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忘れられない京都での最後のランニング
僕がランニングを始めたのは昨年の4月。
コロナが流行してサークルが活動停止になり、運動不足が露呈してきたために始めた。
そして、気づけばそれは一つの趣味になっていた。
そうこうしている内に2021年になった。
大学卒業が残り3ヶ月に迫ってきて、今しかできない挑戦をしたいと思うようになった。
その一つが、
「10kmを4分30秒/kmで走る」
というものだった。
ただ、これがなかなか厳しいものだった。
まず、今まで長くても5kmほどしか走ってこなかった僕にとって、10kmはとんでもない距離だった。
初めの頃は、5分/km程度のペースでしか走ることができなかった。
ぶっちゃけ、徐々に無理かもとは思い始めていた。
ただ、目標は達成できなかったとしても、チャレンジすることだけはやめないようにしようと思い、走り続けた。
そうして迎えたラストチャンス。
その日のゴール(折り返し地点)は、家から約5km先にある上賀茂神社。
夜になると、こんな感じの顔を見せてくれる。
京都らしさで溢れた僕の大好きな場所の一つ。
午後8時半。
住み慣れた家を出発し、走り慣れた道を走り始める。
気温は9度。
少し寒さが落ち着いてきたのが、春から社会人というのを感じさせてきて、少しもの寂しさを感じる。
左手に、何度も行った大好きなラーメン屋が視界に入る。
もう一回くらい行っておけばよかったなと少し後悔させられる。
今まで何度も通っていたのに気づかなかった銭湯の存在に気づく。
こういう時に限って素敵なものを見つけてしまう。
もう行くことはないのに。
そうこう考えている内に上賀茂神社が目に入る。
以前と変わらず素敵な景色に安心感を感じながら通り過ぎる。
立ち止まってこの景色をゆっくり脳裏に焼き付けたいという思いもあったけれど、止まらずに進み続ける。
そこからは賀茂川の河川敷に入る。
賀茂川(鴨川)にはたくさんの思い出が詰まっている。
何度も散歩をしたし、春や秋には読書をした。
夏には花火や水遊びをした。
辛くなった時は川沿いに座り、悩みをぶつけた。
僕を優しく見守って包み込んでくれるような存在だった。
前日の雨により、河川敷の地面が少しぬかるんでいる。
ただ、そんなことは気にも止めず走る。
いつまでも包み込まれるままではいられない。
7km地点辺りで、足に違和感を感じ始める。
どうやら足裏のマメが潰れたようだ。
ただ、もうすでにゾーンに入っていた僕には、そんなことは関係ない。
もう自分でもどう動いているかわからない足を動かし続ける。
河川敷から上がり、家へ向かってまたまだ走る。
ここからはさらに見慣れた景色が目に入る。
なんでもない景色なのにこんなに心を打たれるのはどうしてなのだろうか。
ゴールが近づき、最後の力を振り絞る。
タイムなんてどうでもいい。
ただ、全力で駆け抜けたかった。
10km経過の合図をiPhoneが鳴らす。
僕の京都でのラストランは幕を閉じた。
全力は尽くしたが一歩及ばず、結局目標タイムを50秒オーバーしてしまった。
ただ、後悔は一切なかった。
全てを出し切り、10kmという距離を駆け抜けることができた。
そして、4年間の京都での学生生活を駆け抜けることができた。
そうしたふと空を見上げると、星が綺麗に輝いていた。
実際はそんなに綺麗だったわけではないとは思う。
建物の光もぼちぼちある京都市だし。
ただ、あの日の僕にとってはなんだかすごく綺麗に見えた。
名残惜しさを感じながら帰路につく。
「今の僕を形づくってくれた京都の街、本当にありがとう。」
そんなことを考えながら走ってきた道に深くお辞儀をし、僕は段ボールでいっぱいの部屋へと帰った。
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