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マーケターなら押さえておきたい【コミュニティ マーケ】の基礎と最新事例(後編)


【前回のおさらい】改めて「コミュニティマーケティング」って何でしたっけ?

こんにちは。DeNAのモリシーです。
「DeNAのコミュニティマーケティング」を紹介する記事の後編になります。

前編では、そもそも「コミュニティ」って何だっけ? という切り口からコミュニティマーケティングの定義について考えてみました。
その後、DeNAのゲーム領域のコミュニティマーケティングの事例を紹介しました。

本記事では、DeNAにおける「ゲームのマーケティング」でコミュニティマーケティングがどのように成立・発展したかについて紹介したいと思います。
ゲーム分野で発展したDeNAのコミュニティマーケティングの知見は、現在では「DeNAベイスターズ」や「川崎ブレイブサンダース」といったスポーツ分野や「Pococha」、「IRIAM」などのライブストリーミング分野でも活かされています。
そんな「コミュニティマーケティング」について引き続き考えていきますので、ぜひ最後までお付き合いください。

この記事のキーワード
#ゲームユーザーと運営のコミュニケーション #キャラクターを使ったSNS運用 #ファンマーケティングもMIX #コミュニティマーケティングを直接的に売上に結びつける

ちなみに、前編で考えたこの記事における「コミュニティ」の定義はこんな感じです。

コミュニティ
・主にSNS上で「共通の興味関心」と「何らかの共同性」の2つの要件を中心に構成されている、ゆるやかな集団のこと
・特に「共通の興味関心」によって自然発生的に成立している

ここで定義した「コミュニティ」に対して働きかけるマーケティングのスタイルを、この記事では「コミュニティマーケティング」という風に捉えています。

その中でDeNAのコミュニティマーケティングは「ゲームのマーケティングに端を発しているから特殊な部分がある」ということだったので、ここからは「DeNAのコミュニティマーケティング」について詳しく紹介したいと思います。

ということで、前編に引き続きナカムラさんに話を聞いていきます。


ナカムラケンタロウ 
グローバリゼーション&マーケティング部 マーケティング推進第2グループ 広告会社の制作から、DeNA Games Osaka(今はなきDeNAの子会社)に転職。mobageタイトルのプランナーや「戦魂」のプランナーを経て、2018年4月より「天華百剣 -斬-」のプロデューサーに就任。
2021年夏からはゲームのマーケティングやチームメンバーのマネジメント等を担当。

DeNA流コミュニティマーケティングのルーツは「mobage(モバゲー)」だった!?

ナカムラ「突然ですけど、モリシーさんは「怪盗ロワイヤル」っていうゲーム、知ってますか?」

モリシー「もちろん知ってます! ただ、実際に遊んだことはないですね……」

ナカムラ「怪盗ロワイヤルは2009年10月にリリースされて、去年の10月で13周年を迎えて今も続いている「mobage(モバゲー)」のレジェンドタイトルですからね。
実はこの「mobage」のゲームがDeNAのコミュニティマーケティングのルーツになってるんです」

モリシー「え、DeNAは10年以上前からコミュニティマーケティングをやってたってことですか?」

ナカムラ「いえ、当時はまだ「コミュニティ」みたいな捉え方はしてなかったと思います。
ただ、mobageは各タイトルそれぞれで専用の「掲示板」があって、ユーザーさんはその掲示板で情報交換をしたり、雑談をしたりしていて、運営メンバーはいつもその掲示板をチェックしていました」

モリシー「Twitterとかでいろいろ検索しなくても、ユーザーさんのコメントをチェックできるの、めっちゃ便利ですね!」

ナカムラ「そうなんです。タイトル個別の掲示板なので、運営からしても「今回のイベント報酬は喜んでもらえてるのかな?」とか「今回の新キャラの評価はどんな感じ?」といった純度100%の生の声がほぼリアルタイムで確認できたので、非常にありがたい状況でした。
そういったユーザーさんの声を聞いて、次のイベント設計や新キャラに活かしていくというサイクルがあったんです」

モリシー「なんかユーザーさんと運営で言葉は交わさないけどコミュニケーションしてるみたいですね」

ナカムラ「その間接的なコミュニケーションこそが、DeNAのコミュニティマーケティングのルーツだと思うんです」

モリシー「なるほど。たしかにゲームの掲示板にいるユーザーさん達は今で言う「コミュニティ」そのものですもんね」

ナカムラ「そんな風に掲示板とゲームの実装を通して「間接的なコミュニケーション」を行なっていた、というのがmobage全盛期の時代でした。
そこから時は少し流れて、DeNAでもアプリのゲームに徐々にシフトしていきました。
その時に「プロデューサーレター」や「生配信でプロデューサーが直接説明する」といった、直接的なコミュニケーションをとるようになっていきました」

モリシー「プロデューサーレターや運営メンバーが生配信に登場するのは、今ではいろんなゲームタイトルがやっていますよね」

ナカムラ「さらに、アプリゲームにシフトしていったこの時期に、Twitterでそのゲームのキャラクターのアカウントを作ってゲームのお知らせだけでなく、フォロワーさんに楽しんでもらうような投稿をするスタイルがDeNA内で確立していきました」

モリシー「運営として情報発信するのではなく、Twitter用にキャラクターを立てるのって当時は何を目的にしていたのですか?」

ナカムラ「キャラクターでTwitter運用することで、ユーザーさんとより近い立場で情報発信ができるっていうメリットがあります。
やっぱり運営の立場だとテンション高めの投稿がやりづらいとか、「ユーザーさんと一緒に楽しむ」っていうスタンスがとりづらかったりするので」

モリシー「たしかにキャラクターを通してコミュニティと接した方が、より距離感が近い気がしますね」

ナカムラ「その頃ってちょうどタニタさんとかSHARPさんとか、企業Twitterの「中の人」が大きく話題になった時期でもあったので、そういった文化の影響も受けていたんだと思います」

モリシー「Twitterを通じてコミュニティの人たちとコミュニケーションを行う、となると、もう今のスタイルとそんなに変わらないですね」

ナカムラ「そうですね。要素としてはほぼそろった形になります。
そこからさらに「ファンマーケティング」の要素も取り入れているのがDeNAのコミュニティマーケティングの特徴なんじゃないかと思っていて」

モリシー「ファンマーケティング、ですか?」

ナカムラ「世の中的な状況が変わってしまう2019年までは、DeNAのいろんなゲームで「リアルイベント」や「グッズ製作」などを盛んに行なっていました。ゲームとSNS上だけでなく、リアルの場でもユーザーさんに楽しんでもらう機会や手段を提供していたんですよね」

モリシー「なるほど、たしかにリアルイベントでユーザーさんと直接コミュニケーションするのは、ファンマーケティングの要素ですね。
私も過去にリアルイベントでユーザーさんと直接お話したことがあります。
あと、去年の12月に「逆転オセロニア」の全国大会が久しぶりにリアル開催されてて、すごく盛り上がってましたよね!」

ナカムラ「といった感じで、mobage時代から今に至るまでの間にいろんな要素を吸収しながら形成されたのが「DeNA流コミュニティマーケティング」なのかなと。
その特徴をまとめると、次のようになります」

DeNA流コミュニティマーケティングの特徴

①ユーザーさんの声を聞いて、それをゲーム(プロダクトやサービス)に反映させるという間接的なコミュニケーション
②プロデューサーがタイトルを代表してユーザーさんに直接説明するスタイル
③Twitterをお知らせのためだけでなく、ユーザーさんを楽しませるコンテンツの1つとして運用するスタイル
④リアルイベントやグッズ製作など「ファンマーケティング」の要素もMixするスタイル

ナカムラ
「さらに、DeNA流コミュニティマーケティングで、コミュニティと運営がどのようにコミュニケーションしているかを図にすると、こんな感じになります」

【まとめ】「DeNA流」コミュニティマーケティングとは?

ナカムラ「ここまでmobageから始まるDeNAのコミュニティマーケティングの成り立ちについて説明してきたんですけど、どうでしたか?」

モリシー「そうですね、「成り立ち」そのものがDeNAのコミュニティマーケティングの特殊さにつながっているんだなって思いました」

ナカムラ「たとえば前編の最後に紹介した5つの事例も、ここで説明した「成り立ち」を踏まえて見てもらうと、より納得感が深まったり、新たな発見があるんじゃないかなって思います」

モリシー「たしかに、そう言われてみるとDeNA流コミュニティマーケティングの4つの特徴が共通点としてあるような気がします!」

ナカムラ「アプリのゲーム(=運用型のゲーム)って、「プロダクト」の側面と「サービス」の側面の両面があると思います。
その両面を通じてコミュニティと運営が(直接的に、間接的に)コミュニケーションを行うことで、プロダクトもサービスもよりよくなっていくし、コミュニティもますます盛り上がる、といったプラスのスパイラルを発生させることができます」

モリシー「まさに理想の状態ですね」

ナカムラ「さらに、アプリのゲーム(=運用型のゲーム)の特徴として、コミュニティが盛り上がれば盛り上がるほど、アクティブユーザー数をはじめとするKPIが良くなります。
なので「タイトルの売上を上げるためにコミュニティを盛り上げる」といったことが可能になって、コミュニティマーケティングを直接的に売上に結びつけることができるのが「DeNA流コミュニティマーケティング」なのかなと思います」

モリシー「いい感じにまとめていただき、ありがとうございました!
私も改めてコミュニティマーケティングについて考える良い機会になりました」

インタビューは以上になります。

みなさんは普段、自分自身のスタイルを意識して考える機会ってありますか?
私はあまり考えてこなかったので、これからは定期的に自分自身を振り返って考える時間を設けても良いなと思いました。

あとTwitterでもDeNAの過去の取り組みを定期的に紹介して振り返っていますので、そちらもフォローしていただけると嬉しいです!

また、今回の記事以外にも4回に渡ってDeNAのマーケティングに関する取り組みを紹介していますので、ぜひそちらもチェックしてみてください!


次回以降も引き続きDeNAのマーケティングのあれこれについて紹介していきます!
よろしくお願いします!