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エルの本棚で得る知見

エルにはたくさんの本があります。その数約3000冊。
好きに読んでいいし、貸出も可能。本好きにとっては天国です。

本棚のかたちも多様。

入社したとき、ビジネス本から漫画、デザイン図鑑やコピー年鑑にいたるまで、クリエイティブを引き出す本がずらりと並んだ本棚に感動しました。日々そっと本を抜き出しては、読書に勤しんでいます。

一段目から二段目の左側を占めているのは、雑誌『イラストレーション』。
1979年の創刊号からあります。

今回は最近読んだオフィスの本で、印象深かったものを紹介します。

『愛のあるユニークで豊かな書体。』

ある日の一日一力で、フォントに関するクイズが出されました。そのとき、「うああわからない!!これ言い当てられるようになりたい!!」と思って借りた本。

説明がおもしろく、フォント初心者でも「ふふ」と微笑みながら読むことができます。
使用例も一緒に載っているので、「かつて好きだと思っていたフォントはお前だったのか…」と、なんとなく気に入っていたフォントと感動の再会を果たすこともできます。(ちなみに私のその相手は「ナール」でした)
本の途中から、脳内でフォントを擬人化し、誰が好きかな…と考えながら読んでいました。勉強していくうちに、好きなフォントは変わっていくのかもしれません。移ろいやすい乙女心…。

元々私は看板の文字を眺めるのが好きで、街を歩きながら、好きな看板を探してしまう癖がありました。けれど専門知識を持っていなかったため、感覚的な「好き」だけで終わっていました。
でもこれからは、「なぜこのフォントをいいと思うのか」を言語化できるようになっていきたいです。
デザインをつくる現場にいて思うのは、「いいデザインを言語化する力」が大切だということです。提案の過程でも、制作の過程でも。
「なんとなく好き、嫌い」は個人の感情ですが、クライアントらしさを表現するデザインには、必ず理由があります。なんとなくかっこいいから、という理由ではつくりません。
満足してもらえるいいデザインをつくるためにも、フォントや配色、レイアウトといったデザインの構成要素の特徴を理解し、使用した理由を言語化できるようになりたいです。
主観だけではなく根拠を以て「いいもの」を伝えることができるように。

この本を読んだ後、街に出ていつものようにお散歩したところ、街のあらゆる文字が性格を持って見えて、ちょっと感動しました。
なんとも奥深い世界に足を踏み入れてしまったようです。勉強は続きます。

ちなみに次に読んでいる本はこちら。


『未来をつくる言葉 わかりあえなさをつなぐために』

テクノロジーと人間との関係性を研究している著者が、言語学、言語学、文化人類学、生態学など様々な観点から、他者との関係の結び方について記した本です。
日々、人と人との思いをつなぐものとして「言葉」と向き合うことが多い自分にとって、この本の内容はとても心に刺さりました。

印象的だった文章を、一部抜粋します。

そもそも、コミュニケーションとは、わかりあうためのものではなく、わかりあえなさを互いに受け止め、それでもなお共にあることを受け容れるための技法である。「完全な翻訳」などというものが不可能であるのと同じように、私たちは互いを完全にわかりあうことなどできない。それでも、わかりあえなさをつなぐことによって、その結び目から新たな意味と価値が湧き出てくる。(本文より抜粋)

ドミニク・チェン『未来をつくる言葉 わかりあえなさをつなぐために』新潮社、2020年

Web制作の仕事はまず、「話を聴く」ことから始まります。そのときクライアントから聞く言葉を、文字通り受け取るだけでは不十分です。

私たちは自分の中にある思いを、言語という型に当てはめて会話をしています。そのため、言語の違いに限らず同じ単語を使っていても、抱いている感情や捉えている意味は人によって異なります。
言葉とクライアントの思いには、距離のある場合があります。「こんな感じにしたい」という思いが、ぴったりはまる言葉と出会えていない可能性もあります。もしかしたらそれは、言葉では表現できない領域かもしれません。
いまかたちになっていない思いを見つけて、かたちにする。そのお手伝いをするのが、自分たちの役目だと思っています。だから話を聴くときは、言葉になった思いだけではなく、言葉と言葉の行間にある思いにも目を向けていたいと思います。

この本には人間と人間という関係だけでなく、人間と社会、人間とコンピュータ、といった関係性についても記してありました。読み終えたあと、文章を書くことや話を聴くことへの意欲が湧いたことはもちろんなのですが、普段関わる機会が少ないコーディングについて興味が湧いたり、自分と周りの関係性から自分を捉え直してみたくなったりして、「ああ、視野が広がるとはこういうことなのだ」と実感しました。

考え事をしていると、つい自分の中に答えを探しがちになります。けれど自分からは、自分の中にある答えしか返ってきません。自分を見つめるだけではなく、外に目を向ける。そうやって視界を広げることで気づけることもあるのだと、深く実感しました。

「デザイン会社」の本棚を物色

今回私が読んだのは比較的新しい本でしたが、46年もの歴史を持つエルには、今では手に入らないような本もたくさんあります。「そんな歴史の長いデザイン会社には、どんな本があるんだろう?」という全人類の好奇心を満たすべく、本棚を物色してきました。その中で「おお!」と思った本をご紹介します。

1980年代に宣伝会議から出版された本。名だたるコピーライターたちの言葉がぎゅっと詰まっており、文字通り「コピーのパワー」を感じます。「2」の表紙の絵はどんなコンセプトで描かれたのか、とても気になります。

海外の料理について書かれた本。料理の写真が大きく載った、立派な箱に入っています。中にはリングノートのレシピ本が入っているのも面白い。一体この本からは、どんなインスピレーションが生まれてきたのでしょうか。ちなみに13カ国分ありました。

1964年(!)の東京オリンピックの写真集。熱狂と感動に満ちた空気を切り取った、歴史的な瞬間がたくさん収められています。当時を知らない私でも「すごかったんだ」とどきどきするので、当時のオリンピックを知っている人が見たら、すごく感慨深いはずです。いい写真って色褪せないんだなあ。

コピーライティングの作法について書かれた本。台本のようにも見えます。発行年はどこにも記載されていませんが、かなりの年季もの。ぱらぱらとめくってみましたが、現在にも言える「コピーの本質」がびっしりと書かれていました。ここ数年で出版されたコピーライティングの本と読み比べて、重なるところと相違するところを見つけ出したくなりました。

中国の出版社から刊行されている、『常用字字帖』。見た目が寺子屋の教科書のよう。漢字練習帳のようなページに、馴染みのある漢字から未知の漢字まで、ずらりと並んでいます。書体選びの参考にしたのでしょうか。一体どこから仕入れたんだ…本当に色んなところから、アイデアをキャッチしようとしていたのだなあと思います。

『MAKING OF HOMEPAGE』。すべてはここから始まった…と感じさせる、王道の一冊。社長のブログでも紹介されています。24年前、社長がエルに入社した頃には既にオフィスに存在していたこの本。「これからのデザイナーはインターネットに参入していくことになる」という、先見の明があったことがわかります。

エルの本棚からは、常に新しい視点を取り入れてデザインをつくり続けてきた、先人の息遣いが感じられました。

日々の中から得る知見

仕事の中で、アイデアを出す機会はたくさんあります。しかし、アイデアは急に降ってくるものではありません。自分の中に蓄積された知見から、滲み出てくるものです。
どこから得たことが、アイデアに繋がるかわかりません。仕事で学んだことかもしれないし、遊びで学んだことかもしれない。
だからこそ、日々の中で得たことをひとつひとつ大切に蓄積していきたいです。

大人になってからする勉強は、どこまでも自由で、開けていて、途方もないけれどとても楽しいです。オフィスには沢山の本があるし、日々少しずつ増えているし、読み切るには相当な時間が必要そうです。でも、読みたい本が尽きない本棚の方が楽しいかもしれないですね。いつか図書室みたいな場所ができたりして…?

次は、どの本を借りて読もうかな。
メンバーにも、おすすめの本を聞いてみたいと思います。


デザインスタジオ・エルは「超えるをつくる」を合言葉に「らしさ」をデザインするWeb制作会社です。

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