが漢字の「地」なのか。今回はそのお話を少しさせてください。

勝山浩二 Coji Katsuyama | monodachi

合同会社オフィスキャンプ デザイナー/アートディレクター。1986年生まれ、大阪市出身。グラフィックを軸にした広告デザインやWEB、プロダクト、ブランディングなどを手がける。地域プロジェクトや企業ブランディングなどを手がけるデザイン事務所を経て、現在は奈良県奥大和地域にフィールドを移しローカルデザイナーとして活動。木材産地で地域にねむる林業や木工産業、農業、地域に関わる起業家たちと共にプロジェクトを進行中。




「地産地匠」というのはコンペではなく、活動の名前である


「地」は地域であり、土地である。

つまり、今回のデザインの役割としては、オシャレにすることでも、何かを形作ることでもなく、この「地」というコンセプトを大切にしている様を見せなくてはなりません。さらに、プロジェクトに参画する人、応援してくれる人、見る人にとって、自分たちの「地」にきちんと目を向け、大切に思う気持ちになってもらうことを目的としています。

「地産地匠」とは、アワード形式のコンペディションです。登竜門、グランプリ、コンペ、選手権、いろいろ言い方がありますが、いわゆる工芸業界のコンペディションです。しかし、年に一度のお祭りを行いたいわけではなく、この活動自体が浸透していくようなモノづくりの現場を、意識を、変えたいと思って活動しています。


土の匂いを感じられることが、両者をつなぐ


いわゆる「デザインアワード」であれば、デザインに敏感な人たちのみをターゲットにするので、シュッとしててカッコ良く、シンプルなデザインが合っているのでしょう。いわゆる「工芸選手権」であれば、作り手の顔やその土地の工芸が見える産直っぽいデザインのほうが合っていると思います。(どちらも大切ですし、自分はどちらも好きです)
シュッとしたデザインは、ときに職人のおっちゃんから煙たがられたり。逆に、産直館的な見せ方では、クリエイターたちに届かない可能性があります。
しかし、このアワードの企画がはじまった時から、常に「両側面どちら側から見ても似合うこと」を意識し続けています。

その両側どちらから見ても似合うテーマが「土っぽさ」です。

  • 人工的なものよりも、自然から着想を得たもの

  • 突発的な閃きよりも、長年培った技術

  • 排他的なものよりも、許容があるもの

  • 直線的よりも、揺らぎのある様

  • SNSで得る知識よりも、手仕事から学ぶ理

  • オンラインミーティングよりも、井戸端会議

地域のメーカーもデザイナーも、互いの価値観が交わる場所がこの「土っぽさ」で言い表すことができるのではないでしょうか。
そう、この時、両者の交わる場所や接点をつくることが、今回のデザインの役割だと気づきました。



人々は便利さを豊かだと思い、次第に土から離れてしまう生活を選んでしまいました。土っぽいは不便で非効率です。
しかし、本来なら人間は、陽と共に目覚め、風や光に育てられ、土の恵みをいただき、育った植物や木で住居や工芸をつくってきました。そのリズムや循環を無くして便利に効率的になることで、果たして本当に人々は「豊か」になっていっているのでしょうか…。


シンボルマーク(ロゴ)に込めた3つの想い


前述のとおり、「土っぽさ」というテーマをそのまま「地」と置き換えて、この扱いにくそうな漢字をデザインの芯に据えることを決めました。

さらに、このアワードの特徴や、目指す未来の姿を、このシンボルマークに3つの意味を込めました。

はじめは、もちろん「×(掛ける)」。地産地匠アワードの特徴である、共に手を取る姿(協力、協働、協業、コラボレーション)を表す記号「×」によって、両者の交わる場所であることを宣言します。マークの上・下や、左・右など、このシンボルの両側に「地産」と「地匠」が配されて、使われることを想定されています。

次に、その産地の一番星になってほしいという願いを込めています。
突然、爆発的にある産地が盛り上がることは決してありません。いつの時代もどんな産地も、ひとつひとつ、コツコツと、ゆっくりと確実に広がってきました。我々が知っている、木の産地も、器の産地も、金属の産地も、米の産地だって。はじめは一粒の光。しかし、ひとつの星に互いに影響されて磨き合い、徐々に広がって、やがて産地とまで呼ばれるようになってきました。
そんな、キラリと光る星にも見えるように、「×」に1本たしました。

最後に込めたのは、未来へと続く「道」だという宣言。
これは、工芸に携わる人や、我々のような人、何より主催である中川政七商店へのメッセージでもあります。
このプロジェクトの目指す先は、あたり前のように、地域に根ざすメーカーと地域を舞台に活動するデザイナーが一緒にものづくりをしている、互いに支え合っている未来です。ひょっとすると、その頃にはこのアワードが必要なくなっているのかもしれません。

そんな道=「地」を固めるためのプロジェクトです。


幾何学的だが、人の手が感じられるように


地産地匠は、土臭さを感じられるように、人工的になりすぎない、人の手が感じられるようなものを考えています。
デジタルでデザインがつくれるこの時代であっても、人の手で作られていることや揺らぎや手癖のようなものを感じる、墨溜まり(文字の端や、交差する部分に溜まるインク)が特徴的な「A1明朝」フォントをベースにしました。

正六角形の角度や分割線のライン(補助線)を引いて、前述のすべてに見えるようなバランスを選択しつつ(言われてみれば、そう見えるかな〜くらいで良い)、美しい幾何学に見えるように設計図を調整します。
最後には、「とめ・はね・はらい」の角度を調整しつつ、線の交差するところに「墨溜まり」をつけて整えて、シンボルマークは完成です。


紙の質感や、色のこだわり


紙の質感や、色のこだわりもあります。

前述の「土っぽさ」から、当初からクラフト紙にしたいと思っていました。これには、晒しをしていないことで得られる雰囲気や、触った時にに感じる手触りという意味の他にも、1つ大きな意味があります。

このプロジェクトをいろいろな人たちに知ってほしいため、全国各地へポスターを輸送する必要があります。しかし、無駄な輸送コストをかけたくありません。そこで、クラフト紙です。このデザインは、写真やイラストを使っていない分、色の発色再現性などがあまり良くないクラフト紙を採用しました。その理由は、折りたたまれた折り跡もイヤに見えにくいからです。


これからの時代を生きるデザイナーに課せられた使命


「地産地匠」は、これからの時代を生きるデザイナーに課せられた使命であると思います。

これからどんどんと日本の人口が減り続け、国力が下がってきて、外国の会社・資本がたくさんやってきます。日本のモノづくりや工芸業界としての苦しさはこれからも増していくでしょう。日本のような島国で、自然豊かで、季節が移りゆく土地で育まれてきた、稀なモノづくりが無くなってしまいます。
体力的にデザインを依頼できる企業が減りはじめ、モノづくりに関わるデザイナーも一緒に苦しくなっていきます。
「メーカー→(依頼)→デザイナー」いう図式の中だけでは、いずれデザイナーも生きてはいけなくなるでしょう。デザイナーからも歩み寄り、商品や資産を生み出さなくてはならなくなってきたようです。これは、これからの時代を生きるデザイナーに課せられた使命です。

地域を愛するメーカーとデザイナーが、出会い、共に手を取り合って、考え、時には白熱した議論したりして、モノを作る。共存していく。
そんなプロセスがあたり前に行われているような未来を目指しています。

それでは、今回はこのあたりで。ここまで読んでいただいて、ありがとうございました。また機会があれば他の記事も読んでください。




Client: Nakagawa Masashichi Shoten
Art director / Designer: Coji Katsuyama
Printing: Fujiwara Printing
Web Designer: Kosuke Nagamitsu (INtoOUT&Co.)
Creative Agency: Office Camp llc.


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