ブログゾンビの正しい演じ方

ゾンビの正しい演じ方☆

さて今回のテーマは「ゾンビの演じ方」です。

俳優たるもの、まったく共感できない/気持ちを想像できない人物を演じなければならない時があります。しかし「もし自分がこの人物だったら…」のアプローチでは感情が想像できない役はえてして紋切り型演技になるものです。例えば「連続殺人鬼」とか「天才棋士」とか「皇族の人」とか・・・そして「ゾンビ」とか。

唐突ですよね(笑)。わかってます。

あの、じつはボク今ゾンビ物の短編映画を準備中で・・・も~頭のなかがゾンビの事でいっぱいで・・・なので今回はもうゾンビの演技について書きます!(笑)

ゾンビの演技は大きく以下の3つに分けられます。

【1】「ロメロマナーのゾンビ」

この正統的ゾンビはゆっくり動きます。まさに墓から出てきた死体が歩いてる感じです。Living Deadですね。身体が腐ってたり損壊してるのでうまく動けないし、死後硬直しているので動きがいちいちギクシャクしているのが特徴です。

【2】「走るゾンビ」

2002年くらいから出てきた全速力で走ってくるゾンビ。設定的にはゾンビ病原菌に感染したて人間で、このタイプは厳密に言うと病気なだけで“まだ死んでない”ので身体が腐ってなく、なので元気に走ったり大暴れしたりできるわけです。死んでないので死後硬直も無しです。

このタイプのゾンビを演じるのは「怒り」がポイントです。

とにかくカメラが回り始めたらイライラしてくださいw、誰かこの怒りをぶつける相手はおらんのか~!と思いながら。そして襲う対象を発見したらその対象に対してもう制御できないくらい激しい怒りを持ってください。で、雑な動きでいいのでとにかくその対象に向かって全速力で突進してください。「この野郎!殺してやる!」的な勢いでw!

で、とにかく咬みついてください。食べたいとかじゃないんです、咬みつきたいんです、怒り狂った犬みたいに!

【3】「歌舞くゾンビ」

日本のゾンビ映画はこのタイプが多いのかなあ。海外作品でもコメディ系のゾンビ映画はこの「歌舞くゾンビ」が多いですね。両手で襲いかかる「キメポーズ」をとったり、カメラに向かって舌を出して顔をしかめてみたり「キメ顔」をしたりします。

その「キメポーズ」は単にポーズに過ぎず、襲いかかる両手も実際には襲いかかるわけではなく延々とキメポーズを繰り返す・・・あんまり襲いかかるつもりのない安全なタイプのゾンビです(笑)

ハロウィンのコスプレのゾンビとかってこのタイプですね。モンスターって感じかな。演技のポイントは、ユーモアたっぷりにキメポーズ&キメ顔をキメることです。

さてゾンビ原理主義者wであるボクにとってゾンビとは、やはり【1】の「ロメロマナーのゾンビ」なのですが。これが他のタイプのゾンビと圧倒的に違うのは、死の匂いがする、ということです。

ロメロのゾンビはやはりモンスターやモンスター化した人間ではなく「歩く死人」なんですね。

「ロメロマナーのゾンビ」の(主観的な)演じ方!

基本はボーッっとしていてください。あなたは死んだ肉体です。何も無ければ何時間でもボーッとし続けています。これが基本です。

なにか動くものや光るものなどが視界に入ったら眼球だけでそれを追ってください。それからゆっくり首を動かして追い、そしてそっちに向かって移動を始めてください。

が、身体は死んでいるので死後硬直で硬くなっていて動きにくいです。体重移動がギクシャクします。移動していって対象にさわれたら掴んで、とりあえず食べましょうw。

で、食べたら快感を感じてください。

以上です。これを繰り返すだけです。

「ロメロマナーのゾンビ」を演じる上でのポイントは以下の4つです。

【1:「食べたい!」を演じない】

人肉を食べるのですが、先程のようなプロセスなので「食欲」というよりは「虫がエサを捕食するシステム」に近い感じです。「食べたい!」といった欲望を演じないようにしましょう。虫は「食べたい!」みたいな振る舞いをしませんよね。ただ食べるだけです。

【2:視覚・聴覚が行動のキーになる】

死体なのですが視覚や聴覚は生きているので、勝手に視覚情報・聴覚情報は入ってきます。

基本はずっと同じ風景が見えていて、同じ音が聞こえているのでそれには反応しないですが、なにか動くもの・光るものを見たり、新しい音を聴いたりすると、それには反応します。そしてそれがゾンビのすべての行動の始点になります。

それらの新しい刺激が入ってこない時は、何時間でもボーッとしててください。

ゾンビの視覚・聴覚を刺激さえしなければ安全。もしくは花火を打ち上げるとか、人間の行動よりも大きな視覚・聴覚の刺激をゾンビに与えておけば人間は安全。みたいな演出がロメロの映画にはたくさん出てきます。このルールは重要です。

【3:生前の記憶はある】

ロメロのゾンビは生前の記憶はボンヤリとあるみたいです。

なので視界に何か物が入ってくると、それが何かはわかります。それが生前使ったことのある道具なら使い方の記憶が蘇ってきたりするので、なんとなくやってみたりします。が、これは身体が憶えている記憶を再生しているだけで、頭を使う細かい段取りまでは思い出せないので、無意味な行動の繰り返しになります。

たとえばスーパーのカートや乳母車を意味なくおし続ける。火のついていないコンロの上で何も載っていないフライパンを上げたり下げたり繰り返す。ガソリンスタンドの給油機を車もいないのに注ぐ動作を繰り返す。自動販売機のボタンを意味なく押し続ける・・・などなど。ゾンビっぽい行動ですねw。

ただ記憶の蘇りの度合いには個体差があるみたいで、なかには銃を撃ったり、馬に乗ったり、そこそこ複雑なプロセスを再現できるゾンビもたまに出てくるのが、ロメロのゾンビ映画の恐ろしいところでもあります。

【4:感情は無い】

これ重要です。ロメロのゾンビには基本感情はありません。なので人を襲う時も怒りの感情をあらわにしないし、食べれなくても悔しがったりしません。

襲いかかる時に恐ろしい顔をするゾンビもいますが、それは食べるために口を大きく開けているだけで、怒っているわけでも威嚇しているわけでもありません。ここが「走るゾンビ」との演技上の大きな違いです。感情を演じると演技がモンスター風になってしまって、死人に見えなくなってしまいがちなんですね。

そして感情を演じてしまうと観客に共感されてしまう危険性があります。

ゾンビは「死」のメタファーであり、「理解できない人種」のメタファーなので、観客にとって理解できない存在である必要があります。無いはずの内面を不用意に理解されないようにしましょう。

幽霊が「肉体を失った魂」だとすれば、ゾンビは「魂を失った肉体」なのです。

あ~今回はさらっと書こうと思ったのに書き始めたら止まらなくなって、結局いつもより書いてしまった。。。(笑)

以上、「ロメロマナーのゾンビ」「走るゾンビ」「歌舞くゾンビ」3タイプのゾンビの演じ方でした。

ゾンビを演じる俳優さんは、自分が参加しているゾンビ映画が3つのうちのどのタイプのゾンビを必要としているかを、脚本上の表現や現場の空気を読んで判断して演じ分けてください。

基本はロメロマナーだけどポイントポイントで歌舞くことを演出から求められる複合型の現場もあるでしょう。そこはホント空気を読んでw。

ゾンビ、演じ慣れてくるとすごく楽しいですよ(笑)。

小林でび(でびノート☆彡)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?