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木のパズルの思い出

観光地のホテルに置いてある木のパズル。
ふと、思い出した。

子供の頃、親戚たちと一緒に家族旅行に行った時。
泊まったホテルの部屋にあの木のパズル、必ずと言って良いほど置いてあったな。
だいたいが家の形になって箱の中に収められていた。
あれを見ると、それだけで小さい頃の旅行のことを思い出す。

どこに行ったとか、何をしたとか、事細かくはさっぱり思い出せないんだけれど、あのパズルがあって、見つけたら必ず箱から出して遊んでいたっけ。
いとこだったり、父親だったり、兄弟だったり、一緒に遊んだのはきっとその時々で違ったのだろうけれど ”あのパズルがあってあれでよく遊んだ” という事実だけが頭の中に残っている。



それから十年以上経って、恋人と旅行に行った時に久しぶりにあのパズルをホテルの部屋で見つけた。

「あ、これ懐かしい~!」

と言って箱を取り上げると、不思議そうな顔で見ていた彼。
そのパズルを見たことが無かったそうだ。

私にとっては幼い頃の思い出が蘇るものでも、彼にとってはその時まったく初めて見るものだったのだなぁ。

懐かしさからその場で箱から出して一緒に遊んだっけ。

こうやって、彼にとってはその時の思い出があのパズルの思い出として残る。
そして、いつかどこかでまたあのパズルを見かけた時、
「あの時の、懐かしい」
って思い出すのかもしれない。

思い出って、こんな風に色んな人とちょっとずつ共有しあって増えていくものなのかもしれない。
たとえ普段思い出すことはなくとも、ふとした瞬間に、何かのきっかけで、頭の奥底から出てくる。

古い思い出と新しい思い出をつないでくれる、あのパズルのような存在をみんな持っていて、それによって色んな人と記憶を更新しながら生きているのだ。

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