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途上国ウォッチにハマるとはこういうこと。

ganasがかねてから声を大にしているのが、途上国をウォッチするおもしろさ。

現在開講中の「途上国ニュースの深読みゼミ」から、途上国ウォッチにハマる例の一端をご紹介します。こういったトークをする/学びがあるのがganas。他のプログラムにも多かれ少なかれ、こういった要素はあります。

①「民主主義」と「権威主義」(独裁・専制体制)はどちらが世界的にメジャーなのか?

実は想像以上に拮抗しています。Our World in Dataによると、権威主義国家の数は世界に88カ国。世界にはおよそ200カ国ありますから、半数近くが権威主義という計算になります。

国際NGO「Freedom House」の情報をもとにPlanetRulersが作成した下のマップをご覧ください。赤が「独裁」(自由でない)、黄色が「自由」、緑が「部分的に自由」です。

このマップをみると一目瞭然ですが、独裁国家が集中するのは中東、中央アジア、アフリカ、東南アジア(タイやミャンマーも軍政に戻ってしまいましたから)。もちろん中国、ロシアも。ちなみに意外かもしれませんが、ラテンアメリカに独裁(権威主義)国家はベネズエラ、ニカラグア、キューバの3つしかありません。

また、世界の国内総生産(GDP)に占める権威主義国家が占める割合をみると40%弱。驚くなかれ、半分弱です。

こうした数字を突き付けられると、権威主義国家は世界では決してマイナーな存在でないことがわかります。参考までに、さまざまなプログラムでganasがかかわる国を見てもその割合は半々です。

【Global Media Campのこの夏の開催地】

・コロンビア=民主主義(部分的に自由)
・ルワンダ=権威主義(自由でない)

【言語を学ぶプログラムの講師の居住国】

・ベネズエラ=権威主義(自由でない)
・ベナン=民主主義(部分的に自由)
・ミャンマー=権威主義(自由でない)
・インド=民主主義(部分的に自由)

②経済発展するために有益なのは「民主主義」か「権威主義」か?

この問いも、途上国ウォッチャーにとっては定番のネタ。正解がないだけに、いろんな意見・見方が飛び交います。

シンガポールの初代首相を務めた故リー・クワンユー氏はかつて、「独裁主義」(開発独裁)のほうが経済を成長させるには有利だと唱えました。実際、シンガポールの1人当たりGDPの変遷をみても、1980年の世界36位から2022年には6位へと大躍進。中国は129位から66位に大きくランクアップしました。対照的に、民主主義の日本は24位から30位に後退。

ただこの理論には反論があります。開発経済学の権威であるアマルティア・セン氏もサンプルが少ないとして異を唱えています。

ユニークなのは、マサチューセッツ工科大学の教授らが実施した比較検証です。1960年からの50年間にわたって延べ175カ国・地域の政治体制と1人当たりのGDPの推移を調べたところ、権威主義から民主主義へ移行した国のほうが、権威主義のままの国よりも、1人当たりGDPは25年後に平均20%多くなっていたというのです。

ただ実際のところ、経済成長は政治体制ですべてが決まるわけではありません。2022年のGDP成長率で世界トップ(62%)だった南米ガイアナは「巨大な油田の発見」が寄与しています。

③「民主主義」と「権威主義」の争いは今後どうなるのか?

ganasのプログラムだけでなく、途上国をテーマにしたganasの飲み会でも時折話題にのぼるのがこれです。

近年の傾向として目立つのは、大統領が憲法を改正して自らの任期を延長する動き。ウズベキスタン、ギニア、ソマリア、ブルンジ、ベナン、ウガンダ‥‥もっとあると思います。

いろんな見方があるのはさておき、好意的にとらえるならば、テロや紛争の拡大、コロナ禍による貧富の格差拡大、ウクライナ侵攻の影響による物価高といった「政情を不安にさせる要因」が山積みの中、国を安定させるために為政者は権力を集中させたいと考えても不思議ではありません。ただ言い方を変えると独裁色が強まるということ。

国際通貨基金(IMF)は昨年10月に発表した世界経済見通しのなかで「最悪の事態はこれからだ」と悲観的な予測を出しています。

世界は今後、どうなっていくのか? 民主主義はもちろん完璧でありません。しかしだからといって「権威主義化」はどうなのか。第3の選択肢はあるのか。世界の動きに対する興味は尽きません。

こういったことをganasと一緒に考えてみたい、という方はぜひ!

権威主義の国ルワンダを取材してみませんか? 「早割」はきょうまで。

権威主義のベネズエラから逃れた難民をコロンビアで取材したい方はこちら。

それ以外のプログラムはこちら。