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【前編】すべての社員が快適に働ける環境へ。社内セミナー「なぜなにDEI?」を開催しました#クロスのDEI

こんにちは、電通クリエーティブX 広報です!
(社名の「X」は「クロス」と読みます。以下、クロス)

クロスには、様々なバックグラウンドやライフスタイルを持つ300人を超えるメンバーが集まっています。会社設立から14年が経ち、ライフステージが変化した社員もいたり、新しいメンバーが加わったりすることで、社内の価値観は多様化しています。

そこで2022年3月、「すべての社員が快適に働ける環境をつくるためにはどうすればいいか」「お互いの認識不足からすれ違いや不満が生まれ、歩み寄るチャンスを逸してしまうのはもったいない」という思いから、DEI委員会(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン委員会)を発足しました。

これまで有志13人と事務局による月1回の定例会議実施や、社員同士を知ることをテーマにしたトークイベント「ママトーク」「パパトーク」「女子トーク」を開催しています。ママ・パパ社員の働き方や育児と両立、女性ならではの仕事の悩みなど、「え、そうだったの?」「知らなかった」という事実を共有し、理解を深め合いました。

そして今回、男女共同参画週間である6月29日(木)、社内セミナー「なぜなにDEI?」を開催しました。ダイバーシティ全般のコンサルティングやセミナー講師を行うDEI総研 代表・伊藤義博さんをお迎えし、「なぜクロスがDEIに取り組むべきなのか」をテーマに解説いただきました。

このnoteでは、DEIを推進するために知っておきたい内容をセミナーから抜粋し、前編と後編に分けてレポートします。

講師:伊藤 義博(DEI総研 代表)
2010年 電通ダイバーシティ・ラボ(DDL)設立準備から事務局長、代表を務める。DDLはダイバーシティ&インクルージョンを起点とし、社会課題と企業課題の同時解決を目指すソリューション開発ラボ。ダイバーシティ全領域で20以上のプロジェクトを統括・推進。2023年4月に電通退職後、DEI総研を設立。

「DEI」って、そもそも何?

DEIは「Diversity(ダイバーシティ)」「Equity(エクイティ)」「Inclusion(インクルージョン)」の概念を組み合わせた言葉で、伊藤さんからそれぞれの言葉の意味を解説いただきました。

ダイバーシティ=多様性
社会には様々な特性のある人々がいるという状態

エクイティ=公平
現実的に存在している不平等な状態を是正し、それぞれが持つ能力を十分に発揮できる環境

インクルージョン=包摂
その様々な特性のある人々を特定の属性などで排除せず互いに尊重しながらより暮らしやすい社会を目指す行動

ダイバーシティを考える時に基本となる領域は、「障害」「ジェンダー」「多文化」「ジェネレーション」の4つに分けられ、日本の総人口である約1億2700万人のうち、何らかの課題を持つ人が52.9%いるそうです。

エクイティについては自転車競技を例に、イコーリティ(平等)との違いについて解説いただきました。多様なメンバーに同じ自転車を渡しても、子どもは乗りにくいですし、車イスの人はそもそも乗れません。しかし、それぞれの人に合った自転車を渡すことで、全員がパフォーマンスを発揮でき、ゴールできるということになります。

インクルージョンに関する解説の中では、クリエーティブコンテンツ制作とDEIの関係性について語った伊藤さんの言葉が強く印象に残りました。

みなさんが制作するクリエーティブコンテンツを読めない人、見えない人、聞こえない人がいるかもしれず、その人たちを排除したコンテンツになっている可能性がある。マーケティングにおける“ターゲットを絞る”という考え方と相反するため判断が難しいけれど、自分が排除される立場になるとすごく傷つきます。「この広告は自分を相手にしてないな」と感じた時にどうなるでしょう? 「この会社、嫌いだな」と思うかもしれませんよね。このことは覚えておいてほしいです。

DEI推進は「目的」ではなく「手段」

社会は本来、多様な人の集まりでしたが、多数派が少数派を迫害し、多数派だけが残るようになり、「均質な集団」が生まれるようになったそうです。

この数十年の中で、インターネットの誕生や経済成長の鈍化、人権意識の高まり、市場の多様化、グローバル化など、企業を取り巻く環境が変わり、均質な集団では立ち行かず、変化の時を迎えているようです。

決まった形状の商品を作る場合は均質的な集団のほうが良い領域もあります。一方、クロスのようなオーダーメイドで創作していく会社の場合は、外部環境の変化に対応していかなければいけない時代になっているかもしれません。

その後、少数派を多数派の取り入れ、多数派のルールに従わせたり、少数派を隔離したりということを経て、少数派の特性を認めて個々の活躍が始まるそうです。しかし、この状況ではまだインクルージョンできておらず、「お互いが特性を活かし合い、新しいものを作り出すネットワーキングができて初めてインクルーシブな会社になっていく」と、伊藤さんは言います。

この枠組みを社会へ広げることによる会社のメリットにも言及されました。

市場自体や社会の知とつながり、新しい視点を持てるなど、会社にとっても良いことがあるんじゃないかと思います。市場の多様化や制約の変化、会社で働く社員にも変化が起こっています。これらの変化には、今までの均質的な集団では対応できません。企業が生き残るために、企業に求められる存在意義や企業市民としての役割を果たすために、変化に対応することで生き残っていくしかないと思っています。

ダイバーシティは大事、政府がやりなさいと言っているからDEIに取り組むのではなく、「変化への適応力を上げるための手段として、DEIをうまく使っていくことが大切です」と、伊藤さんは呼びかけました。

車イスに乗る友人がいない、という事実

伊藤さんから参加者に向けて、「鈴木さんという苗字の友人がいる方はいますか?」という質問があり、全員が手を挙げました。次に、「車イスに乗っている友人がいる方はいますか?」という質問には誰も手が挙がりませんでした。実は、「鈴木という苗字を持つ人」と「肢体が不自由な人」の数はほぼ同じ、しかも鈴木という苗字は日本で2番目に多い苗字なんだそうです。

どちらもほぼ同じ人数なのに、車イスに乗る友人がいない理由は大きく2つあると伊藤さんは言います。

ひとつは、社会での活躍がどんどん増えているけれど、まだまだ外に出る機会が少ないこと。もうひとつは、私たちが無意識に高い目線で見てしまい、車イスに乗る人に気づかないことです。関心があれば気づくけれど、関心がなければ気づくこともできません。

障がい? 障害? 障碍?

続いて、伊藤さんから「障がい、障害、障碍という言葉をどのように使い分けていますか」「障害を“持つ”と障害が“ある”という言い方がありますが、どう違うでしょうか」という問いが投げられました。

伊藤さんは、障害に関する定義が2006年に変わったと言います。

2006年より以前は、足が不自由で車イスに乗っているから階段を登れないという「個人モデル」だったそうです。障害が2006年 国連障害者権利条約が発効されたことを機に、足が不自由な人は車イスがあれば移動ができるのに、移動できなくしている理由は“段差”という社会環境にあるという「社会モデル」に変わってきました。

障害の原因は当事者の内側にあるのではなく、障害のある人が働けない社会の仕組みや環境の方に問題があるという「社会モデル」を基本に考えると、その人が存在する社会や環境に「障害がある」という意味になり、「障がい」とひらがなで表記する必要はないと、伊藤さんは言います。

地方自治体や企業の一部では、当事者の受け取る印象に配慮して「障がい」と表記をしており、また法律での表記は「障害」が使われていますが障害者団体でも意見が分かれているそうです。2021年には国会で、「障碍」を日常生活で用いる表記するべきと議論が起きましたが、見送りになっています。


ここまで、DEIに関する基礎知識をご紹介してきました。今回のnoteで取り上げた内容以外にも、視覚・聴覚障害をはじめ、日本と海外の管理職者や就業者における女性比率、LGBTQ+(性的少数者を表す言葉)、多文化との共生などについても解説いただきました。

後編では、「クロスがDEIに取り組むべき意義」と「DEI推進が個人に与えるメリット」についてレポートします!


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