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「デザセン」という場の有用性について

みなさんこんにちは。今回も特別企画のインタビュー記事です。

前回はデザセンスタッフとして活動している芸工大生にインタビューしました。今回は審査員の視点から迫ります。インタビュアーは、東北芸術工科大学 グラフィックデザイン学科3年 北島春乃(以下北島)です。

2018年度から審査員として参加いただいている、東北芸術工科大学コミュニティデザイン学科の専任講師でもある、矢部寛明(やべ・ひろあき)先生にインタビューをさせていただきました。
矢部先生のプロフィール(デザセン2020年度審査員紹介ページ)

▶️デザセン公式HP

デザセンは、高校生にとって、または大学生とその先の社会に対して、どのような場なのか、被災地やその他日本全国、さらには海外で様々な教育活動の現場を見てきた矢部先生にデザセンの有用性についてお話していただきました。

北島:矢部先生は2018年、デザセンに誘われた時のデザセンに抱いていたイメージや希望はありましたか?

矢部先生:デザセンは歴史が結構あるというのは聞いていて。
もともと震災時に気仙沼で高校生の地域活動サポートとか、まさにデザセンのような事をやってきていたから、僕が興味関心あるドストライクなことをしている大会だなとは思ってた。
歴史もあるし美大で開催されている大会だから、美大特有の「表現」というところに重きを置いているのが刺激的だったな。

赴任した時はデザセンのこともなにもわからないから、声がかかって、とりあえずやってみよう!って思ったかな。

北島:赴任されて、審査員を始められた2018年から2年間で出場してる高校生の変化など感じられたことはありますか?

矢部先生:僕の中では、デザセンは高校生のための場かもしれないけど、大学生の場として良い機能があるなーと回を重ねて思ったかな。
デザセンを学生が運営するにあたり、学科横断で様々な学生が参加できるじゃん。
普段はなかなか会えない学科の子達と話したり、考えたり、自分たちが学んできた学校でのスキルを還元できる。
コミュニティデザイン学科ならこういう場を作る、グラフィックならパッとビジュアル作ったりできる。集まるとエネルギーが凄いし、教育の場になるなって感じたかな。

北島:目標がはっきりしている分、団結力があるということでしょうか?

矢部先生:そう!僕は一昨年デザセンの授業もやったんだけど、当たり前だけど有志で集まるからみんなモチベーションが高くて。
そこが、社会のミニチュアのような場でもあるなと感じた。

北島:デザセンを通して、高校生にどう変化してほしいですか?

矢部先生:当たり前だけど、声を上げて動かないと社会は良くならない。
極端かもしれないけど、そのデザセンの連続性が社会をよりよくすると思う。
目の前に課題があって、そこでアクションを起こすことで変化を起こすと思うので。最終的に、デザセンみたいな活動がなくなれば良いよね。デザセンのゴールはデザセンがなくなることなのかも。

特に自己肯定感が低いと言われる日本社会では、なにか小さい成功体験を積み重ねることがすごく自分にとってのいい経験になると思うし、それが社会にも自分にも還元される。
デザセンに参加したり関わることが、生き方を変えるひとつのきっかけになるよね。

割と若い子のデザセンのような活動は世界でも行われていて、僕は例えばドイツとか韓国とかケニアにも行った。そのような、若い子がアクションを起こす意義を考えるタイミングがをすごく沢山あって。

例えばケニアに行った時に、スラム街に住んでいて1日1ドル以下で働いている子供たちが、略奪やドラッグの中でまさにデザセンみたいな活動をやってたんだよね。そこのスラムの子供のマインドは「スラムに産まれたら一生スラムだ」だったんだけど、そこで関わるスタッフが「ここを良くするのはみんな一人一人だ。一人一人がアクションを起こすことでこのスラムがより良くなっていく」と言っていて、さらに行動していて。それって本質的にはデザセンと何も変わらないよね。
地球の裏側でやってる事と、山形のこの地でやってることって本質的にはなにも変わらない。みんな、どう社会をみんなでよくしていくか?を一生懸命考えながら試行錯誤しているんだよね。
26年前から山形の地でデザインの力で世界をより良くしていくことを謳ってる東北芸工大に感服しています。

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学校の写真、実際にスラム街で行われているプログラムに参加した様子(中心右/矢部先生)

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2017年ケニア、ナイロビのスラム街にて(中央左下/矢部先生)

北島:日常で課題を発見するきっかけや、方法はありますか?

矢部先生:なんでだろう?って考えることが全てだよね。
当たり前をまず疑ってみる。そこから全て始まるんじゃないかな。

北島:まあそういうことか、となんとなく受け取るのではなく、立ち止まって考える……ということですか?

矢部先生:そう!前に大学の体育の先生と話していた時に「一つ百円のキャベツって何かおかしいよね」って話をして。で、その違和感が大切だと感じて。
自分の違和感に気づいたり、大切にすることがすごく大事なことだよね。ついネットで調べて終わっちゃうんだけど、ネットよりもリアルでもっと深く探してみて欲しいな。

北島:そうは言っても、違和感自体に気づかないことってないですか?

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矢部先生:あるある。そういう時はもっと外に出て見る。
ケニアに行った時、夜は治安が悪くて外出できなくて。その時に、「じゃあ日本ってなんで夜も女性が歩ける安全な国なんだ?」って考えられるようになって。
外に出て、別の文化とか環境に身を置くことで自分の文化や国を俯瞰的に見られるようになるってことが、すごく大切なこと。

だから、同じ友達に会うんじゃなくて色んな友達に会ったり、別の学科の勉強もしてみたりとかすることが大事なんじゃないかな。

北島:では、最近のリモートの環境でつい自分の世界に入ってしまう時はどうしていますか?

矢部先生:本!本を読む。本っていうのは新しい世界を教えてくれるので、(本を読むのは)すごく大切。YouTubeもいいけど本が大事だよね。

北島:YouTubeで本を解説した動画とか見た気になってしまいます。

矢部先生:あるよね笑

北島:家にいたとしてもきっかけ作りはできるということですね。

矢部先生:全然できる!例えば、本を書いた人を調べてみたらオンライン上で情報を公開してるんだから、実際に会いにだっていけるよ。
僕が大学時代は気になった人に会いに行ってたよ。当然ツイッターFacebookとかもなくて、その人が経営してるお店に実際行ったりとか。
今はもっと繋がりやすくなってるけどみんなやらないよね。大学生なんだから自分の行動次第でもっと道は開くじゃん。
大学の先生とかでも、この人にどうしても会いたいです!って聞いてみたらだいたいは繋がってると思うよ。
自分の探求とか、世界をガツガツ広げていけばいいよね。

高校生なんてもっと会えるよ!突然高校生が話を聞きに来たら僕は嬉しいもん笑
あなたの本のこれが気になりましたって実際に高校生が逢いに来たら大人として光栄だし、話したい!って思うもん笑
もっと自由でいいし、もっと取りに行っていいんじゃないかな。
情報がある分、なんとなく取ってる感じがあるけど実際は掴めてないよね。

北島:なんでだろう?と常に思っていることがやっぱり一番大切ということなのですね。

矢部先生:これは高校生、大学生関係なくみんなに言いたいね。

北島:コロナ以降、リモートになることで期待することはありますか?

矢部先生:僕が危惧するのはやっぱり偶発性が起こりづらいっていうのがあって。デザセンとかって高校生と練習してる時間も大事なんだけど、練習後のちょっと一緒にトイレ行ったりした時の会話とかがすごく大きな気づきになったりするわけじゃん。
そういう、偶発性が起こりづらくなってるっていうのがあるかなあ。
効率的に考えるといらないけど人生の豊かさで言ったら必要なものが失われていってる気がしちゃう。
じゃあオンラインで話しして!って言ってもなんか違うもんね。

でもリモート開催のデザセンだと、距離はオンラインでも越えられるからいろんなアプローチができる。例えば審査員がオンラインで出たり、世界でやってるデザセンみたいな取り組みを紹介できたりもできるし、面白いよね。情報交換くらいならできるじゃん。
通訳しながら、僕の世界ではこういうのがあって山形ではこういうのがあるよって有意義な時間を作れそう。
山形にいながら世界と繋がれる仕組みは作りやすいと思う。

インタビュアー:今までは山形に来てもらっていたのを、世界に向けて開いて活動するということですね。

矢部先生:そう!今は全世界行ったらいいと思う!同じように活動してる人は全世界にいるからね。

インタビュアー:最後に、高校生や大学生に向けてメッセージがあればいただきたいです。

矢部先生:今、二極化がどんどん進んでると思っていて。
好奇心旺盛になぜだろう?って考える人たちは、どんどん情報が取りに行けるし、変化できる時代だと思う。だけど、やらない理由を考えるのも簡単。
受け身になった瞬間に、やる人とやらない人の差がすごく出てくると思う。
そこは一人一人に委ねられてるんだと思うんだけど、自分がどういう風に選択するかって言うのは一日一日の積み重ねがおそらく未来につながっていくも思うから、意識しながら生活して欲しいなと思ってる。それは自分にも言えてる!

あと、人間って言うのは基本的には弱いしぐうたれてるわけよ。ぐうたれてるほうが好きじゃん、YouTube見てダラーンとしてたいじゃん笑!でもどっかで学びたい、勉強したいと思っているから大学に通っているんだろうし。

人間は弱い!だからこそ仲間が必要なわけじゃん。
お互い切磋琢磨しながら、刺激しあえる環境を作る必要があるよね。大学でもやる必要があるし、それ以外でもラーニングコミュニティって言い方が出来ると思うけど。「ちょっと自分これ頑張りたいから、一緒にがんばろ」「じゃあ週に一回、本読んだ感想の共有会しよ」みたいな。それこそまさにオンラインでも出来るよね。

僕は人間は弱いものだと思ってるから、家で一人でやるぞ!ってならないと思ってて。ゼミ生達もそうだった。
だから、無理ならどうするか?って考えた時、毎日9時に起きてZOOMを繋いで、はいみんな!こっから二度寝ダメだよ!頑張ろう!ってみんなで頑張るっていうのをやった。

北島:私も今、自分を律するのが難しくて…

矢部先生:リモートはね。今は厳しいよね。

北島:この生弱説というのは、それこそデザインの3人1組というのにも通じますよね。

矢部先生:そう!一人じゃ弱いからできないんだよ。社会に声をあげるけど、一人だと心細い。そんなときに仲間がいれば強くなれる。デザセンはそれを体験できる貴重な場所だよ。

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