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『一日一力』の積み重ね、新たなアイデアとの出会い。

エルには毎朝「一日一力」という、一人ひとつ話題を持ち寄りチームに共有する時間があります。

エルに入社する前、私がひそかに楽しみにしていたのがこの取り組みでした。聞くところによると、2007年から15年間も続いているらしい。投稿数は現時点で19500件超。
何か一つのことを続けるだけですごいことなのに、チームとしてそれほど長く取り組みが続いているってすごい。一体どんなことが話されているんだろう、ネタが尽きることはないんだろうか……?

そんなことを考えながら、実際に毎朝取り組みに参加するようになり早3ヶ月。
一日一力(※以下、一力)とはどんな風に行われていて、どんないいことがあるのか。現場からお伝えします。

①毎日、メンバー分の知識を得られる

これは言わずもがなです。

メンバーそれぞれ得意分野や興味対象が異なるからこそ、自分では見つけられなかった情報を得ることができます。いつも、なるほどと思うことばかり。ときどき話題が重なることもありますが、視点が違うと感じ方も違うため、「この人はここをいいと思ったけど、この人はまた別の観点からいいと思ったんだなあ」とわかってとても勉強になります。

話題に制限はなく、共有されるジャンルはデザイン、開発、ライティング、ディレクション、思考法、アイデア、体験談やライフハックまで多種多様。
幅広いジャンルの知見を、毎朝得ることができます。また、みんな色んなところから話題を持ち寄ってくるため、「情報の見つけ方」も勉強になります。


②審美眼が磨かれる

「いいデザインってなんだろう?」
そう思ったとき、検索窓に「いいデザイン」と打ち込み、渾身の力でエンターキーを押しても、自分が求める「いいデザイン」を見つけることはできません。いいデザインはたくさんあっても、その中で「いい!」と思うものを見つけられる審美眼が、デザインの現場ではとても重要です。

一力ではよく、メンバーが「いいと思ったサイト」を紹介してくれます。ただ見せるだけではなく、「どこを、どんな風にいいと思ったのか」という説明も一緒に。
それを聞いていると、「なるほど、このサイトは、この部分にこんな工夫がされているからいいと、この人は判断したのね」といったように、いいデザインの根拠と、その人の感性や着眼点がわかります。

審美眼が磨かれると、血眼にならずとも「いいデザイン」は自然と見つけられるようになります。一力を始めてから、何気なく眺めていたWebサイトが目に止まったり、道端の広告看板に足を止めたりすることが増えました。いいなと思うものを根拠をもって説明するということを繰り返すうちに、次第に審美眼が磨かれ、さらに自分ならではの審美眼に自信が持てるようになるのだと思います。

そうして見つけた「いいデザイン」を、今度はメンバーにも共有できるようになる。とてもいい循環です。


③メンバーのことがわかる

「何をいいと思うか」や、「何に興味があるか」には、その人らしさがとても現れると思っています。

一日一度、メンバーの考えていることや興味のある話を聞けるため、全員と案件で関わっていなくとも常にじんわりと「チーム感」を感じられています。

「メンバーがどんなことに興味があるのかを、全員が知っている状態」は、チームで仕事をする上でとても大切なこと。
業務をしていて悩んだとき、「そういえば〇〇さんはこのことについて詳しかったっけ、知恵を貸してもらおう」と声をかけようと思えたり。直接仕事とは関係がなくても、「以前、〇〇さんが挙げていた話題について、詳しく聞いてみたいな」と、コミュニケーションが生まれるきっかけになったり。

たくさんの知見を得られることも一力の魅力ですが、ただメンバーの話を聞くのが好きだからという理由で、私はこの取り組みが好きだったりします。


④感じたことを「自分のもの」にできる

いいなと思ったものを共有する際、「どうしていいと思ったか」「どんなことをメンバーに伝えたいか」をよく考えます。
感じたことについて、自分はどうしてそう感じたのか、感じたことからどんなことを考えたのかを深く考えることで、それが「体験」として自分のものになっていく気がします。

「これいいな」と思っても、それを自分のなかに落とし込むことができなければ、それはただの出来事として流れていってしまいます。
たとえば、いい記事を読んだとして。「ああ、実にいい記事だった」と思って寝てしまったら、次の日には記憶が薄れ、数日後には忘れてしまうかもしれません。「どうしてこの記事をいいと思ったのか」「この記事のどこが琴線に触れたのか」を考え、言語化して残しておくと、自分のなかのデータベースに「体験」として残ります。そうやって体験を自分の中に積み重ねていると、アイデアを考えているとき、思わぬところから手を差し伸べられる感覚があります。

最近読んだ本に、こんな一節がありました。

経験を確実に、「知る」に転化させるためには、遭遇したものを無為に意識外へ通貨させずに、積極的に、「感想を持つ」「考える」「疑う」「発見する」「わかる」「また疑う」ことで脳内に「これは覚えておくべきことだから、忘れるなよ」と記憶を刻む必要がある。この作業を経て、「経験」は、「知る」につながり、「知る」は、「すでに知っている」と脳に定着を果たす。いろんな経験がその筋道をたどることによって、脳内に蓄積されていく。

『案本』「ユニーク」な「アイデア」の「提案」のための「脳内体験」
山本高史、インプレス、2008年

一力はまさに、日々触れることを「チームみんなの体験」として残せる場所だと感じます。


⑤先人からのヒントがある

何かを生み出す際、誰しも経験する(と信じている)、「何も思いつかないフェーズ」。どんなアイデアもピンとこなかったり、これだと思うデザインやコピーが思い浮かばなかったり…そういうときはインプットが足りないか、インプットのなかから今必要なものを見つけられていない状態です。

そんなとき、過去の一力から力を借りることがあります。

「行き詰まった……」と思うときは、メンバーがブックマークをつけたWebサイトのデザインや構成を見に行ったり、技術面のTips記事を参考にしたり、セミナーや書籍で学んだことの共有や日々の施策からヒントをもらったりします。
実際新たにWebサイトを作るとき、一力にインプットされているデザインアイデアからインスピレーションを受けることもあります。日々の積み重ねは侮れません。


⑥わかりやすく伝える力がつく

メンバーの前で「自分で用意した話題」を自分で話すことで、伝えたいことを整理して話す練習になります。話してみると、脳内で考えていることと、言葉になっていることの間にギャップがあることに気づいたり、「あれ、自分がすごいと感じたことがちゃんと伝えきれなかったな」と思うこともあります。特別意識しているわけではないけれど、自然と、わかりやすく伝える練習になっている気がします。

クライアントとのミーティングやデザインの提案など、「伝える」機会はとても多いです。一力の積み重ねは、プレゼン力を鍛えることにも繋がっているのだと思います。


Q&A

Q.ネタ切れはしないんですか?

A. 今のところ、したことはないです。

入社したばかりの頃は、「ネタがなくなったらどうしよう…みんな毎日どこから話題を拾ってくるんだろう…天才しかいないのかな…」とひとりで心配になっていました。

でも実際仕事を始めてみると、ネタは尽きることはありません。
Web業界は日々進化を続けており、色んなところから色んなことを拾う必要があります。「今の流行はなんだろう?」「世の中にはどんないいものがあるんだろう?」とアンテナを張っていると、ネタが尽きることはないと思います。

ひとつ前の日記で、オフィスにあるたくさんの本のことを紹介しました。今ほどSNSが発達していなかった時代の先人たちは、本から情報やトレンドを集め、デザインに活かしていたようです。手段は変わりましたが、エルの根底に流れる「アンテナを張り、よりいいものをつくりたい」という思いは変わらないのではないでしょうか。

Q. 実際、継続って難しくないの?

A. 毎朝楽しく続けられています。

それは、「どんなことを共有しても、みんな穏やかに興味深く聞いてくれる」空気が流れているからかもしれません。
個人的には、共有する話題に縛りがないこともやりやすさに繋がっていると思います。他愛もない小ネタでもいいし、すぐに仕事に活かせるTipsでも、Webサイトの好例でも、日々考えたことでも何でもいい。
「それって何の役に経つの?」という空気がないし、有益か有益じゃないかといったジャッジもない。何が役に立つかなんてそのときになってみないとわからないのだから、考えたことや興味のあることは、何でも共有していい。
そういう空気感だから、毎朝無理なく、楽しく続けられているんだろうなあと思います。

私は放っておくと永遠に思考が止まらないタイプなので、一日一回、考えたことをアウトプットさせてもらえる時間があるのはありがたいです。自分ひとりで考えるのは孤独な作業だけど、一力の時間があることで、チーム全体でいいものを作っていると感じられています。


さてさて、明日からも。

一力を始めてから、いいなと思った記事やサイトをブックマークする癖がつきました。一力を通じて日々いろいろなことを教わっているので、自ずと自分も、得た知見やアイデアは「メンバーに共有したい」と思うようになりました。

それぞれが持っている知識を共有することで、それが「チーム全体の知識」になる。その積み重ねが、自分とチーム全体を成長させてくれているのだと感じます。

また、自分の思考を残しておくと、その変遷がわかっておもしろいです。変わっていないようで変わっていたり、変わっているようで変わっていなかったり。ときどきちょっと成長を感じて嬉しくなったりします。「積み重ねって大切だ」という言葉を、日々実感しています。

これからもエルは「日々真剣に挑み続ける」姿勢で、世の中に「らしさ」を増やすべく尽力していきたいと思います。

こうして今日もまた、新たなアイデア探しの旅へ。いってきます。

デザインスタジオ・エルは「超えるをつくる」を合言葉に「らしさ」をデザインするWeb制作会社です。

Webサイト制作やグラフィックデザインのご依頼やご相談がございましたら、お気軽にお問い合わせください。


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