外国語は「途上国の人」から学んだほうがいい! その理由を整理してみた
グローバルサウス(途上国、新興国)を専門とするNPOメディアの「ganas」は、大手メディアがカバーしないニッチな情報を発信するかたわら、途上国支援につながる“小さなプロジェクト”もいくつか手がけています。モットーは「行動するメディア」。
小さなプロジェクト(プログラム)の代表格が、英語やフランス語、スペイン語を、欧米人からではなく、途上国の人から学びましょう、というもの。
英語を例にとるなら、ミャンマー人やインド人、ルワンダ人を相手に英語でコミュニケーションをとる練習をします。フランス語はベナン人から、スペイン語はベネズエラ人から教わります。
というわけで本題。「外国語を『途上国の人』から学ぶべき理由」。ganasが開講する「経済崩壊で生活苦に陥るベネズエラ人から学ぶ『命のスペイン語レッスン』」の例を交えながら説明します。
南米のベネズエラでは、深刻な経済危機がおよそ10年にわたって続いています。ピーク時のインフレ率はなんと200万%以上。生活していけなくなったことから国民の4分の1(800万人弱=埼玉県の人口より多い)が難民として国を去ったほどです。
とはいえ、家庭の事情などで国内に残らざるをえないベネズエラ人も4分の3います。彼らは、働きたくてもまともな仕事がないという厳しい現実に直面しています。
犯罪が増えていくなか、まじめに生きるベネズエラ人を少しでも助けられないか、応援できないか、といった思いに駆られてganasが4年半前(2020年5月)に立ち上げたのが『命のスペイン語レッスン』です。主な特徴(外国語を『途上国の人』から学ぶべき理由)を下にまとめました。
①使う機会が多い場所の人から学ぶ=実用性が高い!
スペイン語を公用語とする国は世界に21あります。その大半は言わずと知れたラテンアメリカ。しかも英語が通じにくい地域です。スペインのスペイン語ではなく、ラテンアメリカのスペイン語を学んだほうがそのまま使えるのはご想像どおり。
ちなみにフランス語も同じです。フランス語を公用語とする29カ国のうち21がアフリカ。英語にいたっては言うに及ばず。英米の母国語というより、外国人同士がコミュニケーションをとるツール「国際語として英語」を学んだほうが実践的です。なにもカッコいい英語を話す必要性はありません(英語を学ぶハードルもグッと下がりますね)。
②仕事がない途上国で雇用を創出する!
深刻な経済危機に見舞われるベネズエラの講師からスペイン語を学べば、受講者が払う「報酬」はそのベネズエラ人に届きます。いわゆる雇用創出。このお金は彼らの家族を支えることにもつながります。同じ1万円でも、先進国と途上国ではその価値はまったく異なりますよね(良い意味で経済格差を使う)。
経済危機以外でも、ミャンマーのように軍事クーデターで仕事を失ったり、難民として逃れたりした人がいる国もあります。また特別に何も起きていなくても途上国のほうがディーセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)が圧倒的に少ないのも現実。
ganasが開講する言語系プログラムでは講師への報酬に加えて、レッスン料の一部を、現地の子どもたちのために使っています。とくに「ベナンのフランス語」と「ミャンマーの英語」のプログラムが顕著。「ベネズエラのスペイン語」(命のスペイン語レッスン)はすべてマンツーマンレッスンのため、さほどお金が残らないため小規模です。
③頑張る人を応援できる‥‥本当の人材育成!
頑張れば報われる――。『命のスペイン語レッスン』はこの言葉を強く意識して運営しています。具体的にいえば、講師がスキルアップして魅力的なレッスンをやればやるほど、受講者のリピート率は上がり、講師の報酬も増えるという仕組み。寄付ではなく「報酬」であることがポイントです。
多くの途上国では悲しいかな、頑張っても報われないことがざらです。『命のスペイン語レッスン』ではベネズエラ人の講師&教材制作者たちが頑張ってスキルアップしていった結果、「レッスンの質はお値段以上。同じようなレッスンを日本で受けたら10倍はすると思う」と好評を得るようになりました。
やる気(スペイン語で「ganas」といいます)のあるベネズエラ人たちに「働く場」を与えるのが『命のスペイン語レッスン』(他のプログラムも同じ)。このチャンスを生かすかどうかは本人次第。責任も同時に負わせています。
④メディアが報道しないその国の裏事情も知れる!
世界でいま注目のグローバルサウス(途上国、新興国)。2050年には世界人口の4人に1人がアフリカ人になるとの予測も出ています。アフリカだけでなく、アジアも、ラテンアメリカも、一昔前では考えられないほど存在感が高まりましたよね(相対的に日本のプレゼンスは低下するばかり)。
グローバルサウスの時代、どうせなら言語と一緒に、その国や地域の政治・経済・文化・習慣・価値観なども学んだほうがお得です。しかも日本にいながら又聞きではなく、生の情報を講師から直接聞ける。グローバルサウスについては日本の大手メディアもカバーしきれないため、レアな情報を先取りできますね。
ベネズエラを例にとると、7月28日の大統領選で三選を果たしたマドゥロ大統領についてベネズエラ国民はどう思っているのか、なども聞けます。ホットな話題だと、メジャーリーグの大谷選手の三冠を阻止し、3年連続で首位打者をとったパドレスのアラエス選手はベネズエラ人です。世界的な指揮者のドゥダメル氏もベネズエラ人。こういったトークから知識を深めるのも楽しいですね。
⑤レッスン料も安い!
途上国の講師から学ぶということはオンラインレッスンとなるので、教室代は不要。加えて欧米スタンダードの高い報酬を講師に払う必要もありません。つまり運営コストが抑えられるため(講師には、現地の平均収入より高い公正な報酬を払っています)、レッスン料は低めに設定できます。
ただ現地への送金額が目減りするため、これ以上は円安に振れないことを祈ります‥‥。
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いかがでしたか。
良いこと尽くめと思いきや、1つだけマイナスポイントがあります。それは、ベネズエラでは停電が多く、また通信環境も悪いため、レッスンが流れてしまうケースもあること(この場合は振り替えとなります)。ですので「これも現実」と受け止めていただける方のみに『命のスペイン語レッスン』を強くおススメします。
『命のスペイン語レッスン』のこれまでの受講者数は延べ893人。属性は、スペイン語を初めて学ぶ方(元気なシニアから高校生まで!)、旅行好きの方、スペイン語上級者、DELEを受験する方、JICA海外協力隊のOV(現役隊員、候補生、志望者も!)、スペイン語を勉強中の学生、国連職員、JICA職員、ラテンアメリカを研究する大学の先生、ライターの方、主婦の方、リタイヤされた方など多彩。
またレッスンはすべてマンツーマン。ですのでひとりひとりにカスタイマイズ可能です。DELE対策はもちろん、協力隊候補生が現地での活動で使うであろう文章を作ったり、スペイン語で書かれた政治・経済ニュースを読んだり、ベネズエラのさまざまな文化(音楽、料理、宗教、スポーツなど)について学んだり‥‥。
受講者の属性も、使い方も本当にさまざま。多様な方たちがせっかく集うので3カ月に1回のペースでオフ会も開いています。ベネズエラ料理をみんなで作って食べたり、ハンモック体験をしたり、ニッチに盛り上がっています。
スペイン語を楽しみながら学ぶことがベネズエラ支援につながる(ほかの言語系プログラムも)――この取り組みをganasは「国際協力の新しいかたち」と呼んでいます。この秋、スペイン語を始めてみませんか?
『命のスペイン語レッスン』の詳細はこちら。
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