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若い頃

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若い頃の体験談
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#瞑想

中空の竹

中空の竹

(文3400字 写真40枚)

竹の里

 北九州市小倉南区合馬は日本有数のタケノコの産地である。見渡す限り竹林の山が緩やかな斜面に続く。先日訪れたときには麓の田んぼのあぜ道に彼岸花が一斉に咲き始めた。

開花に合わせるように稲刈りも始まっていた。米の収量は前年に比べると全国的にやや減少という予想らしい。ここ合馬では先日の台風襲来でも強風に倒れることなく、黄色い稲穂がきれいに揃って収穫の時を待って

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沈黙のアート

沈黙のアート

(文5700字)

覚者を訪ねて

 若い頃に「覚者」を訪ね歩いた時期があった。
噂を聞いてはインドの田舎町まで出かけたり、また日本で会えると知ったなら何度でも出向いたりした。
覚者とは光明を得た存在。光明とは悟りの最終段階にまで到達したことを意味する言葉だ。悟りや覚醒という意識変容にもいくつもの段階があり、光明を得るともう二度と人間に生まれ変わることなく、宇宙の実存そのものへと溶けていくとも言わ

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踊り続ける人

踊り続ける人

 若い頃、インドのアシュラムと呼ばれた瞑想を探求する施設に通っていた時のこと。ふとしたきっかけで、ある西洋人の女性と知り合った。

 ある日、街のレストランのテラス席で一人昼食をとっていると、少し離れた向かいの席に女性2人が食事をしながら楽しそうにおしゃべりをしている姿があった。ふと彼女と眼が合った時、"ハーイ!" と気楽な挨拶をした。彼女もニコニコしながら同じ挨拶を返してきた。
その時はそれで終

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